8 本丸を狙え!
初代の耐熱フィルム、延びる剣柄、重なる盾、偵察用集音マイクばりの謎機能
『ピーーーー…』
連続して微かに聞こえる電子音。
モニターに映る敵船に重なるように、黒から青、緑、赤、そして白へとグラデーションに色が付いていく。
(『何をしているの?』)
極彩色に色付くモニターの敵船を、微動だにせず見詰めるわたしにシアが聞いてくる。
何もしない事を決めた筈のわたしが、何かしていることが疑問らしい。
何もしないと言ったな?あれは嘘だ。
「見つけたっ!」
シアに回答する前に、敵船で白くなっている箇所を見つけ、思わず声に出る。
先ほどから鳴っていた電子音は、エネルギーソナーの作動を知らせる音だ。
船舶用レーダーに比べ探索範囲に劣るポッドのレーダーとは言え、その広域探索の範囲外から有効なレーザー。
その長距離砲を撃つには、生半可じゃないエネルギーが必要だ。
(「つまり高エネルギーを表す白に染まったところ
に、そのレーザー砲があるってことにゃ?」)
イグザクトリー。
加えて、高エネルギーを秘めたレーザー砲を破壊した場合どうなるか?
(「行き場を失って暴走、つまり…」)
(『ドカンッ!
…ってことね!』)
…まぁ、上手くいけばではあるが。
幸いと言っては何だが、件の長距離レーザー砲は敵船ブリッジの直ぐ前に設置されていて、射撃の狙いを纏めることが出来る。
(『ねぇ、思ったんだけど…。
何で敵の弱点が分かるのに、それを今まで使わな
かったの?』)
確かに今までも敵艦船を相手にしたことは、わたしがこうなっている間接的な理由である[敵艦隊陣単艦突破命令]を代表として、いくらでもあった。
(いや…、使わなかったんじゃなく“使えなかった”ん
だにゃ。)
今は大変役立ってくれたエネルギーソナーだが実は問題が多く、軍事利用のための研究が打ち切られた技術となっている。
(「ポッドを兵器化した軍が断念したにゃ?」)
マルの言い草はまるで、「軍は何でも軍事転用している」と思っていそうである。
実を言うとポッドの兵器化は、ウィング中将が半ば強引に進めたプロジェクトであった。(…と、ミーコがわたしに暴露していた。)
間違えれば軍からの追放までもあり得た博打であったが、プロジェクトの成功により軍のみならず政府へも影響力を強めることになった…とか。
それはさて置き。
(エネルギーソナーは性質上、どうしても探知に時間
がかかってしまったのにゃ。)
物体の内部にあるエネルギーは、温度のように判り易くその存在を計測出来ない。
何とか物体の持つ総エネルギーを瞬時に算出することは可能としたが、エネルギーの分布となると途端に技術が追い付けなくなるのだ。
(「だから今は使えたのにゃ?」)
疑問形で聞いてきたマルだが、言葉とは裏腹に確信を持っているようだ。
まぁ、その通りなのだが…。
(『自分と相手が止まっていて、ようやく使える機能
なのね…。』)
そう言われると「扱いが難しいが条件が揃うと強力な機能」と誤解してしまうが、そもそも武装を船体各部に搭載する軍艦はそこまでピンポイントで狙う必要は無いし、なんなら装備の火力でゴリ押しでもイケる。
結局のところエネルギーソナーは、欠陥技術の「死に機能」である。
今回はたまたま活用可能な条件が揃っただけで、本来の活用法は建築に際して、構造物にかかる負荷の確認をすることにある。
(「ピコッ!
話してる場合じゃないみたいにゃ。」)
『発射ぁ!』
マルに言われ再度集中するや否や、ザック船長の号令が聞こえ、
ドンッ、ドンッボフンッ
ここから遥か遠くで、3つの爆発の華が開いたのが見えた。
『ビビッ』
(『ピコ、敵の船が!?』)
ゴォォ
エネルギーソナーのエラー通知とシアの焦った声。
ミサイルに気付いた敵船が動き出した。
ヒュウゥ…ドンッ!
向こうの爆発から遅れ、ここに飛んで来ていた煙幕弾頭ミサイルが、敵船の直前で自爆する。
「ちぃっ!」
敵船が撃墜に失敗した場合を考慮して、近接起動で指示したが、まさか敵船が全速後退で回避を試みるなど予想外も良いとこだ。
ゴウッ!
この際隠密がどうとか考えるまでもなく、ブースターの出力全開で強襲するっ!
ズズズ…
ブリッジを含む船体の前方半分が煙幕にのまれていた敵船が、その船体の全てを表した。
敵船は僅かに、この機体の主武装である7.5ミリ単装機関銃の射程外。
(「ピコッ!」)
『ピーッ!』
ビシュウゥッ!
「何のおぉっ!」
操縦レバーを左側に目一杯倒す。
クルッ、ジ…ッ!
敵船の長距離砲から放たれたレーザーはわたしの機体を掠め、討伐隊と敵のポッド部隊が戦う宙域に飛んで行った。
『ピッ!』
敵船をガンポッドの射程に捉えた。
「このおぉぉっ!」
ドドドドドッ!
機体が傾いているのも構わず操縦レバーのトリガーを引き絞り、敵船前方の斜め上方から7.5ミリ対装甲弾を全弾叩き込む。
ボンッ…ドゴオォォンッ!
7.5ミリが数発命中した敵船の長距離砲は損傷部から出火、その一拍後ブリッジを巻き込む大爆発を起こした。
リ…、ギュンッ
機体の相対平行を戻し、操縦レバーを手前に引いて急上昇。
「……。」
ズズズ…
半壊したブリッジから噴煙を上げる敵船から、警戒していた対空攻撃は無い。
(『…撃破、したの?』)
船体はまだ十分に健在だが、この状況で沈黙している以上、行動不能とみて良いだろう。
スカベンジャーの本元は排除した。
(「後は残党を狩って終わりってにゃ。」)
「んむ…。」
マルの言うほど楽に終えられれば良いのだが、勘がそうもいかないと囁いていた。
マル、シアOUT ~!(フラグ的な意味で)
前書きの意味が分かった人はマニアですね?
(作者はニカワ)
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