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表の生徒会長に就任しました――俺、立候補してないのに  作者:


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なぜ美少女・里見先輩が俺を待っているのか 

全38話完結の完成済み作品です。

王道のラブコメ。現実世界、不思議設定無し、エロ無し。男性、女性、年齢関係なしで楽しんでいただけます。

のんびりほっこりしたい時にぜひ!

 校門のすぐ手前に、彼女は立っている。

 午後の日差しに輝く髪が、まるで冠のようだ。

 下校する生徒たちは、吸い寄せられるように彼女に視線を向け、ふと歩みを緩める。


 その様子を、俺は校門に向かって歩きながら見ていた。

 彼女は男子生徒たちの視線に眉を顰めるが、以前のように睨み付けたりはしない。

 中学時代より、遥かにましになっているって、本当だ。


 俺の姿に気付くと、彼女の表情がぱっと輝いた。引き締まった長い脚をこちらに一歩踏み出し、俺に向かって手を振る。

 彼女の笑顔につられて、俺も曖昧に笑い、小さく手を振り返した。


 その瞬間。


 周囲からの、(え、お前かよ?)って視線がグサグサと刺さる。

 女子たちの「は?」「うそでしょ?」みたいな囁きも。

 俺はちょっと首をすくめて、それに耐えた。

 わかっているから。俺だってそう思っているんだから!


 これは夢が半分叶った、と思っていいのかな。

 俺の夢。

『彼女と一緒に下校する、楽しい高校生活』


「ヒロシ、遅いよ。走って」

 華やかな容姿にふさわしい、良く通る明るい声が俺を呼ぶ。


 今日は高校生活二日目。

 里見先輩とは門の前で待ち合わせて、一緒に帰る約束をしている。


 俺のささやかな夢を知った先輩が、

「帰る方向が同じだから、一緒に帰ってあげる」と言い出した。


 ただそれだけ。


 残念ながら、先輩は俺の彼女ではないし、お互いにそういう対象でもない。しかも先輩は重度の男嫌い。

 俺は小さく一つため息をついた。

 睨んでいる奴らに言いたい。

「これはさ、全くの別物なんだよ」


 胸の中に薄グレイのモヤが広がる。

 俺はゴホッと空咳をしてそれを追い払い、門に向かって駆けだした。



 俺は昔から、何かにつけて割を食うタイプだった。なぜこのタイミングでとか、なぜ俺の時に限ってが、よくあるのだ。


 エピソードは色々あるが、極めつけはプールの授業でのパンツずり落ち事件だ。

 プールの縁から上がろうとしたら、移動中だったコースロープが、俺の水着に引っかかった。新調したばかりで少し大きめだったサーフパンツは、あっさり引きずり降ろされた。


「「「キャーーーーッ!!」」」

 女子たちの悲鳴。

 それが誰かの「……ちっちゃ」という小声で、大爆笑に変わった。


 トラウマだよ。

 まだ小学生でよかった。今なら立ち直れない。

 女子って残酷だよな。


 掃除の時間には冤罪で俺一人がさぼりの罰を受け、運動場を歩けば野球部のファールボールに直撃される。

 要するに運が悪い上に、要領も非常に悪い。

 そういった小さな事の積み重ねで、俺は学習していった。


 周囲にバリアを、人には距離を。


 そのせいか、中学に入る頃には、斜めの姿勢がデフォルトになっていた。

 そんな俺には友達はいない。

 いや、いなかった、か。

 中学に入って半年くらいした頃、ちょっとした偶然で、時々一緒に遊ぶグループが出来るまでは。


 それは夏の終わりの夕暮れ時。陽が陰り初めていて、辺りはオレンジ色に染められていた。

 下校が遅くなり、俺は急いで帰ろうとしていた。


 校門を出たところで、すらっと背の高い女生徒が目に留まった。

 ネクタイは三年生の赤色。

 彼女は眼鏡を取ってから、一つにくくっていた黒髪をほどくと、それをファサッと揺らす。

 その動作は優雅なのに、どこか少年っぽく無造作だった。

 流れる髪に目を奪われた俺は、思わず声に出していた。


「……かっこいい」


 驚いたように、こちらを向いた彼女は、照れくさそうに微笑んだ。

 隣に立つ友人らしい女生徒が、彼女をからかっている。

 友人は彼女と対照的な茶色っぽいセミロング。くせ毛が柔らかそうな、可愛らしい感じの女性徒で、この人も凄く綺麗だ。

 こんなに目立つ二人なのに、なぜか今まで見掛けたことが無かった。


 それにしても、心の声を口に出てしまうなんて。しかも二年も年上の美少女に向かって。

 俺は恥ずかしさに固まっていた。

 そこに男の先輩が二人掛け寄って来た。

「お待たせ」

 そう言ってから、不審げに俺を見る。


 二人の内、片方の先輩の顔に見覚えがあった。確か生徒会長だ。

 以前から思っていたが、近くで見ると更に、嫌味なくらい格好が良い。


 サラッサラの茶色っぽい髪に夕日が当たり、オレンジがかって見える。美少女のようにも見える整った顔の中で、強い光を放つ目は、どう見ても男のそれだ。

 顔とプロポーションが良くて、運動神経も良さそう。おまけに頭がいい。

 俺のような一般人とは、別世界の住人だ。


 もう一人も何かの武道でもやっているのか、立ち姿がピシッとしていて、風格がある。

 かなりの癖毛で、それを短くカットしているのが、凄く洒落ている。

 雰囲気は硬派だけど、モデルのようにあか抜けているって、ズルくないか?


 四人が揃うと、いつもの通学路が、そこだけ別世界の様におしゃれに見えた。

 あきらかに俺だけが異物だ。


 そう気付くと、急にいたたまれなくなる。


「あの一年生の子が、髪を誉めてくれたのよ」

 美人の先輩は、声も綺麗だった。

 俺は照れながら、そそくさとその場を立ち去ろうとした。


 ふと視線を感じて顔を上げると、生徒会長が目を瞠っている。


「驚いたな」

 もう一人の男の先輩がつぶやくのが聞こえた。


 なんだろう。美少女は会長の彼女なのだろうか。もしかして、「俺の女に色目使ってんじゃねえよ」 とか言われる?

 もしくは、身の程知らずだと嘲笑われる?

 イケメンの凝視にあい、俺は軽くパニックになっていた。


 すると、生徒会長は俺の前に来て尋ねた。

「今日、暇?」

「暇です」

 しまったー! 反射的に答えてしまった。

「じゃあ、一緒に遊ぼう」


 その申し出に理解が追いつかない俺の腕を掴み、先輩は歩き出した。

 握られた腕をほどこうとしたが、ガッチリ食い込んだ手はびくともしない。細身の先輩のどこにこんな力が、とその腕を見ると、筋肉がグリッと浮いていた。

 嫌だ、この方、細マッチョだ。脱いだらすごいのかもしれない。


 そう思ったのは大当たりだと、後日知ることになったんだ。


 俺は軽く斜めの歩きにくい体勢のまま、彼に引かれていくしかなかった。

 その後ろで美少女たちが話している。


「ねえ、いつもは男が寄ってくると睨みつけて追い払うのに、今日はどうしたの?」

「あれっ、そういえば……そうね」


 その後何か言っていたようだけど、風に吹き消され、聞き取れなかった。



 その日を境に、俺は生徒会室の常連になった。

 肩書は生徒会のサポート役員。正式にというと大げさだが、生徒会長が俺の為に新設した、何でも屋的ポジションだ。


 こうして、胡散臭い俺、田中ヒロシに、生徒会のサポート役員の肩書と、後ろ盾が付き、そして何となく箔が付いた。

 完全な虎の威であり、俺自身が変わったわけではない。


 だから、相変わらず俺はボッチで、学校生活はそう大きくは変わらなかった。

 しかし、仕事はある。

 そのせいで、毎日が結構忙しくなった。


 仕事に追われながら、俺は何かが動き始めたのを感じていた。


 そうこうするうちに、次期生徒会役員が選出され、先輩たちが役を退く時がやって来た。

 正直に言えば、俺は元の生活に戻れるこの日が来ることを、心待ちにしていた。


 ところが、全く思いがけない事が俺を待ち受けていた。



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