15 新兵と新兵器
ライオネル隊がわたしの下に就いた翌日からの数日は、実機での機動訓練を行った。
既に補給物資の搬入作業を通して実機の操作感が分かったとはいえ、基地内と宇宙空間ではまた異なった挙動となる。
実際クルセル訓練生は
「宇宙空間での挙動ってシミュレーターに近い挙動に
なるんですね。」
と真剣な表情で話していた。
それを聞いたわたしの内心としては「そりゃあそうでしょうね。」以外の感想が浮かばなかったのは説明するまでもないだろう。
『ピッ』
回想が一段落したとき、丁度良く通信が入る。
『総監督官、ライオネル隊全機準備完了しました。』
ライオネル訓練生からの報告だ。
「了解したにゃ。
ライオネル隊は編隊を維持しながら所定のコースをターゲットに射撃しつつ前進。
444小隊は各担当機を監督、トラブルに備え随行するにゃ。」
『『『『了解!』』』』
わたしの指示にトリアンダら直属の部下3名と、ライオネル隊リーダーのライオネル訓練生が了承の返信をする。
『ライオネル隊各機、初の実機射撃訓練だ。
シミュレーター通りにやれば問題ない、行くぞ!』
『『『了解!』』』
ゴォッ、ゴォゴォゴォッ
ライオネル訓練生の指示で、ライオネル機を先頭にグラシズ機クルセル機が並んで続き、イカーワ機を殿としたオーソドックスな菱形隊形でライオネル隊が前進を開始した。
『444小隊、ライオネル隊の周囲に散開、各担当機を優先にトラブルに備えるにゃ。
射線には入るなよにゃ。』
『『『了解!』』』
ゴォッ、ゴォゴォゴォッ
先頭はわたし、続いてザッコ&モウブ、最後尾にトリアンダの、ライオネル隊を囲むような菱形に展開。
タタタッ
タタタッタタタッ
タタタッ
コース上に配置されたターゲット毎に時間差で三回、各機一回の三点射。
合計12発のパルス弾がターゲットに浴びせられるが、全弾が命中することはなかった。
しかし彼らは新型を与えられるエリートの一部隊だ。
初の実機射撃にもかかわらず、平均で10発の命中という高精度の射撃技術を見せたのだった。
~キャトラス軍兵器開発研究所~
惑星キャトラス某所。
公的には軍の兵器試射場が存在するとされる(実際に存在し使用されている)場所。
その地下深く。
キャトラスにおける最先端軍事技術が集められた兵器開発研究所が極秘に存在していた。
『ピピピピッ』
その施設に新しく設営されたスーパーコンピューターのモニターが、データの受信を知らせる電子音を鳴らす。
「第一次稼働データ全ての受信が完了しました。」
研究員が確認したモニター画面には、先行してDeUSを搭載した新型ポッド500機分の稼働データが並ぶ。
「ふむ、受信感度は良好か。
もう少しベースとなるデータが欲しいが…、問題無
かろう。
試験を次の段階に移す、DeUSを始動させろ。」
「了解、DeUS始動します。」
フイィィン…
プロジェクト主任の指示にまた別の研究員が端末を操作すると、スーパーコンピューターが設置された部屋の冷却用ファンが回転を開始する。
パパパパパッ
DeUSの始動と共に、モニターに並んだ500のデータが自動的に統廃合され倍以上に細分化される。
〔ACTIVATE〕
モニターに緑地に白のブロック体でそう表記され、DeUSの自立した稼働が継続される。
これにより外部端末からの操作は、3本のセキュリティキーと50文字からなるパスワードを必要とする[停止]の操作以外を受け付けなくなった。
「ベースAI、生成に異常無し。」
「コンピュータールームの維持システムの隔離完了。」
「DeUS稼働第二段階完了しました。」
現時点を以て、後にキャトラス軍機操作系の基幹となるAIが完成したのであった。
「これよりDeUSは継続稼働段階となる。
我々が手を掛けることは僅かだが、だからこそ些細
な異常を見逃さないようにしろ。
このプロジェクトにはキャトラスの未来が懸かって
いるのだからな。」
DeUSが稼働を開始した頃。
同研究所の異なるプロジェクトに携わるチームは、思ったように計画が進行していなかった。
「外側を装甲板で補強したらどうだ?」
「無理だ。
固定ボルトを取り付ける時点で割れる。」
このチームが手掛けているプロジェクトは四足型機動兵器、通称「クアドフレーム」の最適化である。
実験機は既に組上がり機動試験を完了していたが、プロジェクトの主旨となる機能の最適化を確認する為の比較試験に難航している。
「…仕方ない。
B型は以前計測した稼働データとA型とS型の稼働デ
ータの中間値の平均をサンプルデータとする。」
このプロジェクトの主任は次善の策として、測定方法が異なるものの実測されたデータを他の2タイプの計測値で補完することを指示する。
「主任、本部よりB型サンプルの移動指示です。」
「…B型だけか?」
「はい、そのようです。」
本部からの指示を受けた主任の部下も不可解に感じたのだろう。
しかしはっきりと答える部下の様子から間違いはないと主任は判断した。
「分かった、移送の準備をさせる。
…ところで移送先は?」
「不明です。
宇宙に送るとしか…。」
A型やS型であれば研究に協力して貰っている手前、別の任務が入ることは織り込み済みである。
しかし指定されたのはパイロット不在の、前大戦終結戦後に石化してしまった機獣である。
稼働させようにも自重で崩壊してしまう機体を前線に送ってどうするというのか。
彼らはどう考えても結論には至らず、粛々と移送の準備を行ったのであった。
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