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表の生徒会長に就任しました――俺、立候補してないのに  作者:


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23/25

2学期の始まり

 そして新学期が始まった。 

 それと同時にCMが流されると、俺の周囲は急に騒がしくなった。


 放映を開始した後、徐々に俺の片思い編が受けはじめ、放映比率が半々にまで増えたせいだ。

 親戚や中学の生徒会仲間から電話が山ほどかかって来た。

 そして学校ではクラスメイトたちの質問攻めに合う羽目になった。


 初めのうちは、少し遠慮がちだったんだ。


「田中くん、どうしてコマーシャルに出たの?」

 それを皮切りに質問が怒涛のように降ってくる。


「撮影って、どんなふうに撮るの?」

「あれ、どこで撮ったの?」

 この辺の質問が一番多い。


 俺に対する壁は、好奇心の前に崩れ落ちたらしい。


 男子は野口さんの事を聞きたがる。

 その気持ちはわかる。

 俺は喜んで話した。主に彼女の美しさと、プロ意識なんかについて。


 その流れで、普段から雑談ができる相手が増えていった。

 美少女が取り持つ友情の輪。野口さん、ありがとう。

  

 女子の方は、俺の片思いに食いつく子が多い。

 人の恋がそんなに気になるか?


「あれってさ、編集の魔力だよ。伸ばしたり切ったりして、音楽添えると全く変わるから」

 そう説明すると、皆がっかりする。

 悪いことを言ったような気分になるけど、それが現実だ。 


 このがっかりな会話が、驚くことにプラスの変化をもたらした。


 『なーんだ』 で肩の力が抜ける。そうすると、後はお互い構えずに話せるのだ。

 それで女子とも、なんとなく会話が出来るようになっていった。


 そこからは、彼女たち独自の見解を色々と聞かされた。


「私たちは野口さん押しなんだ。だってさ、なんか、野口さんの方が似合んだもの」

「あの、ちょっと照れくさそうな野口さんの顔、可愛かった」


「田中君が野口さんに見とれるシーンが、すごくいいよ。野口さん私でもキュンと来る顔してたし、田中君の気持ちわかるって感じ」


 大体そんなような事を、何人もが言っていた。

 やはり誰もが、あの時の野口さんの笑顔を素晴らしいと思うようだ。俺は間違っていなかった。


「里見先輩はもちろん素敵だけど、田中君とだと、姉と弟みたいだもの」


「ありがとう。俺はそれでも恐れ多いと思うよ」


 そうやって始まった二学期だが、十月にはこの学校最大の大がかりな行事、学祭がある。二学期になってすぐ、生徒会はこの準備に取り掛かっている。

 とにかく忙しい。

 俺はバタバタと毎日を過ごしていた。


 「ねえ、ヒロシ。最近、顔がげっそりしているよ。疲れているの?」

 いつもの帰り道で、里見先輩にそう聞かれた。

 心配そうに顔を覗き込んでいる。


「そんなことないですよ。ただ、こんな風に注目されたのは初めてなんで、気疲れしたっていうか」


「ああ、そうね。雑誌の比じゃないわね。CMはテレビでも、ネットでも流れるし、それこそ雑誌にも載るから。それ以外で、店頭ポスターなんかもあるし、全方位だもんね」


 気にしないでいられる人の方が、俺にとっては不思議だ。

 あっちを見ても、こっちを見ても、自分の顔がある。

 あれは、俺じゃない。そう言い聞かせて自分を騙す作戦に出たけど、まだ騙しきれない。


 逆に自意識過剰なのかもと、疑ったりもする。

 だって、この東京では、その辺を有名人が何人も歩いているはずだけど、あまり見かけたことが無いのだ。

 つまり、それだけ分からないってこと。

 だから、俺みたいな一般人が、ちょこっとCMに出たからといって、人に気付かれることは無いと思う。


 ただしこの間、五人で揃って歩いていたら、一発だった。

 俺以外の四人は、ただでさえ目立つのだから、今の状況で人目に付かないわけがない。


「あの、CMに出ている役者さんたちですか?」


 そんな風に声を掛けられた。そのまま、周囲の人間が立ち止まり、囲まれてしまう状態になった。


「はい。でも俺達は役者じゃなくて、普通の高校生なんです。CM見ていただいてありがとうございます」


 緒方先輩がさらっと好青年風の返しをすると、周囲から「キャー」と声が上がった。

 

 役者に関しての問い合わせが殺到しているとは聞いている。

 公式には、『一般人なんで、個人情報に関してはお答えできません』としているそうだ。


 俺以外の四人は、『気にしないでいられる人』代表のような方々で、全てのことをサラッと興味深げに見ている感じだ。

 そんな風にできない俺が、よりによって一番注目されるなんて! 


「先輩、思っていたより重いです。お尻が落ち着かない気分っていうか」


「ヒロシ、落ち着いて。CMなんて1,2か月で切り替わるし、そうすれば皆すぐに忘れるものよ。慣れたころには、もう終わっているでしょうね」


「あっ、そうか」

 そうだった。これがいつまでも続くわけではないんだ。


「そうですよね。秋バージョンだから、十月中旬くらいには終わるのかも」

「多分ね」


 急に気が楽になって、肩から力が抜けた。

 それから、はーっと、大きく息を吐いた。肩に乗っかていた、おんぶお化けを振り落としたような気分だった。


「里見先輩、ありがとうございます。お礼になんかおごります」


「え? 本当に?」


「はい。どこか寄りたい所とか、食べたい物とか、ありませんか?」

 里見先輩は少し考えていた。


「じゃあ、本を買いたいの。付き合ってくれる?」


「いいですよ。俺も買いたい本があるから。どこに行きますか?」


「あのね、お気に入りのブックカフェがあるの。本を選んで試し読み出来て、お茶が飲める店ね。時々寄ってのんびりするんだ。私のお気に入りのラインナップが揃っているの。そこでお茶をおごってもらってもいい?」


「素敵ですね。里見先輩の秘密の隠れ家みたいだ」


「まあ、そんな感じかも」


 それから二人でぶらぶらと店まで歩いた。気持ちが少しずつ落ち着いて行くのが自分でも分かった。


「里見先輩。いつも助けて貰ってありがとうございます。俺が気付いていないだけで、凄く助けられているのじゃないかって、気がしてきました」


「いやあね。なんか改まっちゃって。ヒロシのくせに」


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