32話
武司達一行は舞台から見て右ての隅にいた。その隅は階段になっていて舞台のま反対にある出口に向かう程高くなる。今回はノース国のオークション会場の護衛の任務に来ていたのだ。武司達以外にも武器を持ち護衛をしている人が五十人はいる。皆敏腕のハンター達だろう。辺りを警戒している者が多い。
「金貨千枚!」
「金貨千二百枚!」
相変わらず続くオークション。様々な名品や珍品が次々に出品され落札されていく。主催者側はどうやって品物を調達しているのか気になる。武司はつまらなそうに「フアー」と欠伸をした。
「タケノコ、俺暇だからオークションしてみたいんだけど」
『お金そんなにあるんですか?』
「無いからくれよ」
『仕方ないですね。大盤振る舞いです』
武司の足元でチャリーンと金貨が落ちる音がした。武司は地面から金貨二枚を拾った。
「えー、たった二枚かよ! 何も買えないじゃん」
オークションの司会者が舞台上の右手の幕から運ばれてきた鞘に入った剣を指差し言った。
「今回の目玉商品がやってまいりました。魔剣ウイザード! 魔剣に選ばれし者しか剣を鞘から抜けない伝説級の剣です。この魔剣は強力な魔力を秘めているらしいのです。……試しに……」
司会者は長めの剣の鞘を左手で持ち右手で柄を握り引いた。さらに力強く引く。しかし抜ける様子は微塵も無い。