1 任務道中
ゴオオォ…
ひたすら宇宙を行くこと約8時間。
『ピッ』
『隊長、後10分で交代の時間だ。』
船のレーダー役として、ブリッジ上部に連結された機体に乗るトリアンダからの通信だ。
「了解、少し前に出てから帰還するにゃ。」
未だ作戦宙域には程遠い。
しかし燃料に余裕があり、目標以外の敵性勢力がいないとも限らないため哨戒に出るとする。
『…了解。』
ゴオッ
特に物言いも無かったのでブースターの出力を上げ、機体を加速。
(加速性だけなら中々のものなんだけどにゃ。)
あっという間にレーダーの後方に消える母艦の光点を見て思う。
『ピピッ!』
ブースター内部の規定圧力超過の警告が鳴る。
(また…、保ってくれよにゃ。)
出力は最大の七割程度、規定圧力に達する出力でも無く、以前の検証でセンサーの誤作動と判明していた。
しかし劣化が激しいのは事実であり、いつ機体に不具合が発生しても不思議はない。
(…うん周囲に機影無し、帰還するにゃ。)
少なくとも交代の隙を突かれる心配は無いことを確認出来たので、警告を解除しながら母艦へと帰還することにしたのだった。
……………。
………。
…。
カチャカチャ、カチャ、カチャン
『ピッピッピッ…、ピピッ!』
「…ふぅ。」
帰還後パイロットスーツの着替えもさて置き、ブースターの圧力センサーの応急処置を行う。
処置と言っても取付位置の調整と計測部の清掃くらいしか出来ないのだが、やるとやらないのとでは誤作動の発生率が違う。
センサーが作動するとブースターの出力に制限が掛かってしまうので、誤作動はなるべくして欲しくないのだ。
先程は警告を手動操作で解除したが、戦闘中に誤作動を起こされてはそんな余裕はないだろう。
ただでさえスペックが低下した機体なのに、更に制限が掛かるなど堪ったものじゃない。
「中尉、警戒お疲れ様でした。」
センサーの動作テストが完了したのとほぼ同時のタイミングで、待機する訓練生組のクルセルがやって来た。
「あ、お邪魔でした?
食事を持って来たんですけど…。」
わたしが着替えもせず作業をしているのを見て、クルセルはばつの悪そうな顔をする。
「今終わったところにゃ。
ありがたく頂くにゃ。」
警戒中は水とレーションバーしか口にしていなかったことに加え、センサーの応急処置を行っていたため実は腹ペコだったのだ。
「はい、どうぞ召し上がって下さい。
…私たちも警戒に参加出来れば良いんですけど。」
クルセルが悔しそうに呟くが、事前に決められた作戦の都合上、周辺警戒に改型を出すわけにはいかない。
クルセルとてそのことは分かってはいるだろうが、この三日間の文字通りの箱詰めに堪えるのも理解出来る。
「早ければ明後日には目標と接触するにゃ。
後方支援は頼んだにゃ。」
厳密に言えばぎりぎり明日中には予想される目標の縄張りに入るのだが、時刻の関係から明後日が本命となるだろう。
また敢えて接触と言ったが、正規部隊を攻撃し盗賊行為をしているとなれば、ほぼ確実に接触=戦闘となるだろう。
母艦が輸送船としては過剰気味な武装をしているとはいえ、到底ポッドの数的不利を埋められるものでは無い。
ライオネル隊に母艦の防衛を任せることで、わたしたちが攻撃に全力を尽くせるというものだ。
「はい、それは勿論全力で当たります。
しかし…。」
「なら他のメンバーも誘ってシミュレーションを行うにゃ。
状況は護衛任務、敵は8機に駆逐艦級1での設定を勧めるにゃ。」
待機状態が居心地が悪いのであれば、基地と同じ様に過ごせば良い。
何ならシミュレーションを行うことでポッドは稼働状態になるので、緊急発進も容易になるメリットもある。
「あっ、そうですね!
早速皆に提案してきますね。」
まさに「その手があったか!」と言わんばかりに、クルセルは走り去っていった。
「…もう少し落ち着きが欲しいとこだにゃ。」
(「3日もあのバイタリティが抑圧されていれば然も
ありなんにゃ。」)
(『元気なのは良いことだと思うわ。』)
数ヶ月指導を行ってきた癖でつい改善点を呟くと、退屈していたのであろうマルとシアが反応を示してきた。
(悪いとは言ってないにゃ。)
クルセルの切り換えの早いポジティブな性格は、それはそれで部隊のムードメーカーとなる重要な素質である。
但し感情に行動が直結しているようでは、いつか手痛い失敗をしないか不安になるのだ。
(『ピコがついている内は大丈夫でしょ?』)
(それは、まぁ可能な限りフォローはするけどにゃ…。)
いずれわたしの元から離れていくことが確実であっても、その他大勢に区別するには関わり過ぎた。
だからせめてわたしの下に居る内は、ライオネル隊に脱落者を出したくない。
(『うんうん、皆揃っているのが一番よね♪』)
ましてや戦争は終わっているのだ。
まだ新兵になってすらいない、訓練生が「戦死」など虚しいものだ。
(「…綺麗事にゃ。」)
(マルッ!)
(「ピコだって理解しているにゃろ?」)
(っ!)
…確かに戦場に出てきた以上、死というものはいつでもやって来る。
(『…だから、諦めるの?』)
(「綺麗事を言っていることには変わりはないにゃ。
…でも不運なことに私たちにはそれを実現出来る力
を持っているにゃ。」)
大方そんなことだろうとは思ったが、相変わらず素直じゃない。
(『マルッ!?
マルなら理解してくれると思ってた♪』)
そしてシアとマルの仲も相変わらずのようで。
マルとシアもわたしに配慮してくれているのだが、時折こうして“見せつけ”られるとイラッとくるのは勘弁して欲しい。
ぐにゃり
「っ!?」
突然視界が歪む。
(『ピコッ!』)
「っ…。」
声を出そうとしても口からは息が漏れるだけで、視界も段々と暗くなっていく。
(『ピ──ッ!』)
「………。」
(『────ッ!!』)
誰かが何かを言っていることを最後に認識し、わたしの意識は閉ざされた。
母艦(中型貨物輸送船)
装備 ポッド輸送貨物コンテナ ×6
回転ポッド固定台 ×1
三連装マルチランチャー ×2
ランチャー内訳(片側につき)
・改造発光信号弾 ×1
・改造煙幕弾 ×1
・対空短距離自動捕捉ミサイル ×1
前作の初代母艦と比べると船の級の割に(瞬間)火力が有るような…?
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