6 秘密共有
呆然としている3人を見て、さて、とわたしは思った。
これをどう取り繕えばいいのか?
「ア‥‥アリシアお姉さま‥‥」
「今ごろやっても無駄だぜ、麻耶。」
そう。
ここまで別人さらしてしまってからお貴族さまやったって、中身が違うって——いや、半分は違わないんだが——バレちゃってるよ。
わたしは腹を括った。
「あー。シンシア。それにアリシアもドレイクどのも‥‥」
一応マイアの護衛であるドレイクには「どの」を付けた。
「ここで見聞きしたことは、他言無用です。」
背筋を伸ばして、一応貴族の威厳をもって——。
しかし、3人とも目が彷徨っている。
無理もない。
ずっとお仕えしてきたお嬢様が、目の前で豹変してしまったのだから。
「あー。ちゃんと説明しますから。だから‥‥ですから、このことはここにいる5人だけの秘密にしてくださいな。よろしいですわね?」
お嬢様言葉を取り戻すと、やっと3人も魂を取り戻したような顔になって背筋を伸ばした。
わたしたちの話を、アリシアとドレイクは「信じられない」という顔をしながらも、1度で理解はしてくれたようだった。
さすがは一流の護衛で戦士である2人は、どれほど信じられない状況でも現実ならば受け入れてそれに対処する——ということができるらしい。
そのあたり、ただの一般人とはやはり違う。
しかし、シンシアには3度説明しなければならなかった。
それでも、ちゃんと理解したのかどうか。
アリシアとドレイクが理解したのに、自分だけがいつまでも理解できないでは恥ずかしいと思ったのかもしれない。
「あの‥‥つまり‥‥お嬢様はアナスタシア様とアンナ様の2つの魂をお持ちになったと‥‥いうことで‥‥ございますよね‥‥?」
「2つという感じはしないなあ。わたしはわたしだもの。」
「ア‥‥アナスタシアお姉さま!」
麻耶が手を振って「言葉づかい! 言葉づかい!」というサインを送ってくる。
「あ‥‥さようでございました。わたくしはわたくしでございますわ。マイアもそんな感じですの?」
「はい。マイアと麻耶の記憶がありながら、わたくしはわたくしという感覚しかございませんわ。」
上手く化けるな、麻耶。
と思ってから、そういえば麻耶はあっちでもおとなしかったし、案外地の部分でマイアと似ているから化けてるというよりはまんまなのかもしれない——と思い直した。
強いて言えば、マイアの方が少しだけ積極的だったような‥‥。
アナスタシアは——というと‥‥。変わんないか‥‥。
普段はお嬢様ネコかぶっていたが、マイアや気の置けない男の子たちといる時なんか下々のガサツな言葉づかいなんかして面白がってたな。あれもこれも思い当たる。
もともと固っ苦しいの苦手なんだよ。
そのあたりのことはアリシアは知らない。
彼女はわたしが幼年学校を卒業してから、個人護衛としてわたしに付くようになったのだ。
それまではドレイクみたいな男性の護衛だった。
13歳になって、婚約者のある身に男性の護衛は問題がある——ということになって、アリシアが起用された。
だからアリシアは幼年学校時代のわたしの奔放ぶりを知らない。
「いずれにせよ、このことはこの5人だけの秘密ということで他言は無用です。よろしいですね? シンシア。アリシア。ドレイクどの。」
わたしは1人1人の目を見ながら、鍛鉄の釘でも打ち込むように名前を呼んでいった。
あなたたちは、もうわたしたちの仲間だ。
そういう意味を込めたつもりだ。




