42話
今歌っているのは人を応援あるいは鼓舞するような内容の曲だった。武司達は自然とやる気や元気が湧いてきた。不思議な影響力を持ったメロディーだった。万人が万人聞き惚れてしまうだろう歌声をしている。やはりどんなものにも才能があるのだと武司は思った。
「だ、大丈夫か?」
武司がベンチに腰掛けた妖艶な歌姫に近づこうとしたところ数十匹のドロールキングが姿を見せた。彼等は壊れた家屋から奪ったのだろう木材を振り回しながらやってきた。皆武司達をいぬくような鋭い視線を放っている。敵意がひしひしと伝わってくる。多勢に無勢だが戦うしかないと武司達は悟った。
「数が多いわね!」
「一人当たり十匹だな」
「あはん、頑張るわ」
優れた顔立ちの麗人、ルーノは駆け小刀を二本抜くと無牙でドロールキング達のおざなりな強攻を避けながら足を強牙で強化しジャンプし次々にドロールキング達の目を切り刻んでいく。ルーノに切られた一匹は「グガー」と悲鳴を上げながら別のドロールキングと頭をぶつけ合い昏倒する。サリナはゆっくり歩きながらバルハートを変牙で伸縮させどんどんドロールキングの目を潰していく。苦しみ暴れた後に遁走したり死んでいくドロールキング達。