58話
「あばよ!」
と無傷のリットが見送るなか階段に近づき武司を先頭に階下へ向かう三人。壁や階段や床はにわか雨でも降ったかのように湿っている。緑色の苔が生えているところもあった。湿気が多いのだろう。一段一段滑ってこけないよう慎重に下っていく。地下二階の造りはどうなっているだろうか、きっと変わらないだろうなと武司は思慮していた。ついに階段を下りきった。地下二階も無機質な石室だった。灰色の壁や床が広がっていた。ビュッと音がしたかと思うと武司の首が飛んだ。剣で切断されたのだ。その頭部が地面にボトッと落ち転がった。血が首から噴き出る。頭部を失った肉体もバタリと倒れた。石造りの一部の床がキャンバスに色を塗ったように灰色から赤に変わる。大量に出血し血の水溜まりができた。武司の体は死を理解できないかのようにピクピクと痙攣している。彼の体を失った頭は目を見開き口から鮮血を垂らしている。負けしらずの武司を瞬殺した超新星のモンスターは黒い体を揺らしてクケケと笑っている。人型のその怪物はつるっ禿げで人間の手の甲程の目を一つだけ持っている。口は裂け口裂け女のようだ。身長は百七十センチメートルぐらいで両手でクレイモアを中段に構えている。