2話
『君の右手の方が西だよ。能力ねー……よし! じゃあこれでどう……』
武司は軟らかい草を踏み分け西の方向に歩き出した。彼の着ている服は赤い色のシャツに茶色の半ズボンにソックスにスニーカーだ。
「何々どんな力? 敵を圧倒するような能力かな!?」
『……能力は……洗濯のファンタジスタに早口言葉を極めた者に下着泥棒の達人』
「ええー!? いらねえ。全部変な能力ばっかりじゃねえか」
『以上。決定!!』
「ええー、そんな能力で何をしろと?」
武司が下生えの草を踏み分け二十分も歩くと木の柵に囲まれた小さな村が見えてきた。しかし村の中央に位置する公園が騒がしい。村民が集まっているようだ。
『早速新しいエピソードが出たね。武司君、君の出番だよ。特殊な能力を使って問題解決するんだ』
武司は仕方なく公園に駆け寄りながらも抗議した。
「洗濯のファンタジスタに早口言葉を極めた者に下着泥棒の達人でどう解決しろと」
武司は「すいません」と謝りながら観衆を掻き分け公園の中心に踊り出た。そこでは剣を持った青年が茶色い肌で体の至る所から角が生えた身長ニメートル程の怪物が戦っていた。モンスターはなぜか女性用の上下の下着を身につけている。青年が長剣を振るい一閃させた。しかし怪獣の肩に当たるとベキリと折れてしまった。