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15 俗に言うとトロッコ問題

討伐隊視点ですが、ほぼイカーワ視点のような?

─ 討伐隊視点 ─


 ピコが野盗リーダーと交渉を行っている頃、バッズ大尉が捕縛されたブリッジにて。


「…ふむ、おかしいですね。」


 アサルトライフルを肩に吊るしたまま指揮官席に座るイカーワが、野盗の捕虜となった訓練生の声に首を傾げる。


「おかしい…、ですか?」


 指揮官席の前の船長席に座るザック船長が、イカーワの呟きを聞いて振り返る。


「妙だと思いませんか?」


 そう言ってイカーワは幾つかの不審な点を挙げる。

 まずはピコも感じていた、捕虜となっている訓練生が元気過ぎる点。

 彼が属していたパトロール隊が襲撃を受けてから今に至るまで、既に一ヶ月以上は経過している。

 いくら若く体力があったとしても、憔悴して弱っているのがよほど自然だ。

 次にこれもピコが感じていたことに近いのだが、抵抗が無さ過ぎる点。

 これに関してピコは「至近に敵機が複数いる以上、下手に抵抗しないのも仕方が無い」と納得してしまっているのだが、いくら従順な捕虜と言えど彼を機体に乗せる際には野盗も機体から降りざるを得なかったことだろう。

 つまり捕虜となった彼が自機に搭乗してから野盗が自機に搭乗するまで、捕虜となっていた彼は自機のコックピットで大人しく待機し、再び野盗リーダーに機体ごと捕まったことになるのだ。


「仕方ないですね…。

 船長、これをコンソールに接続してこちらの席の

 マイク(音声入力装置)をオンにして下さい。」


 イカーワがザック船長に渡したのは、パッと見は一般に普及している携帯通信端末だった。

 しかしイカーワは「監視者」と名乗った。

 

(恐らくただの携帯ではないのだろうな。)


 ザック船長はそう思いながらも端子台(コンソール)から接続線を引き出し、渡された端末に接続する。


ブォン…


「っ!?」


 端末を接続した途端に、自動でメインモニターにウィンドウが開いたことに驚くザック船長。

 端末は待機(スリープ)状態だったが、内部では何らかのプログラムが稼働していたのだろう。


〔 DeUS  ON  LINE 〕


 白い背景に黒の文字という一切の飾り気の無さであったが、ウィンドウに表示された内容はかなりの機密を含んだものであった。


「噂の戦闘支援システム…ですか?」


 ザック船長がイカーワに訊ねる言葉には、


 未だ実験段階にあるというシステムを輸送船で起動してどうするのか?


 武装の無い輸送船で戦闘に参加するつもりか? 


 という、二つの非難にも近い疑問が一緒くたにされていた。


「開発の目的としてはそうですね。」


 ザック船長が疑問に思っていることを知ってか知らずか、ザック船長の言葉通りの問いに応えるイカーワ。


「ですがDeUS はポッドの戦闘支援用に開発されてい

 るので互換性に乏しいのが難点ですね。」


 そしてさらりと、船でDeUS を起動しても意味は無いと宣った。


「元々データ収集も儘ならない未完のシステムです。

 今戦闘に使えずとも支障はありません。」


 態々起動しておいておきながらの酷い言い草に、自他共に温厚と認められるザック船長もいい加減に苛ついてくる。


「ならこんなところ(ブリッジ)で遊んでいないで、自分の機体で

 待機していては?」


 バッズ大尉の捕縛後は指揮権をザック船長に放り投げたイカーワだ。

 監視者として指揮を執るわけでは無いのであれば、ザック船長が指揮権を委譲したフローレンス中尉の指示に従うべきだろうと、ザック船長はイカーワに言ったのだ。


「まぁ待って下さい。」


〔 order please 〕


 ウィンドウに映される文字が変わる。


「音声入力、モード監査(オブザーブ)。」


 ヘッドセットマイクを起動してイカーワが言う。


『ピコン!』

『ユーザーIDに登録された声紋との一致を確認。

 ようこそ監視者、命令(オーダー)を実行。

 監査モード、起動します。』


ズラララ…


 次の瞬間シンプルな文字しか映さなかったウィンドウに、DeUS を搭載(インストール)してある500の実験機の稼働データが羅列される。


「ランニングNo,554の稼働データを呼び出し。」


 ランニングナンバーの554とはつまり、行方不明とされて今現在野盗の捕虜となっている機体番号でもあった。


「………やはり、ですか…。」


 ピックアップされたデータから読み取ったのか、悲痛そうに呟いたザック船長。


(これを中尉に知らせれば…後は、まぁ何とかするで

 しょう。)


 残念がるザック船長に対してイカーワは光明を得たとばかりに、データが示す結果を暗文に打ち込み始める。

 確かに初期実験のたった500名に選抜される訓練生の死亡は痛手ではあるが、裏を返せば後499名の代わりがいることになる。

 対するピコ・フローレンスは重要観察対象αであり時代の変革の鍵の一つ、決して失われるわけにはいかないのだ。

 

(保守派の爺共も邪魔をしてくれる。)


 監視者は裏方の絶対権力ではあるが、こうしたやむを得ない場合以外では表の権力に準じる。

 そのせいで随分と苦労させられたが、おかげで檻に引き籠っていた正当な王も動き出した。


(ピコ・フローレンス…貴女が変えたのは軍だけじゃ

 あない。)


 長らく変化のなかった軍の権力(パワー)バランスを、爺共が揃って排除に動く程に揺さぶったことも、ピコ・フローレンスが起こした、または起こすと予想される変革から見れば些細なことになるだろう。


(卓越した科学と幻想の融合した世界…。

 一体我々は何処まで行けるのだろうか?)


 ピコが中心となって造り出す時代を夢想し、イカーワは興奮に震えながら、完成した暗文を送信する。


(願わくはその先に破滅が待っていないこと、ですね…。)

思い出したように出てきたDeUS 。


イカーワを見ると監視者ってある種の変態集団では?

(変態が権力持つとか手に負えね~…。)



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