訓練
リオは深呼吸をし、目の前に立つ巨大な装置を見つめた。それは、「磁力訓練装置」と呼ばれる、スターガイアの住民が使っている訓練用の道具だ。円形の巨大な金属のプレートが、空中に浮いている。その周囲には強力な磁力が放出されており、地面に接触することなく漂っている。
「さあ、リオ。お前が習うべきは、ただの力の使い方じゃない。」サラが訓練用のヘッドセットを調整しながら言った。「磁力をどう制御するか、それが鍵だ。」
リオはその言葉に頷き、装置の前に立った。周囲から強烈な磁場を感じ取る。無意識に足が少し震えるが、彼はそれを必死に抑えた。
「磁力の力を使うには、まずは心の状態を安定させないといけない。」サラは言いながら、手のひらを上に向けて、彼の目の前に浮かぶ磁力のコントロールポイントを示す。「この装置に触れることで、外部の磁場と内部のエネルギーを調整できる。お前が動かすべきは、ただの力じゃない。『流れ』だ。」
リオは指示に従い、ゆっくりと手を伸ばす。手のひらが空中に浮かぶ金属のプレートに触れた瞬間、彼の体に電流のような感覚が走った。手のひらから何かが伝わってくるような、強くて無理に引き寄せられる感覚だ。
「感じるだろう?磁力の流れを。」サラは彼の反応を見逃さなかった。「それを掴み、操るんだ。無理に引き寄せるのではなく、磁場の中で自分のエネルギーと同期させろ。」
リオは集中し、手のひらに伝わる感覚を深めようとした。最初は違和感があり、まるで体が引き裂かれそうな感じがしたが、少しずつ慣れてきた。まるで、金属と一体化するような感覚が広がっていく。
「その調子だ。」サラが励ますように言った。「その『引き寄せ』の感覚を、今度は逆に、反発させることを考えろ。引き寄せる力を利用して、空中のプレートを押し返してみろ。」
リオは深く息を吸い込むと、ゆっくりと意識を集中させ、手をプレートから少し離してみた。その瞬間、強烈な磁力が反発し、プレートはわずかに浮き上がり、彼の手からほんの少し離れる。リオはその反発力を感じ取り、しっかりとそのエネルギーを制御する感覚を覚えようとした。
「成功だ。だが、これが全てではない。」サラはリオの手を見守りながら、次のステップへと導く。「今度は、引き寄せと反発を同時に使う。プレートを上に引き上げ、次にそれを反発させて地面に落とす。まるで、磁場を操るかのように。」
リオはその指示を受け、もう一度プレートに手を伸ばした。今度は、引き寄せと反発を同時に意識しながら、心の中でその力を調整し始める。
最初はうまくいかない。プレートが上に引き寄せられると、すぐに手から反発して飛び離れてしまう。そのたびに、リオは焦ったが、サラの冷静な声が耳に届く。
「焦るな、リオ。引き寄せと反発のタイミングを合わせるんだ。力を分けるのではなく、流れとして捉えろ。」
リオはそのアドバイスを受け、もう一度集中し、力を調和させようとした。そして、少しずつだが、プレートがゆっくりと空中に浮かび、制御が効くようになってきた。
「よし、それでいい。」サラが微笑んだ。「磁力の力を完全に制御するには、心の状態を整え、自然の流れを感じ取ることが大切だ。最初は難しいかもしれないが、少しずつその力を覚えていくんだ。」
リオは汗を拭い、満足げにうなずいた。この訓練を通して、ただ力を使うのではなく、力を操るためには心とエネルギーのバランスが重要だということを実感した。そして、磁力の力を自在に使いこなすためには、まだまだ多くの学びが必要だと感じていた。