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閑話 前夜

次回から新章に…、出来たら良いなって。

ー 出撃前夜 444小隊格納庫 ー


 時刻は23:00。

 灯りの落ちた444小隊の格納庫に何者かが侵入する。


カツンッ…


「おわっ、と。」


 格納庫に侵入した何者かは、格納庫の床に放置された工具に躓き声を上げた。

 

「て、やべっ…!」


 すかさず物陰に身を隠し、息を潜めた格納庫への侵入者。


「………。

 フゥー…、セーフ。」


 基地の夜警は近くを巡回していなかったらしく、侵入者は足元により注意を払って再び動く。


『ピッピッピッ、ピピッ』


ガチャンッ


 侵入者は中型輸送船に積まれた“6つ”あるコンテナの一つにたどり着き、慣れた手つきで電子ロックを解除。


「へへっ…。」


 コンテナ内に姿を消して数分、コンテナから出てきた侵入者の手にはキャトラス軍が支給する端末が握られていた。


「これで今日の報告(レポート)はバッチリだ。」


 ライオネルはそう呟くと、コンテナのロックを掛け直し格納庫から脱出していった。


「………。

 はぁ…、無駄に時間を喰ったな。」


 昼もフローレンス中尉の無茶振りのせいで予定が狂い、こんな時間に作業をする羽目になった。


「恨みますよ、英雄。」


 ピコの機体(ジャンク・クラっド)の機体背部に隠れていたその者は、置いていた工具を片付けると格納庫から去っていった。


 …………………。


 …………。


 …。


「あ、お帰り。」


 部隊部屋(チームルーム)に戻ったライオネルに、クルセルは端末を操作しながら言う。


「全くライオネルは、巡回に見つかっていたら懲罰も

 のですよ?」


 クルセルと同じく端末を操作していたグラシズは一旦端末の画面から顔を上げ、チクリと一言。


「しょうが無いだろう?

 まさか出撃前でもレポート書けとか。」


 愚痴を言いながらもライオネルは、グラシズとクルセルの座るテーブルの自席に着く。

 正規兵に混ざって活動していると忘れがちになるが、ライオネル隊は未だ訓練生だ。

 訓練生は実地での研修修了後、適性を基に各地へと配属される。

 レポートは適性を調査する良い資料となるのだ。

 そんなことを“知らされていない”訓練生はレポートを面倒臭がり、適当に纏めてしまうのだ。

 …そう、ライオネルのように。


「そう言や、イカーワは?」


 集中力の続かないライオネルは、あと一つの空席を見てグラシズとクルセルに問う。

 

「ライオネルが出ていった後でトイレに行くと出てい

 きましたが、…確かに遅いような?」


 イカーワの行方はグラシズが知っていたようで答えたが、グラシズは自身の回答に首をかしげる。

 部隊部屋はシングルベッドが辛うじて入る個室が4部屋に、今ライオネルらがいるテーブルスペースで構成されており、トイレは別の場所にあった。(それでも個室があるだけ恵まれているのだが。)

 

「へぇ…、う○こでもしてんだろ。」

 

「ちょっと!!」


 ライオネルの直接的な言葉に、クルセルが抗議の声を出す。


「んだよ?

 時間がかかってるって言うならそうだろうよ?」


「今のはライオネルが悪いですよ。」


 少し不機嫌に言い返すライオネルだが、グラシズがきっぱりと断言した。


「………。」


「………。」


 睨むライオネルに対し、無表情で見返すグラシズ。

 部隊部屋が一触即発の空気に包まれた。


ガチャ


「すみません、今戻りました。」


 しかし(ライオネルの)手が出る前にイカーワが戻る。


「「「………。」」」


「え、…え何?

 僕何かしちゃいました?」


 ライオネル、グラシズ、クルセルの三名に無言で見られ、イカーワは訳が分からず落ち着かない様子となる。


「………。」


チラッ


 グラシズとクルセルが、一瞬視線を合わせる。


「………。」

「………。」


チラッチラッ


 グラシズとクルセルは「お前が説明しろ」と、視線でライオネルに圧をかけた。


「…はぁ、へいへい俺が悪かった。

 今後は気をつける、でいいだろ?」


 元々その出自から控え気味なイカーワに「お前のトイレが遅いから揉めた」とは言えず、ライオネルが謝ることで事態は収集したのであった。


 


 
















ー ノーサイド外縁宙域 ー


 訓練生らがレポートの作成に苦心しているとほぼ同時期、ノーサイド外縁宙域の某所。

 宇宙の闇に紛れるように航行していた輸送船が野盗(スカベンジャー)の制圧下に置かれていた。


「…これで全部か?」


 野盗の頭目は自身の前に積まれた荷を見て、軍時代からの副官に問う。


「どうやら密輸業者(ブローカー)の船みたいだな。」

ガパンッ


 自らの問いへの応答を聞いていたのかどうか。

 副官が辛うじて話し終えたタイミングで、頭目は荷の蓋を開ける。

 両手で抱えるのに丁度良い大きさの箱の中には、錠剤や粉末が隙間無く詰められていた。


「ちっ…、麻薬(ヤク)か。」


 荷の全てがそう(麻薬)だとして、末端価格にして軽く億に届く価値があろうにもかかわらず、頭目はむしろ不快を示す。

 尤も麻薬に対し不快を示すようならそもそも盗賊行為などしておらず、単純に換金の手段が無いことに頭目は苛立っているのだ。

 また、これで「残念…。」とならないのが頭目だった。


「全員の所持品を調べるぞ。

 …オラッ、抵抗するんじゃねぇ!」


 積み荷がハズレだった鬱憤を僅かでも晴らすべく、価値のある物を根刮ぎ奪うようだ。


「…おっ!

 良さげなモン持ってんじゃねぇか。」


 頭目はある船員が懐に入れていた、いかにもな細長い金属ケースを取り上げた。


「返してくれっ、それはお前らには必要ない物だ!」


 船の制圧時でさえ大人しくしていたその船員の思わぬ抵抗。


「ああ゛っ!?

 抵抗しやがったな!」


パンッパンッパンッ!


 その船員の行動は元々不機嫌であった頭目の堪忍袋の緒を容易に切り、激昂した頭目に至近距離から撃たれるという結果を招いた。


「死ね、屑が。

 …さてと中身は何だ?」


 倒れ伏す船員に吐き捨て、頭目はケースを開く。


「これは…、宇宙咳のワクチン?

 要らねぇな。」


パリンッ…


 投げ捨てらた注射器の儚く割れる音が、凶行に静まりかえった船内に嫌に響いた。

宇宙咳は結核的なイメージの(架空の)病です。

キャトラス民は一歳までにワクチンの接種が義務付けられていたりします。(←唐突に裏設定)

つまりキャトラス軍脱走兵の頭目達には無用なんですけどね…?



いつも読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いします。


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