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ヒント:ザッコとモウブは元戦闘機パイロット
─ 野盗視点 ─
『リーダー、船に戻りましょう!?』
『いや、今すぐ撤退した方が良い!』
予想だにしなかった母船への攻撃に、部下が頭目に意見する。
(傭兵風情が、赦さん…!)
「撤退はしない、数はこっちが勝ってる!
それに船ならまた奪えば良い。」
勘違いしているとはいえ「仮にも正規軍の討伐部隊を傭兵風情と言うなら、野盗に堕ちた脱走兵は何だ?」ということはさておき。
傭兵風情にしてやられたことで元兵士のプライドが傷付けられ、頭目は撤退の選択肢を取ることが難しくなっていた。
「二番隊は船の護衛の2機を追い続けろ!
一番隊三番機、四番機は二番隊の後ろに付け。
俺と一番隊二番機は、俺の船を墜としたクソを殺り
に行く!」
この場合、孤立しているピコ機の撃墜に向かうより船と船を護衛するトリアンダ機を攻撃するのが利口なのだが、兵士のプライドと言いながらのその行動は完全に「ナメられたら終わり」という無法者の思考によるものであった。
『言われなくてもやってる!』
『あ、コラ逃げんなよっ!』
頭目の指示に二番隊の残りの2機は、逃げ回る護衛機2機に苛ついている様子の返答を返す。
「今から一番隊を援護に付ける、逃がすな。」
不甲斐ない二番隊に殺意を抱きながら、頭目は冷淡な声で命令した。
『ひいえぇ~!』
『ヤバい、ヤバいって!』
増えた敵機に、護衛機のパイロットが相変わらず気の抜ける情けない悲鳴を上げている。
『へへっ、終わりだよ!』
『捕まえたぞ!』
護衛機を追っていた二番隊から喜色の声が上がる。
『ザッコ、モウブ、重りを捨てるにゃ!』
しかしそこに始めて聞く雌の声が、追われていた護衛機に指示を出した。
(俺の船をやった奴が雌だと!?
…機転は利くみたいだが、多少機体を軽くしたとこ
ろで軍用機の速度には敵わんよ。)
雌の身で副リーダーになった機転は評価するが、所詮は傭兵。
頭目の目はプライドと偏見で、最早盲目レベルに曇っていた。
『了…解っ!』
『やっとだな!』
バシュン、バシュン
護衛機が機体背部の箱を分離する。
『無駄だっ!』
『邪魔だなぁっ!』
パージされたバッテリーパックを破壊しようとする二番隊機。
(重り…、それに「やっと」だと?
まさかっ!)
機転の利く雌副リーダー。
パージされた箱が単に稼働時間延長のバッテリーではないとしたら?
「待てっ、撃つな!」
その箱の正体を察した頭目が止めるが遅い。
ダンダン、ダンッ!
こういう時に限って、放たれた弾丸は箱に命中する。
ドンッドカンッ!
『なんっ!?』
『ぎゃあぁっ!』
ボッ、ボンッ
箱の異常な爆発に巻き込まれた二番隊の機体は、その耐久力を失い分解した。
『機雷だと!?』
『奴ら正気かよ!?』
二番隊の全滅を目の前で目撃した三番機と四番機が、護衛機の狂気的な行動に戦慄する。
『何だコイツら…!』
『練度といい、戦い方といい普通の傭兵じゃねぇぞ!?』
『船にはミサイルにジャミングスモーク、…まるで戦うことが前提のような?』
野盗に堕ちても元軍属。
ついに小隊のみとなった一番隊の面々は、自ら達が相対する標的の正体を察し始めるのであった。
─ ピコ視点 ─
ゴオォッ
敵船の沈黙を確認した後、残党を掃討するべく戦闘宙域に急ぎ向かう。
ドンッ…ボッ
その途中モニターに複数の爆発が映り、部隊で共有している索敵レーダーから敵を示す光点が2つ消えた。
(猫妖精の置き土産作戦成功にゃ!)
本来の予定ではこちらが先に目標を発見した際に、敵船の逃亡防止にポッドで先回りして進路に設置して貰う予定であった即席機雷。
野盗の先制により無用と化するどころか、被弾したら一発アウトのハードモードとなる要因となってしまっていた。
しかしザッコもモウブも良く敵機を引き付けてくれた。
敵機にダメージを与えて退かせられたら上等といった突発的な作戦だったが、まさか撃墜出来るとは思ってもいない成果だった。
諸に爆発に巻き込めたことも要因だろうが、対空ミサイル2発分の爆薬の威力は伊達では無いということだろう。
(『ピコ…。』)
(「部下に爆弾背負わせたまま囮にするとか、鬼畜の
所業にゃ…。」)
ここまでの戦闘を優位に進められたことに「色々と仕込んだ甲斐があった」と密かに頷いているわたしに、何故かドン引きといった様子の居候コンビ。
(確かに即席機雷を装備するように指示したのはわた
しだけど、まさか敵ポッドとそのまま機動戦闘する
とは思わないにゃ!?)
装備の指示はあくまで「敵船を発見してから機雷の装備作業をしていては対応が遅れる」からであり、むしろ即席であるが故に危険が生じたらすぐに放棄するように言っていた筈だ。
囮云々に関しては状況からそうなってしまったのであって、リスク的には長距離レーザー砲の破壊と同等ではないだろうか?
(『…確かに?』)
(「オメーが出来ることを部下にも求めるんじゃない
にゃ!」)
シアは納得したようだが、マルは未だに噛み付いてくる。
…元クー・シー(?)の戦士だけに。
(「犬っコロと一緒にするんじゃないにゃ!?」)
(違うにゃ…?)
(『マルは牙狼族だから…。』)
どうやらマルの元種族の牙狼族は妖精犬族の一種ではなかったらしい。
そして牙狼族をクー・シーと同一視するのは侮辱だと。
『ピピピピッ!』
敵機接近警告。
『テメェ、よくも船をやってくれたな?
雌だろうが関係ねぇ、落とし前つけやがれ!』
態々無線を公開回線にしての口上。
モニターには鹵獲されたらしき修理の跡があるキマイラと、その僚機の正規軍仕様のキメラ改が映されていた。
(「敵のお出ましにゃ。
手間が省けたにゃ、ピコ。」)
メインウェポンのガンポッドは弾切れ。
ブースター燃料の残量も減る一方。
(…さて、どう相手したものかにゃ?)
圧倒的不利な戦いが始まろうとしていた。
ザッコとモウブがやたらと情けない悲鳴を上げていたのは作戦二割の本気八割
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