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16 不意討ち()

今章終了まであと僅かとなりました。

(年内終了予定 24・27・30日の最大3話)


「スウゥ…、フゥウゥ~…。」


 落胆に安堵の脱力。

 様々な理由がない交ぜとなった深い呼吸。

 互いに捕虜を盾にした、こちらにとっては時間稼ぎの交渉。

 あわよくばという希望が潰えていたことを知らされた今、野盗に遠慮する理由は無くなった。

 野盗は自分たちが交渉の優位に立っていると思い込み、お誂え向きにも全員が目の前に姿を曝している。

 

(これは…、(「チャンスだにゃ。」))


 マルと心の言葉が被ったことは気にせず、むしろ意見が一致したことで確信を得られた。

 後はどうやって元脱走兵の野盗を一掃するかなのだが…


交渉(時間稼ぎ)は平行線、そろそろ手が出る頃…。

 敵機を抱えての近距離戦闘は出来ない。)


 通常盗賊行為を働いた者は、発見された場での殺害が推奨されており、仮に捕縛して裁判にかけたところで死罪は免れ無い。

 しかしこの元脱走兵達の場合…こう言っては難なんだが、被害に遭ったのがノーサイド(仮想敵地)の住民。

 キャトラス政府の法を遵守していない都市の住民はキャトラスの法で保護されることは無く、現野盗(スカベンジャー)となっている元脱走兵らの罪状は死罪を免れ得るものになる可能性は僅かながらに存在する。


(「…でも結局のところほぼ(9割方以上)死刑で確定なんにゃろ?

 ならここで殺した方が手っ取り早いにゃ。」)


 マルの言うことも尤もで、中途半端なことをすれば最悪取り逃がしてしまう可能性もある。

 ならば何故捕縛という選択を捨て切れ無いのかというと…


(『でも生きて償える罪なら生かすべきじゃないの?』)


 シアの意見の考えもあるのだが、それに加えて元脱走兵の彼らが乗る機体は整備不十分ではあるが純正(キャトラス軍所有)のポッドだ。

 野盗から押収した機体を使わされているわたしたち(444小隊)にとっては、純正機を使えることになるかも知れない可能性は放っておけるものではないのだ。


(『えぇ…、そんな理由で?』)


(「にゃははっ、ピコも染まってきたにゃ。」)


 わたしの即物的な理由にシアは引いたような反応をしたが、マルはわたしの考え方にご満悦のようだ。


(てか、染まったって何がにゃ!?)


(「…いや、ピコも甘さが無くなってきたにゃってこ

 とにゃ。」)


 …何か巧いこと誤魔化されたような気もするが、マルへの尋問は後回しだ。


『おいっ、これが最後の警告だ!

 さっさと船を明け渡せ、本当に殺すぞっ!』


『ひぃいっ!?

 い…嫌だっ、助けて!助けて!』


 いよいよ捕虜に見せ掛けた細工も雑になった。

 これ以上引き延ばす理由も“無くなった”ので、この茶番劇を終わらせる核心を突く。


「なら交渉は決裂にゃ。

 空のポッドと部隊全員の生存、優先されるのはどっ

 ちかなんて考えるまでも無いにゃ。」


 そして言い切るや否や、わたしは合図を


『隊長っ、避けろ~!!』


「っ!?」


バッ…!


 咄嗟に捕獲していた野盗の機体を押し退け、その場から離脱する。


パパパッ


『ぐがっ!?』


 わたしの機体を掠めたパルスガンのエネルギー弾が、わたしが押し退けた野盗の機体を貫く。


『ちっ…、しくじったか!?』


バッ…、ゴウッ!


 味方を撃った野盗のリーダーは空の機体を捨て、機体を反転させて発進…逃走を図る。


『あ…隊長、なん…で…?

 ガハッ…』


 リーダーに撃たれて不幸にも即死できなかった名も知らぬ彼は、リーダーに向けた疑問の答えを聞かぬまま息絶えた。


『ライオネル隊、撃て-っ!』


 不意討ちをギリギリ回避し声を出せないわたしに代わり、トリアンダが掃射の合図(コール)を叫ぶ。


パパパッ

パパパッ

パパパッ


『何っ、伏兵だとっ!?』


ボンッ…!


 自分たちのリーダーの凶行に行動が遅れた副リーダーらしき雄は、ノーマークであった船のコンテナ内部からのパルスガン掃射を、回避行動を取ることも無く機体を穴だらけにされて爆死。

 僅か数秒にも満たない間に起きた目まぐるしい状況の変化、それらの推移をわたしはゆっくりと流れる視界で眺めた。


「…っ、逃がさないにゃ!」


バシュウゥッ!


 そしてようやく復帰できたわたしは、割とまだ近くにいた逃走する野盗リーダーの機体に向かって、今回意外な活躍を見せるクローアームを飛ばす。


ガシィインッ!


 クローアームが野盗リーダーの機体の背部を掴む。


『何だっ!?…えぇい、くそがっ!』


ググンッ


「うわっ!?」

『ピピ-ッ!』


 掴んだまでは良いものの、振り切ろうと速度を緩めない野盗リーダーの機体に、推力の無いわたしの機体が牽かれてしまう。



─ 討伐隊視点 ─


『…っ、隊長!?』


 トリアンダが事態に気付くも、トリアンダの乗機では追い付くことは出来ない。


『カマッセさん、俺が行きます!』


『駄目だっ、流石にお前ら(訓練生)に追撃は任せることは出来

 ない!』


『でもっ…モウブさんの機体は被弾しているし、ザッ

 コさんの機体も弾切れじゃんか!?』


 スラスターに被弾したモウブ機も速度が出ない(追い付け無い)し、ザッコ機は仮に追い付けは出来ても、攻撃手段は無誘導ロケット弾(ピコを攻撃に捲き込む)が一発のみ(可能性が高い)


『隊長がそう易々と墜とされるかよ!

 御託は後にしてザッコ機の補給と、野盗の落とし物(訓練生機445号機)

 を使えるようにするんだよ!』


 トリアンダの一喝により取り残された討伐隊のメンバーは、モウブ機及び野盗の機体の残骸の回収、ザッコ機への補給とNo,445 のシステムロック解除を急ピッチで進めるのだった。



 


 


 


 

やっと予定していた流れに繋がりました。

…やっぱ見切り発車はイカンね。


最後までお楽しみいただけると幸いです。



いつも読んでいただきありがとうございます。


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