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表の生徒会長に就任しました――俺、立候補してないのに  作者:


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脱出ゲームー2

 エリア2は広いコンテナヤード風だ。周囲を柵で囲まれていて、その向こうにギャラリーがひしめいている。

 その数は次第に増えて行って、応援の声がもう上がり始めている。


 入り口前に掲げられているのは、

『攻略ポイントはルートの選択』という文字。


 エリア1をクリアした七人はその前に集まった。

 ここは内部の様子がわからないので、挑戦者側が圧倒的に不利だ。

 だと言うのに、先ほどのエリア1での大敗に懲りたのか、鬼側は投入メンバーを増やしている。

 先程、「三名増員」と叫んでいるのが聞こえた。


 ここのエリアの鬼は、判別しやすいように、カラフルな衣装を着ている。入り口からパッと見ただけでも、五人は見えた。


「これは厳しいですね。固まって行きますか?」


「いや、分散させたほうがいいだろう。鬼の人数が多いから、囲まれかねない。麗子、こっちに来い」


 緒方先輩が俺の横にいた麗子さんを引っ張った。それから里見先輩を俺の方に押して言う。


「守ってくれよ。任せたから」


 俺は慌てて里見先輩の右側に付いた。麗子さんが納得したように頷く。

 真田は俺たちの背後を守るように、ピタッと後ろに付いた。凄く堂に入っている。

 今井先輩と井上先輩は一番後ろだ。楽しそうに俺たち全員を見守っているような感じ。


「おい、行くぞ。周囲に気を配れよ。入ったらすぐに散開だ」


 緒方先輩と麗子さんが先頭で、ゆっくりと入り口をくぐった。


 エリア1とは違うカーンッという音が人数分鳴り、侵入者が入ったことが鬼に伝えられた。

 入り口に向かって走って来る鬼を避けて、ばらばらにルートを取る。緒方先輩たちは直進、俺たち三人はコンテナの間を左に曲がった。


 大小のコンテナが乱雑に並び、ところどころにドラム缶が転がっている。迷路のようで、真直ぐな道は中央の一本のみ。

 その先に出口がある。


 曲がった先に鬼を発見して、また別のルートに入るが、そこにも鬼がいた。

 それでドラム缶からコンテナに登り、その上を走り始めた。

 その先に降りられる足掛かりがあるかわからないが、考える間はない。もう運任せだ。


 先程、任すと言われたせいか、なぜか俺が先導する状態になっている。

 鬼が登って来たのでドラム缶のある場所から地面に降りたが、追い掛け回されている内に、出口とは離れた方向に来ていた。


 里見先輩が叫ぶ。

「ヒロシ。今、中央が空いている!」

「突っ切ろう」


 俺の言葉を合図に、一気に中央の道を走った。広い道は目立つので、すぐに鬼が駆け寄って来る。


 だが大分、出口に近付けた。一旦コンテナの密集場所の間に隠れると、今井先輩たちとばったり出会った。


「厳しいな」

 今井先輩が息を切らして言う。


「ヒロシ、この企画凄いよ。面白い」

 井上先輩に褒められた。


「七人に対して、鬼が何人いるのかな。これ、比率を取り決めないとムリゲーになりますね。出たらそれを伝えないと。侵入者の人数を決めるとして、鬼の数は侵入者より少ない目がいいかな」


「うーん、と。今は十人くらい、いると思いますよ。コンテナの上から人数を確認しました。大人気ないですよね」


 真田は逃げながら状況確認をしていたようだ。


「出るか。緒方たちに鬼が集中しちまう。麗子に後で絞られるのは嫌だ」


 そう言って立ち上がった今井先輩に、井上先輩が尋ねる。


「これって、攻撃もありでしょ。例えばラグビー部なら、鬼を引きずったまま脱出できそうよね。私達はどうする?」


「どうしようかな」

 そう言って、今井先輩は俺をちらっと見た。


「お任せします」

 今井先輩は軽く頷いて出て行った。井上先輩が後に続く。


「俺たちも行こう」

 そこから、出口方向に一直線に向かって駆けた。


 幸い鬼の姿が無い。そう思っていたら、一筋向こう側で、大勢が入り乱れるような音が聞こえた。

 横の道を覗き込むと、今井先輩たちを六人もの鬼が取り囲んでいる。


 俺たちはすぐに違う横道に入って隠れた。

 出口はすぐ目の前だが、出口に近付くほど鬼が多いのだ。


「田中君、後方から鬼三匹!」

「出口まで突っ切ろう。いくぞ」

 俺たちは覚悟を決めて大通りに駆け出した。


 丁度そこへ、反対側から緒方先輩と麗子さんが飛び出してきた。

 鬼数匹と俺たち五人が鉢合わせしてしまったのだ。


 緒方先輩が麗子さんを出口の方に押しやり、俺も里見先輩の前に立って盾になろうとした。

「ヒロシ!」

 呼ばれて振り向いた瞬間、里見先輩は俺の腕を掴んでグッと引っ張った。


 俺はその反動で麗子さんを押すように出口から出ていた。


 クリアしたのは俺と麗子さん、真田の三人だった。


「ユキったら。わが身を呈してヒロシ君を庇ったのね」

 麗子さんが驚いたようにつぶやいた。


 庇われてクリアした俺は、情けなくてその場に座り込んだ。その俺の腕を麗子さんが優しく引っ張る。

「ヒロシ君」

 名前を呼んで凄く優しい目で俺を見つめる。


 急に俺の肩がグイっと後ろに引かれた。


「ヒロシ、姉と見つめあって何しているの!」

 里見先輩が睨んでいる。


「そうですよ。問題あり」

 そう言ったのは真田だ。

 完全に里見先輩の小姓? 俺の下僕じゃなかったか?


 緒方先輩が来たので振り向くと、先輩からも睨まれた。

 もう、情けなくて俯くしかない。


「すみません。里見先輩を守るよう言われていたのに、俺が助けられてしまいました」


 麗子さんが何か言いたげな緒方先輩の肩に手を置き、ポンポンと叩く。

「緒方君、ありがとう」


 そう言うと麗子さんは緒方先輩の背中を軽く押して、次のエリアに向かって歩き出した。



 エリア3は可愛い。エア遊具のステージだから、カラフルでとっても可愛らしい。

 これは小さい子供たちが、「入っちゃダメ」って言われて泣くやつだ。思いもかけなかったミスに気付いてしまった。

 時間を限って、ちびっこタイムを設けないと、確実に文句が出る。


 入り口には大きく、攻略ポイントが掲げられている。


『攻略ポイントはエア遊具を制すること』


 俺たち三人は透明のビニールコートとゴーグルを装着した。

 凄くシュール。


 そんな出で立ちの麗子さんは、まるで女優。SF映画のヒロインのようだ。

 真田はその護衛役か。盾を持つ姿が妙に決まっている。こいつの正体は何なんだ?

 まあ、そこは置いておくとして、これは映える。

 そう思って、俺はすぐに写真を撮らせてもらった。この企画のまとめ資料に使える。

 麗子さんの準備を手伝っていた里見先輩が俺に寄ってきた。


「ヒロシ、助けてやったんだから、クリアしなさいよ」


 そう言って背中を叩く里見先輩に、俺は頭を下げた。


「助けられなくてすみません。逆に助けてもらうなんて……」


 へこむ俺の頭をクシャっと無造作にいじって、里見先輩が俺の目を覗き込んだ。 

 優しい笑顔に、なんだか泣きたい気分になる。


「へこむのやめて、前に進む! あっちで応援しているね」


 励ましの言葉を投げてから、里見先輩は緒方先輩たちの方へ走って行った。



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