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1 ジンクス

ジャンル…恋愛、卒業、悲恋

「ごめんね」


学校の卒業式。

僕は、告白をして、振られた。


相手は一つ上の先輩、内村リサさん。

小柄で守ってあげたくなる、そんな先輩。

実際可愛いと評判で、しょっちゅう色々な人に彼女はアプローチを受けていた。


そして、もう一つの意味でも。


ある噂があった。

曰く、内村リサは何人もの男と寝た。

曰く、内村リサは五股をかけている。

曰く、内村リサは三万払えば最後までやってくれる。

内村リサは、内村リサは、内村リサは…。

挙げればキリがないほど、彼女にはいつもそんな話がくっついていた。


それでも、僕は彼女を好きになってしまった。

自分でも、どうしようもないくらいに。


だから僕は卒業式の日、彼女を呼び出した。


誰もいない二階の廊下、その片隅。まだ咲きそうにない桜の蕾が、窓の近くで揺れていた。

そこで僕は、彼女に告げた。

自分の気持ちを。

これが最後だから。

後悔はしたくなかったから。

彼女がどんなに酷く汚れた人だとしても、僕はこの想いを貫きたかった。


けれど。


「ごめんね」


そう、言われてしまった。


「…そうですか」


「うん…本当、ごめんなさい」


俯いた僕には、先輩の顔は見れない。

鼻がツンとする感覚を、認めたくなかった。


「…あの、高木君」


名字を呼ばれ顔を上げると、困った表情で笑う先輩が見えた。

良かった、まだ視界は滲んでいない。

複雑な気持ちが胸に重く有るまま、僕は言葉の続きを促した。


「何ですか?」


「あのね、良い事教えてあげようと思って」


先輩はそう言い、僕の左頬を指差した。


「ここ。ここにニキビがある相手は、君の事が好きっていうジンクスがあるんだよ。

…高木君には、私なんかよりもっと良い人見つかるから、その人を探してあげて」


僕には何も言えなかった。

本当にごめんなさい、ありがとう。

先輩はそう告げると、頭を下げて廊下を歩いて行った。

どこかで開いている窓からの風が、そこを駆け抜けていった。


先輩。

内村先輩。

…リサ先輩。


あなたの左頬にも、ニキビがありました。


それは、ジンクスとは関係ないのですか?


独り僕はしばらく。

尋ねられなかった問いを胸の中で叫び続けていた。


空は薄く雲がかかるが、綺麗な水色をしているのに。

どうしてだろう。

胸の中は鮮やかさなど無い灰色一つだけで。

雨がふいに、学校のベージュの床に零れ落ちたのだった。

裏話。

高木君は友達がモデルです(笑)

実はちゃんと下の名前も考えてあります。

けどそれが明らかにされる日はないという(笑)


閲覧、ありがとうございました。

ちなみにこのジンクスは、信じて損はないと思います。

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