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17 単機決戦

 …非常に不味いことになった。


ポチポチ…カチッ


『ピピ-ッ!』


 野盗リーダーのキマイラを掴んだのは良いものの、そのまま牽引されて部隊から離れてしまった。


ポチポチ…カチッ、…カチッカチッカチッ


『ピピ-ッ、ピピピピ-ッ!』


(「(うるせ)ぇにゃっ!?」)


(『まぁまぁマル落ち着いて…。

 …そしてピコはさっきから何をしているの?』)


(ブースターがイカれた(故障した)にゃ。)


 燃料は僅かではあったがまだ残っていた筈なので、応急処置で騙し騙し使い続けていた内部圧力センサーが悪さをしているのだろう。

 先ほどから警告解除の操作を行っているが、解除した途端にまた警告が出てしまうのだ。


(あの意味不ケチ指揮官めっ!)


 今は監視者であったイカーワに拘束されたらしい某大尉に内心で悪態をつく。

 再手配の手間を惜しんで、本来使い捨てのブースターを繰り返し使用させ続けるからこんなことになる。


(「ま、奴には関係無いからにゃ。

  なんなら不具合が出てピコが苦労すれば、万々歳

 って思ったいたりしてにゃ?」)


 あの嫌い様からして、「無い」とも言い切れないのが更にムカつく。


(『そんなことより、今はどうするのっ!?』)


 シアが訴えるように何かしらの手を打たなければ、野盗リーダーの機体(キマイラ)に引き摺り回される現状は変わらない…のだが。


〔 connection error 〕


 救援を暗文で要請しようにも通信圏外。

 

『ピッ…ピッ』


 索敵レーダーを最大レンジに切り換えるも、自機とほぼ重なるようにして前方に表示されるキマイラ(野盗リーダー機)の反応しか映らない。


(マップデータも絶賛更新中、と…。)


 モニターの端に表示される周辺マップは、進んで来た後以外はデータが無いことを示す黒塗り。

 更にキマイラはこの機体を振り切ろうと滅茶苦茶に蛇行しているらしく、仮に奴を撃破出来たところで自力で帰還出来るかすら怪しい。


(奴のデータを移せば何とかなる…にゃ?)


 奴らはこの周辺で活動していただけありマップデータが揃っている可能性が高いが、そのデータを現在交戦中の奴が素直に渡してくれる筈も無く、どうあってもわたしか奴のどちらかが死ぬしかない。


(「なら奴をさっさと殺ってから、後のことをじっく

 り考えるにゃ。」)


 元々野盗リーダーを逃がすつもりなど無かったが方針(生殺)をはっきりさせたことで、マルがマルの本性からくる欲求を満たそうと急かしてくる。

 しかしここでも問題があり、キマイラ(軍用機)に通じる武器が現状は“右肘”固定の超硬度鋼(ダイヤスチール)ナイフしかないということだ。


(「はあっ!?

  (機体側面)にある銃はどうしたにゃ!?」)


 マルの言う「横の銃」が7.5ミリガンポッドのことであるなら、それは奴らの母艦の破壊で弾切れ(全弾使用済み)だ。


(『えっと…じゃあロケット?、っていうやつは?』)


 無誘導ロケット弾のことなら、そもそも発射機(ランチャー)()んでいない。

 現在の装備で武器と言えるのは、右腕部代わりの固定ネイルガン(超硬度鋼ナイフ追加装填)補助アーム付き(無理接続5ミリバルカン)、左腕部代わりのクレーンアームくらいだ。


(「…それって詰みって言わないにゃ?」)


 だから問題があるといって(考えて)いるのだ。


『ここまで来れば援護は来ねぇだろ?

 いい加減叩き墜としてやるっ!』


 そして対策を考えようとしたところで、わたしたちの殺気を感じでもしたのかという嫌なタイミングでキマイラが反転して向かって来る。


(『あわわわっ!?』)


 わたしの頭の中で慌てるシア。


『墜ちろ!』


パパパッ


 野盗リーダーは必殺のつもりでパルスガンを放ったのだろう。


…グインッ


「んぐっ…!」


 しかしわたしの機体は何かに引っ張られたように横へと滑り、放たれたパルス弾から逃れる。


『んなっ!?』


 不可解なものを見たように驚く野盗リーダーであるが、先ほどの機動のタネは何てことはない慣性によるものだ。

 

ギシッ…ギシッ…


 キマイラの背部を掴むクレーンアーム、そこから繋がる強靭性ワイヤーが張力負荷で軋む。


『っ…!?、ナメた真似しやがって!』


ゴオォッ


 ネタに気付いた野盗リーダーは埒が明かないことにも気付いたらしく、ワイヤーが張らないよう最短で接近を試みた。


『おらぁ~っ!』


パパパパパパパパパッ


 狙えばワイヤーを切れないことも無いのだが野盗リーダーは本体(わたしの機体)を狙った方が早いと判断したらしく、また的が大きいから必要ないと思っているのか、狙いのバラける全連射(フルバースト)での突撃だ。


シュッ…シュッ…


 狙いが甘いのであれば避けられないことも無く、機体制動用スラスターを手動で作動させて被弾を避ける。


『ちょこまかと…!』


パパッ


「っ!」


バチンッ、ボンッ!

ビッ…!


『ビビッ、ビビッ』


 しかしやはり全てを回避するには足りず、ガンポッドを切り離すことで致命的なダメージを回避したものの、何ヵ所かに被弾したアラートが鳴る。

 

(…さすがに無理があり過ぎたにゃ。)


 互いの距離が近付くことでサイドスラストで回避出来る距離では無くなってしまった。

 死の危機に直面した身体が、生存の手段を探そうと視界がスローに流れる。

 しかしそれはわたしに死の実感をもたらすだけに…


ぽぅ…


 スローモーションの視界の隅、モニターが示す機体状況の一つ。

 エラーを起こしていたそれが、稼働可能を示す緑のランプに変わっていた。

 

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