5 必殺の連携
盛り上がって参りましたぁ~っ!(謎の実況風)
ピコ「わたしは除け者にゃ!?」
─ 野盗視点 ─
「良し、当たった!」
標的の船の一部が弾けたことにより生じた粉煙を見て、観測手役が歓声を上げる。
「馬鹿か!?ハズレだよ!
あれはまだ“動いてる”だろうがっ!
俺はブリッジを狙えと言った筈だ!」
しかし頭は納得はせず、逆に砲撃担当の手下達を怒やす。
標的のような中型級以下の船は、軍艦等の大型艦と異なり、ブリッジを破壊してしまえば行動不能となる。
そして標的は第一射に被弾後、次弾回避のためかデブリの影へと船体を隠した。
デブリ帯で制御を失った船が、デブリへの衝突を回避する可能性は無に等しい確率だ。
つまり詳細を確認出来ずとも、標的はまだ活きていることの証明に他ならない。
「標的より新たな反応が2つ、こちらに接近中!」
(護衛か…、だが期待出来そうじゃねぇか。)
護衛(しかも複数)を用意しているとなれば、積み荷の価値の高さが伺える。
前回のような例外の可能性も捨て切れないが、少なくとも護衛機用の物資は手に入る。
それに撃破した護衛機…速度からポッドだと思われる機体は、廃棄機体でも闇市で高く売れる。
最近は作業用型のスクラップでも、一機につき小隊1ヶ月分の食料又は戦闘半回分の物資を賄えるまでに高騰している。
「二番隊を出して護衛の相手をさせろ。
船はこっちで沈める。」
二番隊の装備で船を沈めるには弾と時間がかかる。
迅速かつ低コストで仕事を完了させるには、このやり方が現状ベストだった。
「りょーかい。
隊列はどうしやす?」
いつも通りの指示に、いつも通り気の抜けた返事をする通信担当の手下。
「奴らが隊列を組めるとでも?
数はこっちが多いんだ、適当に突っ込ませろ。」
頭にとって縄張り争いの結果傘下にした二番隊は、彼の部下には含まれていなかった。
そんな二番隊は最後の役割として、彼らの処分を兼ねて鉄砲玉になることを求められた。
「へ…?へい!
よし、お前ら突撃だ!
澄ましたカタギの奴らをボコボコにしちまえ!」
『『『オオオオッ!』』』
鬨の声が無線を震わせ、標的の隠れた岩塊に向けて4機のキメラが迫って行くのであった。
─ 討伐部隊視点 ─
『ザッコ、モウブ。
敵4機が正面から来るぞ。』
索敵のためレーダーを広域モードにしているトリアンダが警告する。
『三番機、捉えた。』
『四番機も捉えたぞ。』
レーダーを情報の代わりに索敵範囲の限られる戦闘モードにしている2機も、敵機を捉えたようだ。
同時にそれは、間もなくポッド同士の近距離戦闘が開始されることを意味している。
ヒュンッ…
『っぁぶね!?
モウブ、あっちの射程のが長い!』
否、既に始まっている。
『ザッコ、出力上げてくぞ!』
ゴウゥッ!
このまま一方的に撃たれる理由も無し。
射程の不利を無くすべく、2機は速度を上げ敵小隊に襲い掛かる。
『モウブ!』
『応っ!』
自分たちの射程に敵機が入る刹那の間、ザッコとモウブは戦闘機時代から培ってきた連携を発揮する。
『『真ん中!』』
ドドドドドッ!
ドドドドドッ!
阿吽の呼吸で放たれた弾丸。
ボンッ!
その大口径弾の十字砲火は、隊列から僅かに突出した一機を撃墜される認識すらも与えず木っ端微塵に吹き飛ばす。
『ひゃっはぁっ!?』
『ひぃいぃっ!』
『何が起こった!?』
その鮮やかな手並みは、残る敵パイロットに恐怖を抱かせた。
『ああああっ!』
『来るな来るな来るなぁ~っ!』
『撃て撃ちまくれ!』
ドンッドンッドンッ
恐慌をきたした敵部隊は狙いはさておき、ひたすらに引き金を引く。
ヒュンッ…
『当たるかっての!』
ヒュッ…ヒュンッ…
『弾幕にすらなっていないぞ!』
しかし悲しいことに単発機銃×3を幾ら撃ったところで、嵐のような対空砲火を生き延びた元戦闘機パイロットは悠々と回避する。
『おし、イケるぞ!』
『だな。』
戦時中にはありふれていた連携一つで瓦解した敵部隊に、ザッコとモウブは調子を上げる。
『『次はお前だ!』』
『チクショウ、俺かよっ!?』
次にザッコとモウブが標的に定めたのは、混乱する敵部隊にあって比較的冷静さを保って戦闘している機体だった。
『クソックソックソッ、…クソッタレがあぁ~っ!』
逃げようとするもあっさりと追い詰められ、自身に降り掛かる不条理に罵倒を叫ぶパイロット。
パパパッ、パパパッ
相対する3機のキメラの間に、二条の“光線”が閃いた。
─ 野盗視点 ─
時を遡ること十分前。
「ちっ、勿体無ぇ真似しやがる。」
二番隊の機体から送られてきた映像を見て、頭は舌打ちをする。
「二、三発もブチ込めば楽勝だろ?
んなのに2機掛かりでフルオートだぁ?
爆発したら回収出来ねぇじゃねぇか、クソが。」
頭の不満は手下が撃墜されたことには関心が一切向かず、標的の護衛機の戦い方では後に得られる利益が減ってしまうことに注視されていた。
『ひぃいぃっ!』
「落ち着けっ、数では有利なんだぞ!?」
『ああああっ!』
「おいっ勝手な行動は…、聞こえてるか!?
こちらの指示に従え!」
愚痴を言う頭とは対称的に、二番隊と指示を出す通信担当は阿鼻叫喚の直中にある。
「リーダー、不味い。
二番隊が今のでパニックになっちまった。」
無線と通信担当のやり取りを聞き、副官が頭に注進する。
元から二番隊は捨て石で、全滅したところで主戦力は無傷だ。
だからといって二番隊が全滅してから主戦力を出していては、戦術の愚である「戦力の逐次投入」に他ならなくなる。
そんなことは元兵士として、歪みに歪んだプライドでも許されなかった。
「…よし、一番隊出るぞ!
お前らっ、船は任せる。
だが俺たちの援護もしっかりやれよな!」
本来であればスカベンジャー風情が保持出来るものではない光学兵器を携え、キマイラに率いられた小隊が牙を剥く。
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