表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表の生徒会長に就任しました――俺、立候補してないのに  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/38

体育祭での受難

 五月の連休が終わると、すぐに学校全体が体育祭に向けて動きだした。

 これは、去年から準備が始まっていて、ほぼ準備は整っている。

 生徒会と体育委員会が中心になって、 去年の二月から準備を始めていたそうだ。

 今から俺が手伝うことはあまりなかった。

 だから俺はのんびりと構えていた。


 体育祭が三日後に迫った夕方、井上先輩がチョンチョンと俺をつついた。


「ヒロシ、体育祭では何に出るの?」


「俺は、玉入れとリレーです」


「玉入れ? まあ、いいけど。騎馬戦は出るでしょ」


「あれは全員参加でしょ」


「各クラスで、四騎参加のはずよ。立候補した?」


「してませんけど。あれ? 俺、玉入れとリレーに丸つけて出したから、騎馬戦は全員参加だと思ってました」

 当たり前に、そう思っていた。


「生徒会役員は全員騎手で参加だよ」


「私とユキも騎手で出るからね。ここの騎馬戦は男子から女子への攻撃は禁止。分かった?」

「はい」

 

 ……えーっ、今て何て言った⁉


「あの、男女を分けないってことですか?」


「そうよ。世間に出たら、男も女もない乱戦だからね。その前哨戦よ。女子は攻撃していいから、襲われたら、さばいて逃げてね」

 

 里見先輩の常識的なアドバイスに、井上先輩が暴力的なアドバイスを追加した。

「近寄れないくらい暴れまわる、もありね」


 女子の先輩二人は楽しそうに話し合っている。え、それでいいの? 女子危なくないの?


 井上先輩はセーラー服で、何とか戦士風のコスプレで出るらしい。

 里見先輩はアルテミスのコスプレのようだ。スタジオで借りたと言っている。

 騎馬戦にコスプレ?

 

「あの、男子もコスプレですか?」

「男子は普通にジャージだよ。したければ、すればいいけど」


 ホッとした。

 でも、セーラー戦士や女神に突撃されるのは、気が重い。

 それに、そんなのできれば応援席でじっくり見たい。

 今年は仕方無いけど、来年を楽しみにしよう。 


「ところで、体育委員会に小山が居るから、注意してね」

 里見先輩が眉間にしわを寄せた。


「小山さん、ですか。接点ありますか?」


「そりゃあ、少しはあるよ。生徒会は広報関係しか、関わっていないけどね。無くても作るでしょうね」


 井上先輩も、俺の肩に手を置き、力強く握ってきた。

「そうね、今年はヒロシに強めに絡んでくるかも」


 ここで井上先輩が里見先輩に言い渡した。

「前に立って助けちゃ駄目だよ。ヒロシの今後のため、私たちがするのは、さりげないフォローだけ」 


「あ、そうか」


「そうよ、実力を付けさせないと、私たちが卒業した途端に餌食だよ」


 小山さん。あれからちょっかいをかけてこないから、安心していたのに。

 俺は更に気が重くなった。


 

 体育祭当日は快晴だった。

 晴れ渡った空が気持ちいい。


 ラジオ体操をしながら、俺は空を見ていた。

 なぜなら真横に小山さんがいて、俺の写真を激写しているから。

 小山さんの胸には黄色い胸当てがかかっている。

 黒で『広報』と書かれたそれは、広報班の目印。

 写真を撮るのが仕事だ。だからおかしな状況ではない、はずだ。


「ヒロシ君、ほんのちょっとの間で、大人っぽくなったね」


「ありがとうございます」


「入学したときなんて、中坊が背伸びしてます、って感じだったのに。それに急に垢抜けたわ。雑誌モデルの仕事のせいかしら」


「ありがとうございます」


 横にいたクラスメイトたちが少しずつ離れていったため、周囲はポッカリ空いている。

 誰か助けて。そう思って見回すと、「ホオー」という声が。

 女子のヒソヒソ声も。内容はラジオ体操の音楽で不明。


 でも 、なにか勘違いしているような雰囲気だ。

 俺は喜んでいないぞ!

 と、声を上げたいけど、できないチキンが俺だ。

 困っていたら、今井先輩が来た。


「先輩……」


 今井先輩は、俺と目が合った途端に吹き出す。


「あっちに集合してる。ミーティングだ」


 口を手で押さえながら、俺を手招きする。

 俺は急いで今井先輩に駆け寄った。


「今井君も撮らせてもらっていいかしら?」

「俺は撮影NG。ヒロシもだな」


 さらっと言い、背中を向ける。

 とてもきっぱりはっきりしていて、しかも嫌な感じがしない。

 俺には無理な芸当だ。


 連れられていった先に、他の三人が集まっていて、すぐに女子の先輩二人が寄ってきた。


「小山に絡まれて、まんざらでもなさそうな顔していた」

 井上先輩が決めつける。


「ニコニコしながら話していたわね。ヒロシって、毒があっても良いってタイプ?」

 里見先輩も誤解している。

 追い詰められ後ずさったら、今井先輩が肩を支えてくれた。


「近くで見たら引き吊ってたよ。俺が保証する。笑いをこらえるのが大変だったぞ。なあヒロシ」


 吹き出してたくせにと思ったが、味方を失うわけにはいかない。俺はブンブンと縦に首を振った。


「この二人、自分で行けばいいものを、自分たちは見守るとか言うんだ。そのくせ、俺に行けってせっついてさ。なんだろうね」


「つい先日、見守るって言った手前、ね」

「だよね」


 見守っていてくれたのか。救援に今井先輩を送ってくれたんだ。


「ありがとうございます。助かりました。クラスメイトはニヤニヤして見ているし、身動き取れなかったんです」


「ヒロシって態度が曖昧なんだよ。嫌なら嫌って言う! いいね」

「はい」  


「これは、騎馬戦荒れるね。ユキ、タッグ組もうか」 


「そうね。今年の対戦は無しにしよう。ヒロシの見守り隊結成ね」


 二人はくるっと男子の先輩たちの方を振り向いた。


「俺らは男同士の戦いに、どっぷりはまっとくよ。女子に囲まれると、触られ放題だから怖い」


 女子に、触られ放題?

 

「ヒロシ、気を引き締めてね。囲まれたら危険よ。今みたいに断れないままだと押し倒されるよ」


 井上先輩に指を突き付けられ、俺は怯えた。

 キャー、怖い。 ……嬉しいのか? どっち?


「面白い表情するね、ヒロシ。気持ちがダダ漏れだけど、残念ながら怖いが正解だ」

 緒方先輩が呆れながら教えてくれる。


「男子は首にかけたタグを取られたらアウト、女子は鉢巻き。差別だよな」

 今井先輩も嫌そうに言う。

 これは囲まれて揉みくちゃにされた経験ありと見た。


「よし、作戦会議よ」


 そう言って女子二人は足早に立ち去った。

 やる気満々だ。


 騎馬戦は午後なので、それまでは何も考えずに体育祭を楽しむことにした。俺のクラスの女子達は、コスプレの話題で盛り上がっているようだ。

 誰が騎馬戦に出るのか知らないが、女子全員で盛り上がっている。

 力でのぶつかり合いの、埃っぽいイメージだった騎馬戦が、コスプレ披露の場になるなんて、なんだか華やかだ。

 楽しみで、ほおが緩む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ