28話
しかし切れたのは豪奢な椅子だけだった。椅子は背もたれが縦に切断されていた。武司はスキルの剣のスペシャリストを発動させた必殺の一撃だったのでかわされたのは意外に思い動揺した。カイザーは「ククク」と笑った。武司の背後にカイザーは居て武司の背中を押した。バランスを崩し椅子に倒れかかる武司。突然武司の姿が人からウォーレスに変わった。半人半馬の姿だった。武司は驚嘆し
「何だ! こりゃ」
ルーノとサリナも絶句している。
「変牙だよ! 全てのものを変化させられる。素晴らしい力だ」
カイザーは陶酔したようなうっとりした表情を浮かべた。
「タケノコ! 何とかして!」
『はい、これでどうでしょう?』
武司は人の姿に戻った。そして椅子から立ち上がりカイザーに向かい合った。カイザーは怪訝な顔をして
「人外の力が働いているようだね。ならこうだ!」
カイザーは凄まじいスピードで動いた。空中からレイピアを取り出し武司の胸をつら――
『させませんよ』
――ぬけず、かわされた。
「ふむ、厄介な相手だね」
カイザーは思案げな表情で呟いた。タケノコのような存在を相手にするのは初めてなのだろう。