62話
武司は健全な状態に戻った。首筋の赤い切れ目も跡形も無いし、床や服についていた鮮血も肌寒い風に吹き飛ばされたか元から無かったのではと思わせる様相だ。
いよいよここ地下二階の主アサシンとのバトルが勃発寸前だ。今回も武司一人が相手をするようで黒い一つ目のモンスターに武司が歩み寄る。一歩、二歩、三歩……ついにアサシンの間合いに入った。
アサシンは目で武司を睨み威嚇しクレイモアで突きを放った。体を右斜め前に傾けそれをかわした。主役だけあって二度も同じ相手に迂闊にも敗北をきっすることはないだろう。不意打ちも無いことだし。無いよね武司さん。
「タケノコ、なんか今俺に問いかけた?」
武司はアサシンの攻撃を無牙で右に左に後ろにとかわしながらタケノコに尋ねた。なんで地の文が登場人物につつぬけなんだ。多分気のせいだ。そうだそうだ。落ち着けタケノコ、すー、はー、すー。
「そうだ、落ち着けタケノコ」
!! やっぱり聞こえてるみたい。なんでだろうか。武司はアサシンの縦切りを両手で真剣白羽取りした。そして左右にクレイモアを捩り奪い取った。力には歴然の開きがあるようだ。 クレイモアを壁に向かって右手で投擲する。凄まじい勢いで滑空した大剣は灰色の壁に突き刺さり亀裂を作り少し四角い石が崩れた。