20 キメラの来歴
前回のあらすじ
ピコ「基礎は大事だよ。」
クルセル「おま言う?」
その他「っ!?」
余談であるが、数年前の教本と現在使用されている最新版の教本では内容が大きく異なっている。
異なるとは言っても変更箇所はほぼ無いに等しく、新たな内容が従来の教本の3割分程追加されたのだ。
ご存知の通り、キメラ等が直接的な戦力として運用されるようになったからである。
元々作業用スペースポッド自体は、宇宙開発時代の初期には既に開発・運用されていた。(当然ながら現行機との性能差は比べるまでも無いが。)
宇宙戦闘機より遥かに長く運用されているスペースポッドが、何故最近になるまで戦闘用機とならなかったのか?
この質問の答えは単純に「思い付かなかったから」である。
馬鹿な話だと思われるだろうが、数十年ではすまない長きに渡り作業用機として運用されているスペースポッドを誰も兵器として見なさなかったのだ。
宇宙開発時に外敵が存在したのであればまた違った可能性もあるが、後に宇宙戦闘機の開発が開始されているので“無い”と言っても良いだろう。
平和主義者のわたしとしては、技術は平和的に利用するべきだと考えているので、そのことに不満は無い。
(「自称平和主義者が何か言ってるにゃ。」)
勘違いしているようだが、平和主義者=非暴力主義者では無いのだ。
決して。
(『…うん、私達が暴力を使わなくても相手がそれに
応えてくれる保証は無いから…。』)
力無き正義は悪、弱肉強食はわたしたちが知恵を獲得するより遥かに太古の時代からの絶対的な法則であるのだ。
わたしたちが生きていくだけであれば他のルールは枷でしかないのかも知れない。
(「………。」)
(『………。』)
話がまた逸れてしまった。
余談と言いつつ長々と語ったが、クルセルが言っているのは「兵器利用を想定されていない機体を武装して戦闘を行う」といった行為が基礎戦術から逸脱しているとのことだろう。
(「多分、と言うか確実に他にもあるにゃ。」)
(『私達とかね。』)
マルやシアの存在は関係のある上層部までにしか通達されていない筈なのでノーカンである。
(「尚「“とか”」。」)
シャーラップ!
「クルセル、さすがにそれは俺でも失礼だって分かるぞ?」
「無礼講は無礼をしても良いという意味では無いですよ。」
「僕も謝った方が良いと思います…。」
黙りこくったわたしに何やら勘違いしたのか、ライオネル隊の面々がクルセルに募る。
「えぇ…?、だって…。」
チームメンバーの圧に引き気味のクルセルが、言葉を尻すぼみにさせながらこちらに視線を送る。
(『クルセル が 助けて欲しそう に こちら
を 見ている .』)
(「そりゃ「話せ」って言われて話したらこうだから
にゃ。」)
確かに誤解を与えるような態度を取ってしまったので、さっさとクルセルのフォローするとしよう。
「まあまあ、それは後にするにゃ。
クルセルが言ったことを皆も思わなかったわけじゃ
ないにゃ?」
「想定用途外の使用をして敵を撃退した」という点で見た場合、クルセルの疑問は至極真っ当なものである。
そうわたしが取り成すと、クルセルに募っていたライオネル隊の面々は気まずそうに引き下がった。
(「しれっと「それは後」って…。」)
……一先ずそれは置いといて、だ。
「…正直に言うとクルセルさんに同意出来ます。」
上官の質問に対し沈黙することが、その生真面目さ故に出来なかったグラシズが重い口を開いて肯定する。
「それは、まあ。」
「はい…。」
グラシズが肯定したことで、ライオネルとイカ-ワも同意を示す。
「姉御がそう言うってこたぁ、ルーキー共の見解が違
ってるんだろ?」
相変わらず妙なところで鋭さを発揮するトリアンダである。
「えぇっ!?」
「そうなんすか?」
モウブとザッコは訓練生らと同じ考えであったことも、ついでに露見した。
「別にわたしは敢えて定石を無視しているわけではな
いにゃ。」
そもそも、わたしは戦わずに済むのであれば戦闘は回避したいと思っているし、戦闘になったとしても態々奇策を練ることが出来る程に戦術には精通していない。
「しかしキメラ型が運用されるようになったきっかけ
は…」
グラシズが思わずといったように、発言の途中で口を閉ざす。
「軍の公式発表は間違いでは無いけど、正確とも言え
ないのにゃ。」
訓練生らがこうも誤解してしまっている原因は、十中八九軍の宣伝だ。
元作業用機であるスペースポッドの兵器運用開始にあたって「十分に戦闘に堪えうる」というアピールのため、若干誇張された襲撃事件の再現映像が頻繁に放映されたのだ。
因みにプロパガンダの内容は「卑劣なスカベンジャーによってピンチに陥った護衛部隊を、居合わせた勇気ある兵士がポッドで助太刀に入り、力を合わせ見事撃退した」といったものであった。
状況自体は間違っていないが、戦闘介入のタイミングや戦闘の立ち回りが戦闘機部隊に配慮されたものとなっている。
「知られざる歴史の裏側、ということでしょうか…。」
プロパガンダとわたしの語る真実を聞き、グラシズが何やら大袈裟なコメントをした。
「だからアニキも機体を乗り換えたのか?」
ライオネルが思案しているが、シンはそこまで考えていないと思う。
「これって僕たちが知って良いことなんですか?」
イカ-ワは機密が気になったようだが、この話は大っぴらに言えないだけで機密などでは無い。(…筈。)
「む~…、納得したけど納得出来ない。」
クルセルはわたしが言ったことには納得したようだが、今度は上層部のやり方が気に入らないようだ。
「市民を徒に不安にさせるわけにはいかないにゃ。
それにわたしは功績とか気にならないしにゃ。」
当時守護の要であった戦闘機部隊が野盗相手に手も足も出なかった、などと発表されたら市民の混乱は必至だっただろう。
「正しいことが最善とは限らないにゃ。
視野を広く持つこともまた大事にゃ。」
教えられることに矛盾が生じてしまうこともあるだろう。
それはまたケースバイケース、時と場合によるというやつである。
「分かりました。
…じゃあ、あの件についてはどうなんですか?」
訓練生らを納得させるも束の間、模擬戦闘の反省会であるにも関わらず、わたしたちが関わってきた歴史的な会戦について語る羽目になったのであった。
話がなかなか進まぬ…。
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