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11 正体露見

前半は三人称視点です。

 耐レーザー塗装。

 レーザー兵器の開発から数年遅れで開発された、装甲に耐レーザー性を付与する塗料皮膜である。

 この塗料が開発された経緯として、当時レーザー兵器の実用化の目処が立っていたキャトラス軍開発部において、レーザー兵器の普及による装甲の無意味化に対する手段が必要とされた。

 耐レーザー性のある装甲材と平行して開発が進められた耐レーザー塗料は、既存の兵器へ塗布するだけという手軽さから、開発から現在までキャトラス軍の兵器に使用され続けている。

 しかしこの耐レーザー塗装は軍艦の分厚い装甲を前提としており塗料自体の耐レーザー性は名称程の効果は無く、ポッドの装甲では射程外からの流れ弾のような威力の減衰したものを防ぐ程度の効果にしかならない。

 また、目下の敵であったドギヘルス軍が実弾系火器を主眼に置いたことで、この耐レーザー塗装が活躍する機会がほぼ無となる不遇もあった。


『傭兵がそれ(耐レーザー塗装)をやれるわけが無ぇ!』


 激しく動揺するキマイラ(スカベンジャー)()パイロット(リーダー)

 その動揺も元兵士(脱走兵)であるが故か。

 耐レーザー塗装は塗装皮膜のため、定期的に塗り直しをしなければ効果は無くなってしまう。

 そして耐レーザー塗装は微妙な効果であっても、キャトラス軍の秘匿技術である。

 普通に考えて、スクラップ同然の機体(ジャンク・クラっド)に耐レーザー塗装など為されているわけが無いのだ。


『…お前らまさか軍の回し者(討伐部隊)かっ!?』


 そう考えたスカベンジャーのリーダーでさえ、自分のその考えの理解に苦しむ。

 しかしそうでなければ、エネルギー節約のために最小出力且つ砂塵で減衰したとはいえ、近距離からのパルス弾の直撃を弾く程の効果の説明がつかなかった。


『お前ら、パルスガンの出力を上げろ!

 コイツら軍の連中だ!』


『りょ、了解!』


『何だって、コイツらが!?』


最初(ハナ)からそうしてりゃ良かったんだ。』


 部下の軽口に普段なら怒鳴り声を上げるところだが、まさに今追い詰めていた敵機を逃がしてしまったところだ。


『無駄口叩く暇あるなら、そっちに向かった敵機を墜

 とせ!』


 スカベンジャーのリーダーは怒鳴りはしないが、自身の失態の後始末を部下に押し付ける。


『それはいいけど、リーダーは何すんだよ?』


 仕事を増やされた部下が尋ねた。


『奴らが軍の連中ならアレが使えるだろうよ。』


 スカベンジャーのリーダーは行動不能にされた母艦にある、鹵獲したは良いものの厳重な防護(プロテクト)により置物と化している機体を思い浮かべていた。


『あん?

 …なるほど、そういうことか!』


 一瞬怪訝に思う部下だったが、それの用途に思い当たり悪い笑みを浮かべる。

 軍であるが故の制約。

 スカベンジャーの彼らは、軍の制約や規律に嫌気が差して軍を脱走したクチだ。

 制約や規律がいかに自ら達の首を絞めるかは身に染みている。


『えげつないやり方だが悪かぁない。

 バレないように巧くやれよな。』


『それはお前らが、どれだけ奴らを焦らせるかにかか

 っている。』


『んだよそれ。

 …まあ、適当にやってやるさ。』


『ああ。

 …間違っても墜とされるなよ。』


『りょーかい。』


 討伐隊(主にピコ)に良いようにしてやられてきたスカベンジャー。

 彼らの謀は、水面下から“着実に”討伐隊に襲い掛かろうとしていた。





















─ 討伐隊視点 ─


「ええい、何をモタモタしている!?

 野盗共の母艦は破壊した。

 残党など放って置けばいい、撤退だ!」


 444小隊の旗色がいよいよ悪くなってくると、バッズはスカベンジャーの母艦を沈黙させたことで任務達成とし、ザック船長に早急な退却を叫ぶ。


「あれは一般にも流通している船ですよ!?

 それに当合同部隊の任務は脱走兵の排除です!」


 喚くバッズにザック船長は、母艦を破壊しても無意味なことと任務の達成条件を満たしていないことを指摘し、バッズの指示を拒否した。


『バッズ大尉、もうザッコとモウブが限界だ!

 いい加減ライオネル隊を出せ!』


『頼みますよ大尉、俺たち(ライオネル隊)も戦える!』


パシュ…


 愚直に船の防衛につくトリアンダが再度ライオネル隊の援護を要請し、ライオネルも隊の出撃を訴えた。


「揃いも揃って指揮官である儂に歯向かいよって…!

 貴様ら、帰還したら覚悟しておけ!?

 お前達全員、命令違反で軍法会議にかけてやる!」


 万が一にそれ(命令違反)が軍法会議で認められたとして、違反を問われるのはどちらか?

 それはそれとして、自身の意見に賛同する者が誰もいないことを理解したバッズが、遂に強権を発動しようとした。


ダンダンダンッ!


 しかし船内に連続して響く発砲音にバッズはおろか、ザック船長に無線の向こうのトリアンダやライオネルまでが驚愕に黙る。


「イカーワ、貴様っ何のつもりだ!?」


『イカーワだって!?

 お前何してんだっ、出撃待機中なんだぞ!』


 アサルトライフルを構えるイカーワ訓練生に、バッズは明らかな反逆行為に狼狽し、ライオネルはチームメイトの凶行を止めさせるように説得を試みた。


「騒がないで下さい。

 現時点を以てゴルドー・バッズの指揮権を剥奪、バ

 ッズ大尉指揮下の者は“我々”の指示に従って貰う。」


 これまでのどこかオドオドしていた様子が鳴りを潜め、一方的に淡々と伝えるイカーワ。


『イカーワ…、本当にお前なのか?』


 あまりのイカーワの性格の豹変に、ライオネルは彼が本当にチームメイトなのかを疑う。


「…我々だと?

 反逆者がまだいるか!」


 イカーワの言葉から誰に問うでもなく怒鳴るバッズ。


ダンッ!


「あなた方に説明している時間も義務もありません。

 …失礼、これを。」


 もう一度発砲して威嚇すると、イカーワはザック船長に端子を渡す。


「…わかった。」


 ザック船長はイカーワに渡された端子を、船長席にある端子台に接続する。


『おっ、繋がったな。

 イカーワ、一分遅刻だ。』


 端子が接続されると船のモニターに映像通信が開き、映された中継映像で話しているのは整備士見習いのボンドであった。


「ふんっ…何やら大層なもの(アサルトライフル)を用意しているかと思え

 ば、未熟者の犯行とは呆れて物も言えん。」


 銃を持っている相手に、物も言えないと言いながらも挑発的な発言をするバッズ。


『呆れたのはゴルドー・バッズ、貴様の方だ。

 それに今の我々の身分は仮のものなのでね。』


 モニターの向こうで大袈裟に肩を竦めるボンド。


「ほう…なら本来の身分とやらは公権力に逆らえると?」


(粗方敵対的組織の工作員…こうして時間を稼いでい

 れば、映像向こうの生意気なテロリストもいずれ

 捕縛されるだろう。)


 というのがバッズ大尉の考えだったのだが、その思惑はボンドが身分を名乗ったことでせいだい盛大に外される。


『逆らうも何も、我々はそちら側だ。

 「監視者(オブザーバー)」…我々は便宜上そう呼ばれている。』


「なっ…!?」


 公然の秘密として存在がほぼ確実視されながらも、その実態は謎に包まれた存在の呼称に絶句するバッズ。

 それもその筈。

 噂される「監視者」とはその呼称の通り、主にキャトラス内部で“保全”を掲げ暗躍する者達とされているのだから。

スパイと言えば「ボンド」でしょう?

イカーワも義賊の系譜だし。

(描写は無いけど、リョウはゲーモンの孫です)

※ゲーモン・イカーワ(前作参照)



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