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19 振り返り

 記録の再生が完了した後は、小休止を挟んでからのディベートだ。

 このディベートでは、チームに関係なく気付いたことを正誤問わず発言して貰っている。

 こうすることで連帯感と多角的な視野を養うのだ。


「最初の奇襲で撃墜(無し)は良くなかったな。」


「まあ、主目的は敵部隊の分断でしたからね。

 あと、奇襲ではなく急襲では?」


 ライオネルが真っ先に発言し、グラシズが補足的に続く。

 

「似たようなモンだろうに…。」


「報告は正確に、です。」


 グラシズの指摘にぼやくライオネルだが、当のグラシズは正論で切り捨てた。

 他所(ドギヘルス)でどうかは知らないが、キャトラス軍では、


・奇襲→部隊が秘匿状態からの襲撃

 

・急襲→部隊の存在が露見している状態においての不

    意を突く襲撃


 というように“一応”区別されている。

 何故“一応”とつくかと言えば、探知手段(レーダー)が発達した現代戦では部隊の秘匿は基本的に不可能であるからだ。

 つまり現代戦では“奇襲”自体が発生しにくく、結果「不意を突いた襲撃」に一纏めにされているのだ。

 それはそれとして反省会(ディベート)である。


「う~ん、それだと初撃(コンタクト)は失敗かなぁ。」


「でも教導隊長と教導官の分断には成功しました

 よ?」


 グラシズの補足を受け、クルセルは失敗、イカ-ワは成功という真逆の評価を下す。

 台詞と様子から推測するに、ライオネルは成功、グラシズは…失敗という意見に思える。


「中尉はどう思いましたか?」


 クルセルも自分たち(ライオネル隊)の意見が割れたと感じたのか、わたしに意見を求める。

 

「負け惜しみに聞こえるかも知れねぇが、グラシズの

 いう通りなら失敗だな。」


 そしてわたしが答える前に、トリアンダがわたしの意見を代弁した。


「譲って半々ってトコすかね?」


「その後のフォローは巧かったと思うがな。」


 ザッコ&モウブも意見を出し、444小隊(わたしたち)の意見は概ね一致する。


「分断という点のみで言うなら失敗、タイミングが早

 すぎたにゃ。」


 そう。

 分断を目的としたのであれば、隊長機(わたし)がデブリ地帯を出てすぐではなく、部隊がデブリ地帯を抜けた直後に仕掛けるべきであった。

 そうすることで部隊の真横を襲撃することとなり主目的である分断、敵部隊に損害を与えるという副次作用も期待出来た。

 今回だと分断したとは言えず(精々が隊形を乱した程度だ)、デブリ地帯に後退した敵部隊を攻めあぐねるという状況を生んだ。

 モウブが被弾して均衡が傾いたのも機体性能差によるものが大きく、仮にモウブの被弾が後数分遅ければ、敗北していたのはライオネル隊の方だっただろう。


「だから基本に忠実であるべきだと…」

 

「分かった、悪かったって。」


「本当に反省しているのですか?

 だいたいリーダーはいつも…」


 どうやら隊長(ライオネル)副隊長(グラシズ)で襲撃のタイミングで意見が割れていたらしい。

 ライオネルへの説教を一旦止め、グラシズに作戦の詳細を説明させる。


「済みませんでした。

 …まず我々(ライオネル隊)は、機体性能差(レーダー範囲)の優位を活用した急襲と

 いう作戦を採用しました。」


 戦闘において、自らの優位(アドバンテージ)を活かすことは当たり前だ。


「急襲するにあたり幾つかのパターンが立案されまし

 たが、我々の優位点を最大限活用可能である『敵部

 隊側面からの分断』を主目的とした急襲を主軸に作

 戦を纏めました。」


 正面からは当然急襲にならないし、後方からの急襲も反撃のリスクは低いが効果も低くなる。

 若干言い回しに引っ掛かるものがあるが、つまりそういうことなのだろう。


「…お察しの通り、この急襲には『初撃で敵部隊に被

 害を与える』という副次的な目的が織り込まれてい

 ました。」


 グラシズは明言していないが、この「敵部隊の被害」は最大戦力(わたし)排除(撃墜)があたるのだろう。


「分かったと思うけど、一つの行動に複数の成果を求

 めるのは危険にゃ。

 このことをよく覚えておくにゃ。」


 彼ら(訓練生)が軍学校で学ぶ基礎戦術(セオリー)は、永きに渡る実戦で培われてきた最新のものである。

 態々セオリーから外れなくとも、成果は保証されていると言っても間違いでは無い。

 

「了解。」

「はい、肝に銘じます。」

「分かりました。」


 グラシズは元より、イカ-ワは素直に、ライオネルも流石に堪えたようだ。


「……。」 


 しかし意外にもクルセルは反発はせずとも、どこか納得できていないらしい。


「クルセル訓練生、この場(ディベート)での発言に是非は問わない

 にゃ。」


 関係の無いことを言われても困るが、気にかかることを言われないことの方が重大だ。

 戦場でも“勘”は馬鹿にできるものでは無い。


「あ、いや…言われていることには納得しているんで

 す。」


 名指しされ、慌てて弁明するクルセル。

 しかし納得しているとは言いながらも、頑なに言いたくないことがあることが雰囲気で分かる。


「………。」 

「………。」

「「「「「「………。」」」」」」

 

 無言で見つめ合うわたしとクルセルにつられ、無言で無駄に緊張感を漂わせるその他6名。 


「……ほぼ私情で失礼を承知の上なんですけど、」


 雰囲気に耐え兼ね、罰の悪そうな表情をしてクルセルが口を開く。


「いや、悪いとかじゃなく、ふと思ったんです。」


 本題を未だに口にせず、重ねて予防線を張るクルセル。

 ここまで焦らされると、否が応でも場の緊張感は高まる。



「フローレンス中尉が“基礎戦術(セオリー)が大事”って言うのが意外だなって。」



「「「……………。

   ………。

   …。   」」」



 ……………、………はい?









 


 

 

 




 

 

 

 


ブーメラン


いつも読んでいただきありがとうございます。


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