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5  再開、同期よ

皆さんは紅茶とコーヒー、どっち派ですか?

 昼食を食べ終えて、食後のコーヒー(ミルクたっぷり)を嗜む。


(「それは最早カフェオレにゃ。」)


 う、うるさいやい!

 今日は偶々ミルクをたっぷり入れたい気分だったのだ!


(『黒い飲み物(コーヒー)に白いミルク…。

 共食いかしら?』)


 ………、あ!

 (マリーダ)(シア)混ざって(寄り代になって)いるわたし(ピコ)ってことにゃ!?

 シアの難解なボケに、わたしの思考回路は一時的にショート(故障)してしまった。

 そしてそんなCPU()が弾き出したツッコミは凄惨を極めた。


(…飲み物だから共飲みでは?)


(「そこじゃねーだろうがにゃ。」)


 この三人組(トリオ)の真のツッコミ役が、普段愉悦優先な思考のマリーダであったことが判明した瞬間であった。

 

 …………………。

 …………。

 …。


 さて、刑務所に入っているとはいえ、服役者は奴隷のように働かせられるわけではないことは伝わっただろうか。


(「一昔前はそうだったけどにゃ。」)


(『囚人にも権利が認められているのは良いこと

 ね!』)


 そういうことで、ゆっくりとコーヒーブレイクをしても昼食休憩はまだ終わらない。

 他の服役者達は、所内に接地されたベンチに横になったり、解放されている運動場で体を動かしたり、許可されている者は図書室で本を読んでいたりして過ごしているようだ。


「ふ~む…。」


 そんな各々の様子を他所に、わたしは残り30分ほどをどう過ごすか悩んでいる。

 目ぼしいベンチ(昼寝台)は粗方使用中で、運動場のコートでは絶賛試合中。

 図書館等の許可制の施設の利用も、新参のわたしは許可が無い。

 わたしとしては昼寝をしたかったのだが…。

 

(「なら退いて貰えば良いにゃ。」)


(『お前の場所はわたしの場所ってこと?』)


(ガキ大将思考はヤメロにゃ。)


 そうできる能力があるだけに冗談だとしても笑えない。


(「『……………。』」)


 え…、冗談だよね?


 …………………。

 …………。

 …。


 結局のところ、わたしは出入りの緩やかになった食堂の机を一つ占領して突っ伏していた。

 日の当たる六人掛けの長テーブルの占領は、混雑時にはマナーが悪いことこの上ないだろう。


(「ド突かれても文句は言えんにゃ。」)


(『その度胸は無いみたいだけど?』)


 この体勢になって(机に突っ伏して)から10分ほどが経つ。

 この間にも混雑を避けて時間をずらした者たちが食事をとりにくる。

 そのかいあってか、わたしが机を一つ占領したくらいで席がなくなるということも無い。


(「というか寧ろ……」)


(『避けられてるわね!』)


 ああ…、だから出入りの割に気配が遠いわけか。

 まあ、注意されたら退くつもりではあるし、問題があるとすれば視線が少々鬱陶しく感じるくらいだ。


(ん?)

(「む?」)


(『どうしたの?』)


 わたしとマリーダの気が、同時に会話から逸れたことにシアがどうしたのか尋ねてくる。

 しかし答える間もなく理由が明らかになる。


「よおフローレンス、久しぶり。

 暇そうじゃないか?」


 服役者の中で比較的若い(と言っても、平均年齢はここ数年は低くなっているらしいが…)雄の二人組、その片割れが親しげに声をかけてきた。

 二人組のもう片方は若干顔色が悪い。


「……あ、もしかして…」


 英雄として広く知られるわたしだが、交友関係は限られている。

 二人組の内、顔色の悪い方は当然初対面だ。

 なら声をかけてきた方も初対面で馴れ馴れしい奴となるところだが、記憶に引っ掛かる者がいた。


「お!

 覚えていたか。」


 わたしが思い当たった素振りを見せると、声をかけてきた雄は以外だったらしく、どことなく嬉しそうにする。


「まぁ…、ところで何でここにいるにゃ?」


 声をかけてきた雄の名はベック。

 士官学校時代の同期の内の一人だった。

 卒業時は59名であったピコの同期だが、入学時は65名であったのだ。

 入学したは良いものの、無情にも適性無しと判断された数名が中途退学していったのだ。

 ベックと後一名はまた異なる理由により退学しているが、おおっぴらには口に出せず言い淀み、話題を逸らす。


「ん?

 ……ああそうか、何、簡単な話さ。」


 そう言ったベックの説明によると、士官学校中退後、一般公募で軍に入隊したとのことであった。

 まあ新卒から二年を士官学校に費やした以上、退学理由も加味すると一般企業への就職は不利になるのは理解出来る。


「自慢じゃないが、士官学校の時戦闘機乗り(ファイター)の適性は

 高かっただろ?」


 確かにスノウの成績が突出していることで話題にはならなかったが、ベックの成績は一般組で唯一トップ5をキープしていた。

(因みにピコは断トツで最下位だ。)

 

「そしてその態度のせいでカプに嫌われていた筈なん

 だけどにゃ…。」


 自信があることは大いに構わないのだが、ベックのそれはいかんせん癪にさわる。

 そして我慢ならなかったのが勝ち気な性格の娘、カプ・ストライプだった。


「あ~…。

 …まぁ、そこが良いってことに気付いたっていう

 か…。」


 顔を紅くして惚気るベック。

 

(「ああ、そういう…。」)


(『わぁー(棒)。』)


 ベックの態度でマリーダとシアも察したらしい。

 つまり適性以外の要因で退学したもう一名はカプ。

 退学理由はベックもカプも同様で、士官学校の規律違反となっている。


(「平たく言うと「ヤっちまった(てへぺろ♪)」っ

 てことにゃ。」)


(『仲良き事は善き事かな。』)


 その通りである。

 シアのそれは時と場合を弁えればという注釈が付くが…。


 




???「なぁ~にぃ~!?」


いつも読んでいただきありがとうございます。


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