27話
武司達が佇むすぐそばの部屋から煙りが漏れていた。料理を作っているようだ。献立はなんだろう。分厚いステーキや煎じた薬草を入れたスープだろうか。周辺に漂う匂いからはたいそうなご馳走が想像された。改めて良い香りだと武司は思った。グーと武司の腹が鳴った。
「つまみ食いしていかね?」
「あはん、カイザーを探すのがさきでしょう」
武司は仕方なく良い臭いの部屋をあきらめ歩を進めた。武司達はつきあたりの部屋の扉を押し開けた。中は黄金色の絨毯が敷かれ壁には美しく色鮮やかなタペストリーが飾られている。天井には巨大なシャンデリアがあった。そして二段上に立派なひじ掛け椅子が置かれその上に全身黒い肌、赤い瞳に額からは角を生やしたハスナがいた。カイザーだろう。彼はひじ掛けに肘をつきその手の上に顎を乗せリラックスしている。余裕しゃくしゃくのようだ。
「ようこそ! 久しぶりの客人だ……用件は私の討伐かね? うん?」
カイザーはクスクス笑いながら問い質した。カイザーからは不気味な威圧感が溢れている。流石魔物の上位種だけのことはある。並の手練ではないだろう。
「そうだぜ! 勝負!」
武司はそう言いながら駆け椅子にもたれているカイザーに切り込んだ。