7 沈む船
無能上官がアップを始めたようです。
─ 討伐部隊視点 ─
『ビーッ、ビーッ!』
「ええい、444は何をしている!?
船長、今すぐ戦闘宙域から離脱だ!」
船内に鳴り響く物体接近警報とバッズ大尉のがなり声。
船が攻撃を受けたことで、任務初日以降二度目の指揮官席に座っていた。
「馬鹿言わないで下さい。
作戦行動の邪魔をしないで!」
唯一バッズと同階級である、船の指揮権を持つザック船長が言い返す。
任務内容が「元脱走兵らのスカベンジャー討伐」であるのに、任務目標であるスカベンジャーとの戦闘からの離脱は受け入れられない。
そうでなくとも今の今まで役目を果たさず、居住ブロックの一室を占拠していたバッズの指示など、ザック船長は心情的にも聞き入れたくは無かった。
「馬鹿とは何だ!?
たかだか輸送船の船長の分際で!」
軍の活動を支える者達を敵に回すトンでも発言を繰り出す、仮想敵小隊指揮官。
「ええ、仰る通りです。
しかしたかだか輸送船の船長でも…いや、だからこそ船に乗った者全員に責任があるのです!」
保身のために権力をちらつかせるバッズに対して、自らの矜持を叩きつけたザック船長。
それは奇しくも、自らの部隊だけでなくライオネル隊に輸送隊を守れるように奔走した、英雄と呼ばれる小隊長と同じ心持ちであった。
『ブリッジ、ザッコとモウブが戻って来た!
そのケツに敵機3、更に少し離れて小隊が付いて
る。』
船と自機レーダーをリンクさせて、戦闘の観測を行っているトリアンダからの報告。
事前の情報通りだとすると、全ての敵機を捕捉出来た。
(良し、これで奇襲の心配は要らない。)
デブリ帯の戦闘で恐ろしいのは、当然ながら無数にあるデブリを利用した伏兵である。
流石に可能性は無くならないが、事前情報の数を全て捕捉しているといないとでは作戦への集中が異なる。
戦略的には覆しようのない不利だが、状況は討伐部隊に向いている。
「両舷三番、二番用意。
右舷二番はPA設定で444一番に照準。」
「両舷ランチャー起動。
右舷二番、PAセット、フォース一番にロック完了。
いつでも撃てます!」
ザック船長の指示に従い、クルーが素早く準備を完了させて報告する。
「444小隊に通信繋げ!
『フォース隊援護する。
カウント…3、2、1、発射ぁ!』」
ドシュッ!ドシュシュシュッ!
船の左右から計4発の飛翔体が放たれ、船体を小大と二回揺らした。
─ 野盗視点 ─
『待ちやがれ!』
ドンッ!
船を防衛する仲間の機体と合流しようと下がる護衛機に、追い縋る二番隊が後方から射撃を加えた。
ガキィンッ!
『うわっ、当たった!?』
弾は機体の曲面に弾かれたものの、被弾したという事実は、パイロットにさぞ圧力を与えたことだろう。
『ハハッ、まだまだ弾はあるんだぜぇっ!』
ドンッ!ドンッ!
攻撃を当てたことで、更に連続して射撃を行う二番隊機。
(あの馬鹿め…、弾もタダじゃないことを)
ただでさえ現在貴重品である弾を、ろくに狙いを付けもせず無駄にする手下に呆れる。
『ブリッジ、ザッコとモウブが戻って来た!
そのケツに敵機3、更に少し離れて小隊が付いてる。』
護衛隊の指揮官機に捕捉されたようだ。
しかし逆に言えば、こちらも指揮官機を捕捉出来る位置に来たということになる。
『ピンッ!』
(見つけた。)
機体のレーダーに新たな反応が二つ。
その内の一つはポッドより大きな反応、つまりデブリに隠れた標的の船の位置を暴いた。
「スナイパー、チャージは済んでるな。
今から炙り出す、外すなよ?」
一射目からそれなりに時間が経っている。
船の動力に無理矢理繋いだせいで、出力の低下と冷却機能を始めとした幾つかの機能に不調をきたした拠点設置型レーザー砲だが、軍用装甲でもない輸送船を仕留めるには十分な火力を有する。
一射目は航行中のところを撃ったため狙いが逸れたが、動き出しで速度が出ていないところを狙えば、次こそはブリッジを撃ち抜けるだろう。
『フォース隊援護する。
カウント…』
「敵船から攻撃だ!」
護衛機の退却が罠だとは分かっていたが、非武装だと思っていた標的のまさかの動きに、仲間へ無線で注意を叫ぶ。
『3、2、1、発射ぁ!』
ドシュッ!ドシュシュシュッ!
『うわ!』
『ロケット攻撃!?』
『違っ、ミサイ』
ボッ…!
標的船から発射された4発の飛翔体の内、一発はあらぬ方向に飛んで行った。
そして先行する二番隊に迫った3発中1発が、二番隊の機体を捉えて撃墜する。
「撃てっ、撃ち落とせ!」
ヴォッ!
残る2発は一番隊に迫るが、4基のバルカンが火を吹く。
ボッ
一発が撃墜され爆発。
『おおおぉっ!』
ガッガキュッ!
最後の一発も、集中砲火に被弾。
ボッ…ブワッ
『何だぁ!?』
撃墜した飛翔体から、爆煙が広範囲に渡り拡がる。
『煙幕ッ!』
一番隊の元部下が爆煙の正体を知らせる。
(小賢しい真似を…。)
「っ!?」
視認出来なくともレーダーで位置は丸分かりだ。
しかしその考えも、モニターのレーダーを確認しようとして覆された。
『リーダーッ、探知妨害だ!』
部下も敵機を警戒しようとして気付いたのだろう。
表示されているレーダーはノイズが酷く、とても位置情報の把握など出来ないことに。
ビシュゥッ!
「スナイパーッ、何をしている!」
ジャミングスモークの一部を吹き飛ばし消えたレーザー。
作戦外の行動に、無線に怒鳴る。
「すぐに再チャージを…、ってまさか!?」
リカバリーの指示を出す途中で気付く。
(あの一発は“何処”に飛んで行った?)
そしてその疑問は直後に氷解する。
『こちらブリッジ、攻撃を受けた!
誰か戻って来てくれ『ドゴオォッ!』
うわああぁっ!』
無線から聞こえた爆発音と悲鳴。
『隊長、俺たちの船が…。』
ようやくスモークが晴れ、戻る視界。
部下の呟きに促され、機体を後方に向けメインカメラを望遠モードに切り換える。
「…クソッ、やってくれる…!」
モニターが映し出した映像には、船体の一部が吹き飛び、ブリッジから噴煙を上げる母艦の姿が映し出されていた。
お前の隻、無えから!
次回は今回のピコ視点からになります。
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