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1話

2014年、4月


ある男子は、何度も通って歩き慣れている桜道を、ゆっくり歩く。

陽気が良くて、ポカポカしながら、その男子は桜を見あげていた。

薄いピンク色の桜は、そこかしこに咲き誇っていた。

「あの、」

桜に見とれていると、女子に声をかけられた。

その男子が通っている高校の制服を着た彼女は

「これ、落ちましたよ。」

一通の手紙を渡してきた。

「あ、僕のじゃ...」

よくよく見ると、『高野遥太(たかのはるた)様へ』

と書いてあり、それはその男子の名前だった。

でも心当たりがなく

「それ、どこから落ちてましたか?」

「え?えっと、普通にあなたのカバンからですよ?」

「僕のカバン?」

遥太はカバンに入れたのは覚えていない。

「あの、違うんですか?」

彼女はじっと遥太を見る

「あ、僕のでした、すみません、ありがとうございます。」

「そうですか、良かったです。」

「じゃあ、私は先に行きますね。」

そう言い、彼女は学校へ向かって行った。

おそらく遥太の制服を見て、行先は同じと察して、()()と言ったのだろう。

遥太は彼女の遠くなっていく背中を目で追うしかできなかった。

これが、2人の出会いだった。


「それにしても、この手紙は誰からなんだ?」

僕は桜道を歩きながら、手紙の封筒の裏を見る。

「........えっ?」

何かのいたずらだろうか、差出人欄のところに書いてあったのは

「12年後の高野遥太より...?」

やっぱりこれはいたずらだ、そうに違いない。

全く、タチの悪いいたずらだ。

「...」

「開けてみるか?...いや、教室に着いたらにしよう。」

僕は足早に学校へと向かった。


教室に着いたのは8時。HRが始まるのは15分後。

僕は早速手紙の封を開けた。

『12年前の僕、手紙を開ける前からびっくりしてるだろう?いたずらだって思っただろう?だが、これはいたずらではない。僕は12年後から過去の僕へ手紙を書いている。なぜ手紙を書いたのか、それは、過去の僕に未来の僕と同じ過ちを犯してほしくないからだ。』

「過ち?」

『今日、君のクラスに転校生が来る。名前は、水無月陽向葵(みなずきひなた)。席は君の前。

これも驚かないでほしいのだが、君はきっと、陽向葵にはもう会っているだろう。』

「会っている?誰だ?」

『君の前の席に来たら、陽向葵は君に挨拶をする。僕も挨拶してたから、この未来は絶対変えないで。始業式が終わって、柊斗達と帰る事になる。ここで、この時だけは絶対にやらないでほしいことを書いて置きます。

○陽向葵は一人で帰らせて、一緒に遊びに行かないこと。』

『その理由は...』


「おーい、お前らー、席につけー。」

そこまで読むと、担任が来て、HRが始まる。

僕は急いで手紙をしまう。

「今日は転校生を紹介する。入ってくれ。」

転校生、あの手紙の通りなら、

担任に手招きをされ、ある女子生徒が教壇へ上がる。

ま、まさか、

「んじゃ、自己紹介してくれ。」

水無月陽向葵(みなずきひなた)です、よろしくお願いします。」

パチパチと拍手の音が鳴る。

「じゃあ、席は、高野の前の席だな。」

担任は指で教える。

「ありがとうございます。」

そう言い、彼女はこちらへ歩き、僕に気が付き、「あっ。」と声を出した。

そう、水無月さんは、今朝、手紙を拾ってくれた女の子だった。

水無月さんは席に座ると、後ろの席の僕に顔を向け、「よろしくね」

と言ってきた。

「うん、よろしく。」

僕はこんな反応しかできなくて、ちょっとへこむ。


始業式が終わった帰り際、友達である柊斗(しゅうと)が「遥太ー、一緒に帰ろーぜー!!」

と言ってきて、「あ、うん、帰ろうか。」

「今日は(こころ)んちの弁当食いに行こーぜ!」

「おー、いいよ、いいよ、おいでー!うちの親喜ぶわ」

皆でわちゃわちゃしてると、水無月さんは教室を出て行こうとする。

「あ、えっと、転校生の...水無月さん?だっけ、一緒に帰ろー!」

そう笑って言ったのは心だ。

「あ、私は、良いよ、やることあるし。」

彼女は誘いを断ろうとする。

そういえば、あの手紙には一人で帰らせろって書いてあったな。

「ここ、」

言いかけると、心は

「えー、いーじゃん、ちょっとだけだよ、うちのお弁当食ってきなよー!」

「...。じゃあ、ちょっとだけ。」

「わーい!やったぁ。」

そう言い、皆で学校を出て歩く。

「あ、紹介がまだだったわ。俺、寺木柊斗(てらきしゅうと)。こう見えて俳優やってんだわ。超売れっ子なのよ?俺笑」

そう、柊斗は芸能界で俳優をやっている。

顔は顔面国宝、体も大きいからか、スポーツもできる。

女性ファンが多いイメージだ。

「自分で言うなよー笑

あ、うちは宙野心(そらのこころ)、家が弁当屋やってんの、よろしくね〜!」

心は明るくて元気がある。

「私は百田光莉(ももたみつり)、よろしく。」

光莉は頭がとても良くてメガネ女子だ。

基本大人しいが、曲がったことが大嫌いで、過去何度か相手に手をあげそうになる(それも曲がったことだから何とか自分を抑える。)

「んで、こっちが夏見沢海(なつみざわかい)。」

柊斗がそう言うと、海は手をヒラヒラあげる。

基本ヘッドフォンをしているのだが、こちらの会話は聞こえているらしい。

頭が良さそうな見た目をしているが、超がつく程良くない。

僕が勉強を教えるくらいだ。

「海ー、まーた野木坂聴いてんのー?」

心がそう言うと海は大声で「だから漢字がちげーって!乃木坂だよ!アホ!」

「あー、酷ーい海が意地悪するよ遥太〜、助けて〜」

心は僕の背中へしがみつく。

「遥太ー?お前には勉強教えてもらってる恩があるが、乃木坂をバカにするなら俺はお前を...。」

「お、何すんのー?」

ぴょこんと心が僕の肩から顔を出す。

「...その前にこいつを埋めて来るわ...。」

海が心を引っ張ってどこかへ消えていく。

「え、止めなくていいの?」

終始びっくりしていた水無月さんは心配そうに2人を目で追う。

「あー、いいの、いいの。夫婦喧嘩だから。そのうち戻ってくるからさ。」

光莉が呆れたように言った。

「あの、ところであなたは?」

僕?あ、

「あぁ、自己紹介がまだだったね、僕は高野遥太(たかのはるた)、よろしく。」

「うん、よろしくね。」


「お、着いたなー。おばちゃーん。」

柊斗と一緒に、店へ入る。

「あらあらぁ。しゅうちゃん、またでかくなってないかい?」

「それこの間も言ってたよー?」

「おぉー、遥太か、おめぇ、この唐揚げ食ってけ、お前も良いもんいっぱい食って、柊斗みたくでかくなんなきゃダメだぞ?」

「柊斗が巨人すぎるんだよ、」

「うっせーわ!」

4人で笑ってると、おばちゃんは僕たちの後ろにいる水無月さんを見る。

「まぁまぁ、こりゃ、べっぴんさんがよう来たなぁ。」

「お嬢ちゃん、この辺じゃ見ない顔だなぁ?」

2人は水無月さんを凝視して、おじさんは「?おんめぇ見ねぇ顔だけど、誰かに似てんなぁ。あの、えーっと、名前なんだったか?」

おばちゃんに聞いてた。「ほら、あんた、あれだよあれ、えーっと、」

2人は考えていると、

『あっ!!』

思い出したみたいだ。

『伝説のスーパーレジェンドアイドル、苺ちゃんだべ!!』

苺ちゃん、僕も知っているすごいアイドルだ。

昭和から平成に渡って活躍したアイドルで、何年も前に引退した、レジェンドだ、彼女が残した歌は、僕も未だに聞いている。

さらに彼女は歌だけではなく、演技もできるアイドルだった。

苺ちゃんが主演で出たドラマは、必ずヒットするし、映画に出ると必ず賞を受賞するのだ。

さらにライブが行われる会場は必ず、その地域で1番大きい会場で、チケットは3秒で完売。

アイドル史にその名を何度も刻んだスーパーレジェンドアイドル、まさに伝説だ。

そんな人気絶頂の時に、何故か彼女は芸能界を引退した。

当時は衝撃のニュースで、日本各地で暴動が起こる程だったらしい。

その後はぱったりと姿を消し、引退理由も謎のままだ。


たしかに、言われれば苺ちゃんに似てるかもしれない。

「でも、水無月さんの方がかわ、」

おっと、僕は何を言いかけた?

やめとけやめとけ、今言ったら自滅するだけ。

「もしかしてあんた、苺ちゃんの娘だったりすんのかい!?」

「...いえ、私は普通の親の普通の子供ですよ。」

水無月さんは笑ってるが、どこかぎこちない。

まぁ、それを聞く気はない。

誰だってそういう時はある。

「おばちゃーん!弁当ちょうだい!」

「はいよー、ちょっと待ってな、というか、うちのバカ娘と海ちゃんは?」

「まーた夫婦喧嘩してる。」

「あいつらまたやっとんのか。ったく、いい加減素直にお互いの気持ちバシッと言えないもんかね。」

たしかに、あの2人を見てるともどかしい気持ちになる。

「それ言ってやりなよー。」

「俺らの言うことは気かねーんだべ、逆に言えんのはおめーらだべ。」


そうこう話していると

「ただいまー!」

「おっ、帰ってきたな。」

心と海が帰ってきた。

その瞬間、僕たちとおばちゃん達は海がボロボロになっているのに気づく。

「海ちゃん、あんた、」

「まーた転んだね?」

「...グスッ、はい。心に押されて...。」

嘘だ、これは、嘘泣きだ!

しかもめちゃくちゃへたっ!!

「はぁっ!?海、あんたねぇ、私が支えてあげたからそんな傷で済んだんだよ!?むしろ感謝して拝むことでしょ!」

「あ、ん、た、た、ち!!そこに正座なさい!」

心と海はおばちゃんに小一時間程説教したのだった。

「マジであいつら付き合えよ、見ててもどかしいわ。」

光莉はまたもや呆れて言う。


おじちゃんが店の中にあるテレビをつける。

すると、臨時ニュースとして流れてきたニュースに僕は固まってしまった。

「速報です。元アイドルの、苺さんが、先程、亡くなったことが分かりました。」

『え、?』

全員がニュースに釘付けになる。

おばちゃんも説教をやめ、海も心も、柊斗も光莉もおじさんも、じっとニュースを見ていた。

「ま、まじかよ...。」

「え、なに、これ、ドッキリ番組とかじゃなくてガチ?」

皆事実だと受け止められないらしい。

僕もそうだ。

ただ1人、水無月さんだけは反応が違った。

「うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、うそ、。なにこれ?」

「うそ、だよね?そんな訳、」

続けて続報が入った。

「速報です、先程亡くなったと発表された苺さんですが、都内の病院で亡くなったことが分かりました。公式に発表はありませんが、ご病気で亡くなった可能性が高いとの事です。」

「え?」

頭を抱え叫んでいた水無月さんだが、続報が入った瞬間、目の色が変わった。

そして

「あいつ、あいつだ...。」

とブツブツ言い始めた。

「ごめんなさい、私、今日はもう、帰ります。」

「え?」

そう言って水無月さんは走って消えてしまった。

「俺らも、帰ろっか?」

「そう、だね、。」


帰宅後、部屋でぼーっとしていた。

「そういえば、なんで未来の僕は一緒に帰るなって言ったんだ?」

カバンから手紙を取り出す。

そこには、これもまた、衝撃的なことが書いてあった。


『その理由は、今日、陽向葵の母親が死ぬからだ。』

やはりか、何となく、苺ちゃんと、水無月さんは何かしら関係があると思っていた。

『でも、ただ死んだんじゃない。ニュースには病死と発表されているだろうが本当は違う。』

「え?」

『本当は、殺害されたんだ。』

『陽向葵の実の父親、そして、苺ちゃんの旦那に』

「!?」

なんだろう、これ以上、読むのが怖い。でも、何故か僕には、読まなくちゃいけないという気持ちがあった。

だから読むことにする。

『そして、これから僕が言うことは、かなりダメージが来るだろう。深呼吸をして、落ち着いて読め。』

スーッハー

深呼吸はしたぞ。読むぞ。

『12年後の今、陽向葵と、その父親は、ここにはいない。

父親は、陽向葵に母親の仇として、殺される。そして陽向葵は、父親を殺したすぐ後に、自殺する。』

「...。」

もう、何も言えない。言う気になれない。

『これから、何が起こるか教える、だから、僕の指示に従え。同じ未来にはしないでほしい。

そして、陽向葵を救ってやってほしい。』

どうやら、これから僕の日常は変わっていくらしい。


僕に水無月さんを救うことはできるのだろうか。

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