16 蠢くモノ
~ノーサイド外縁宙域~
キャトラス政府、ドギヘルス新政府の両政権から正式に違法認定がなされた元中立宇宙都市ノーサイド。
これに伴いノーサイド征伐を見越した正規軍による偵察が活発化していた。
『ぐっ…、脱走兵ごときに…!』
しかしノーサイドの武装組織やノーサイド外縁に巣食う無法者達の妨害により、当初の征伐計画より大幅な遅れが出ていた。
『おう、そうだとも。
だが腐っても実戦を経験しているんだな。』
そして今。
軍用ポッド「キマイラ」を隊長機として三機の「キメラ改」からなる小隊が、「キメラ改」四機と「キメラ・ワーカー」二機に構成されたスカベンジャーの襲撃を受けていた。
『貴様らなんぞにこの機体が墜とせるかっ!』
数的不利であるものの装備はこちらが圧倒的に良い。
(それに艦の支援もある…!)
偵察部隊の隊長は二機の敵機を相手しながら、戦局が自分たちに傾く瞬間を待つ。
『…ちっ、攻めきれないか。』
戦闘用に設計から見直された機体と、作業機を戦闘に耐え得る改修を施した機体では1対2であっても尚、戦力的には不足である。
ゴウッ
『っ…、待てっ!』
自身を追うことを止め撤退するような動きを見せた敵機に、これまで囮役となっていた隊長は慌てて追撃を掛けようとする。
『ふっ…、やれ。』
そんな隊長を鼻で笑ってから一言。
『っ!?』
ビシュゥッ!
一筋のレーザーが隊長機を正面から貫いた。
『隊長おぉっ!!』
『艦砲射撃っ、何処から!?』
想定外の攻撃と隊長機の撃墜に混乱する偵察部隊。
『くっ…撤退っ、退却しろ!』
副隊長が指揮を引き継ぎ、戦況が覆せないと判断し即座に退却を指示する。
『っ、了解したっ!
…おい新兵、急げ退却だっ!』
しかし指示に反応出来たのは三番機のみであった。
『おっと、手前は逃がさないぜ。』
スカベンジャーの機体4機に囲まれる、機体に白いラインが引かれた四番機。
『うわあぁっ、助けて下さいっ副長!』
助けを求める四番機のパイロットであったが、副隊長は冷静に判断を下す。
『済まない、無理だ。
だが必ず仇は取ってやる。』
彼らの任務は偵察である。
正規軍の1小隊以上の戦力を保有する集団が存在するという情報を持ち帰ることが優先される。
『副長!?
待って下さい、副長!』
『残念だったなぁ?』
『おらっ、抵抗しないでついて来い!』
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ー第17ノーサイド偵察小隊報告書ー
3025年2月10日実施の偵察任務概要
当任務において第17ノーサイド偵察小隊は、ノーサイド外縁資源惑星帯(座標は別紙参照)にて敵対的武装集団と遭遇、交戦を行った。
当方戦力 軽装駆逐艦(後方にて待機) 1
軍用ポッド「キマイラ」 1
軍用化ポッド「キメラ改型」 3
※キメラ改型内1は現場研修生が搭乗
敵方戦力 軍用化ポッド「キメラ改型」 4
「キメラ」タイプ武装ポッド 2
※尚詳細は未確認であるが、艦砲並の火力を有する
長距離攻撃手段が存在する。
この交戦により「キマイラ」「キメラ改型」をそれぞれ1喪失、戦況不利と判断し撤退。
「キマイラ」の搭乗者である同隊隊長は死亡、「キメラ改型」の搭乗者である現場研修生は生死不明。
また、喪失した二機はどちらも敵対的武装集団に接収されたものと推定される。
3025 / 2 / 12(抜粋)
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シミュレーターを使用した同機種、同数の射撃戦闘訓練を終了しての少し早い昼休憩時間。
「う~ん、むむ…。」
「どうしたんすか姐さん。
さっきから唸って。」
今朝基地付きの事務官から手渡された資料を読んでいるとトリアンダに声を掛けられる。
「ん~…。
偵察隊が野盗に手酷くやられたらしくてにゃ。」
4機編成の小隊の内2機を喪失となると、戦略上の全滅である。
数の上では2対3の戦力比となるが、装備や機体状況次第では過剰とも言える戦力差があった筈だ。
すっ…
特に機密等と告げられていなかったので資料の項を開いたまま端末を差し出す。
「ん、良いのか?
…………。」
反射的に端末を受け取ったトリアンダが躊躇を見せるが、視線に許可の意思をのせると資料に視線を落として読み込み始める。
「……ああ、これは気の毒としか…。」
言葉通りの表情で端末を返すトリアンダに違和を覚える。
「何がにゃ?」
資料に“気の毒”と判断可能な文言があったかと資料を読み返すも、非常に簡素な内容しか書かれていない。
「何って、偵察だと思っていたら1.5倍の数の敵性
集団に遭遇ですぜ?」
「可能かどうかは兎も角、自分だったら即逃げします」と続けたトリアンダに、自分との認識の齟齬が発覚した。
(「普通は武器に余程の差がない限り数には勝てんの
にゃ。」)
呆れたように告げるマルに、自分の認識が極少数派であることを自覚させられた。
(『…可哀想に、感覚が麻痺しちゃって…。
でも大丈夫、私たちがついてるわ!』)
8割方あんたらのせいじゃあぁー!!!
(「…そこで10割にならないあたり、自覚アリにゃ。」)
この時わたしは見落としていた。
自身と他の大多数の認識の齟齬以前、もっと言えば渡された資料の内容以前の不可解な点を。
何故その資料が直属の上司を飛び越えて直接わたしに渡ったのかを。
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