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泳げないシロクマ  作者: さかなのなかさ
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エピローグ

それからしばらくして、シロとユキは動物園の中で自然に過ごすようになった。

最初のお見合いのときの緊張感や不安は、いつの間にか和らいでいた。


シロは相変わらず木に登るのが得意で、ユキはプールで泳ぐのが好きになった。

ふたりとも、それぞれが心地よいと思えることを楽しみながら過ごしていた。

お互いの「らしさ」を大切にしながら、毎日が少しずつ彩りを増していった。


「ねえ、シロ。今度、一緒に木登りしようか?」


ユキが少し照れたように言った。その声に、シロは笑顔で答える。


「うん、いいよ。僕もユキと一緒に泳ぎたいな。」


並んで歩くふたりの足取りは、どこかぴったりと合っていて、

それは、これから続いていく静かであたたかな日々のはじまりのようだった。


ある日、ユキがふとお腹に手を当てながら、にっこりと笑った。


「シロ、実は……ちょっと嬉しい報告があるんだ。」


シロは驚いたように目を見開き、ユキの顔をじっと見つめた。


「……お腹の中に、新しい命がいるみたい。」


一瞬、言葉を失ったシロの顔に、ゆっくりと笑みが広がっていく。


「……ほんとうに? わあ……それって、すごく素敵なことだね!」


ユキは頷いて、ちょっとだけ照れながら、小さくつぶやいた。


「これからもよろしくね、パパ。」


夕焼けに照らされたふたりのシルエットが、そっと寄り添った。


それは、シロがかつて悩んでいた「シロクマらしさ」や「自分らしさ」の答えが、

すこしずつ重なり合って見えてきた瞬間でもあった。


誰かと比べなくてもいい。誰かのようにならなくてもいい。

らしくあることの中に、自分らしさがちゃんと生きているなら、

それはきっと、いちばん自然であたたかな幸せ。


そんなふたりの未来が、今ここからまた静かに動き出していた。

このお話は、「泳げないシロクマ」のシロと、

「見せるために泳いできた」ユキが出会って、

すこしずつ自分らしく、生き生きと変わっていく物語です。


ふたりは、おたがいの「できない」ことや「苦手」なところを、

はじめはびっくりしたり、すこし傷ついたりもしながら、

だんだんと理解し合い、認め合うようになっていきました。


それはきっと、誰の心の中にもある「らしさ」や「じぶんらしさ」と向き合うこと。

まわりとくらべるのではなく、ありのままのじぶんを大事にすること。


みんなちがって、みんないい。

でも、「ちがう」ってことは、ときどきちょっとこわかったり、

まちがっているように感じてしまうこともあります。


それでも、自分の中にある「好き」や「得意」や「大切にしたいこと」を、

ちょっとずつでも信じていけたら、

きっとその人にしか歩けない道が見えてくるはずです。


そして、だれかといっしょに歩くとき、

ちがいをくらべるんじゃなくて、ちがいで助け合えたら、

それはきっと、とってもしあわせなことですね。


シロとユキ、そしてフライやランのように、

まっすぐで、ちょっと不器用で、でもあたたかい命たちが、

これからもみんなのそばで、笑顔で生きていけますように。


この物語が、あなたの心のどこかに、小さな光をともせますように。


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