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14 解放交渉

─ 野盗視点 ─


『テメッ…』


『待つにゃ!』


『隊長、でもっ!?』


(くくっ…、やっぱそうなるよな?)


 野盗リーダーの機体が掴むモノに構わず前に出ようとした部下を、討伐隊の雌隊長が静止する。


「おいおい、上司の言うことは絶対だろ?

 迷惑かけたく無きゃ、引っ込んでな。」


 踏み留まるも上官に何か言いたげな部下に向けて、従順であるほどに効果の増す言葉で挑発する。

 これで奴の部下は勝手に動けなくなり、仮に反抗的な者がいてもそれはそれで予想外の動きをするものだ。

 それが必ずしも有利に働くとは限らないが、あの雌隊長の策を潰せると思えば不利にはならないだろう。


『で、一応そちらの要求を聞かせて貰うにゃ。』


(よしよし、こっからだな。)


 予想通りの反応に野盗リーダーはほくそ笑み、演技を開始する。


「ああ?何だその態度。

 気に入らねぇなぁ?」


 船の防衛はもう不要と判断したのか、船の護衛についていた機体が合流し3対4の構図。

 加えて部下の1機が捕らわれ、実質2対4の倍の戦力比となっている。

 そう考えているのか上からものを言ってくる奴が気に入らない。


『要求は?』


(…ちっ。)


 恫喝に動じず再度要求を尋ねてくる討伐隊隊長に、野盗リーダーは苦虫を噛んだような思いに駆られる。


「分かってんだろ?

 お前達の船と船の積み荷全部だ!」 


 明らかに過剰な要求。

 これが当初そうだと思っていた単なる護衛付き輸送船ならば、この時点で交渉は決裂しどちらかが全滅するまでの殺し合いが再開されることだろう。

 しかしキャトラス軍には宇宙関連の利権のほとんどを管轄する反面、領域の保全の責任がのし掛かる。

 そして野盗の討伐と要救助者の保護では、保全の責任から後者が優先事項とされる。

 ましてや野盗が元軍属の今回の場合、軍としては何としてでも要救助者の保護を優先するだろう。


(ちと小せぇが無傷の船と積み荷の確保は確実。

 …まぁ、どちらにしろ皆殺し何だがな。)


 討伐隊は野盗の戦力を知っていた節が多々あった。

 となれば情報元は前に撃退したパトロール隊だろう。

 そして今回も逃がしてしまえば、軍は形振り構わず本格的な掃討作戦を展開するだろう。

 それに私的な感情からも、この討伐隊を逃がすという考えは最初から無い。


(後はサイをどう解放させるかだが…。)





















─ ピコ視点 ─


(─とか考えてるんだろにゃ…。)


 確かに軍の規律には『キャトラス軍支配宙域にて救助を求める市民がいた場合、現行の任務を放棄し要救助者の保護を優先する』という条項がある。

 しかし今回の場合だとこの宙域は非公式ではあるが別勢力(ノーサイド)の実効支配宙域外縁であり、救助を求めている者も厳密に言えば市民ではない。(だからこそ見切られたのだろう。)

 つまり今の我々に野盗の捕虜となっている彼の保護を優先する義務は無い。


(しかし…。)


「積み荷は渡すにゃ。

 だけど船は渡せないにゃ。」


 もし本当に生存しているのであれば、ライオネル達訓練生の心情的にも救助をしたいところ。

 次の策を考えるまでの時間稼ぎを兼ねて、交渉の真似事をすることにする。


『それこそ無理な相談だなぁ?

 何しろ俺達の家を誰かさんがぶっ壊してくれたから

 なぁ。』


 …まぁそうなるわな。

 

『お前らに交渉の権利は無ぇ。

 黙って積み荷ごと船を寄越せばコイツは解放してや

 るよ。』


『 お願いします 助けて!』


 野盗に完全に怯えてしまっているのか、捕らわれているとはいえ抵抗の素振りを見せない訓練生の機体。

 しかし怯えているにしては、救助を求める声が元気過ぎるようにも思える。

 自身が救出されるチャンスに気力を振り絞っているのか、はたまた…


(「野盗の一味になっているか、にゃ。」)


 可能性は無くは無いが、それはそれで何故彼だけ今まで出て来なかったのかという疑問が沸く。


『たった三名で船を運用できるわけ無いにゃ。

 欲張るのも程々にするにゃ。』


 これも厳密に言えば、船を動かすだけであれば操舵の一名で可能だ。

 しかし今回のように母船として運用するのであれば船の各部操作に周囲の観測等が必要となり、三名ではポッドの運用どころか船の運用すら手落ちとなる。


『なら船員も置いて行きな。』


 それこそ馬鹿な要求である。

 訓練生一名の救助のために船や物質はともかく、軍属とはいえ船員を何名も引き渡すわけが無い。


『兵士なら市民のために犠牲になるのは本望だろ?』


 何でこうも自分たちに都合の良いように思い込めるのか…。

 市民の保護が優先されると言っても、市民一名に対し兵士が何十名と犠牲になる場合はその限りでは無いというのは明白だ。

 …まぁ、我々は精々が二十名になるかといった員数なのだが。

 しかしまぁ、この都合の良い思い込みが事態をややこしくしている。


(さて…どうするか。)


 いっそのこと仕方のない犠牲と割り切ってしまうか。

 そうして先制で仕留めてしまえば、これ以上この野盗による本当の市民の犠牲は無くなる。


(やるしかない…にゃ。)


 大のために小を切り捨てる非情な判断。


『ピコン!』


 しかし行動に移る前に船からの暗文が届く。


「………、これはっ!?」


 届いた暗文の内容は、非情な判断を下す覚悟も野盗を取り逃がしてしまう可能性も、全てを解決するものであったのだった。



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