30話
「やあ! 無事かい?」
銀髪の男は髪をかきあげながら尋ねた。武司は「何とか」と言った。
「僕はルナハ。君達は?」
武司達とタケノコが自己紹介した。
「さっきはどうやってカイザーを仕留めたんだ?」
武司の質問にルナハは右手を挙げた。金色の地に宝石がちりばめられた指輪がそれぞれの指にはまっている。
「僕は目に見えにくい鋼糸の使い手なんだよ。この指輪から糸を出すのさ」
タケノコは遠慮がちに言葉を紡いだ。
『ルナハさん、武司さん達に心牙の手ほどきをしてくれませんか?』
「まあ……いいでしょう。僕でよければ」
「よし、じゃあ教えてよ」と武司。
「ここでかい?」とルナハ。
武司達はそれから二時間ルナハから心牙の基本を教わり、四つの心牙をそこそこ操れるようになった。
「ハアー!」
武司は強牙で切れ味を上げた剣でタペストリーごと壁を切り付けた。タペストリーと石の壁がナイフでバターを切るように裂けた。サリナはバルハートを弓に変えてみせた。
「あはん、出来たわ変牙!」
ルーノは小刀を長剣にした。刃を無から生み出したのだ。現牙だった。
「君達筋が良いよ! 良いハンターになれるよ」
武司達はルナハにお礼を言い別れた。武司達は玄関ホールの外への扉を押し開き快晴の下へ出て行った。雲一つ無い青い空だった。