13 機体格差
パイロット同士の紹介が完了したので、第444小隊の格納庫へと移動する。
「あ、そう言えばフローレンス中尉ってフローレンス
中佐ですよね?」
移動の途中、クルセル訓練生がわたしに問いかけてきた。
「……、?」
しかし質問の意図が分からず首をかしげる。
「何言ってんだカティア。
中尉は中尉だろ?」
わたしの代わりのように応えたのはライオネル訓練生。
クルセル訓練生の質問が、中尉=中佐と勘違いしていると捉えたようだ。
「リーダー、カティアの質問は「フローレンス中尉が
終戦の英雄と同一なのか?」ということだと思いま
す。」
「うん、そうそれ!」
グラシズ訓練生の補足に、激しく同意を示すクルセル訓練生。
「ああ、そういうことなら…。
わたしがそう言われているらしいのは聞いたにゃ。」
(「うわ、面倒臭い返し方にゃ。」)
回りくどくなっても仕方ないだろう。
わたしとしてはそんなつもりはないわけで、素直に認めてもこれから兵士となる訓練生らには嫌味臭くならないだろうか?
(『あ~…、確かに調子良く見えるかも。』)
分かりやすく例えるなら、部隊に入ってきた新兵に部隊の功績を自慢する先輩といったところだ。
(「う~ん、若干違う気がするけどそれでいいにゃ。」)
マルも納得したわけで、事実は肯定しつつわたし自身はそう思っていないことがそれとなく伝わっただろうか。
「やった!
ね、私たち運がいいでしょ?」
「そりゃそうだろうけど…。
…だったら俺はシンのアニキのトコに行きたかった
ぜ。」
彼らの中で意見が割れていたりしたのか、わたしたちには分からない話で盛り上がる訓練生の二名。
「…ぁ、ぁの」
「皆さん、私語を慎んで下さい。」
そろそろ注意しようと思ったところで、グラシズ訓練生が注意を呼び掛けた。
(ふむ、良いチームにゃ。)
リーダーシップをとるライオネル、手綱役のグラシズ、ムードメーカーのクルセル。
イカーワ訓練生についてはまだわかっていないが、性格から察するに細かいところによく気が付くのだろう。
チームの特徴的には、勢いで押すことを強みとして基本的な戦術的行動も取れる前衛寄りの万能型といったところか。
(「足りないのは“経験”だけってにゃ?」)
その経験を期待されての実地研修なのだろう。
願わくはその期待通りに次代のエース部隊に成長して欲しいものだ。
…………。
…。
それからさほど間もなく格納庫へとたどり着く。
昨日の物資搬入のついでで行われた資材の整理で、第444小隊に割り当てされたスペースは倍ほどの広さとなっていた。
しかし広くなったスペースには白いライン…通称「白帯」が引かれた真新しい4機のポッドが鎮座していた。
「へぇ、良い機体に乗せて貰ってんな。」
機体を見たトリアンダが少々嫌みに言う。
しかし訓練生らの反応は複雑そうに苦笑いするだけに留まる。
機体の不足により中身作業機が第一線で使い回されている現状で、明らかに新造された機体を宛がわれた彼らも心苦しく感じているようだ。
「「コンバット・キメラ」、通称は「改型」。
設計はワーカーと同様。
構造材から軍用合金が使われていることを始めに、
各部品も軍規格の高級品。
機内配線の最適化で空いたスペースを活用して、ス
ラスターが変更されてる。
…全く、俺らが扱える範疇ギリギリだよ。」
我々が指導を請け負ったということで、彼らの機体整備も請け負う事となったらしい整備班長がボンド整備員を連れて出てきた。
「整備班長のギアル・ラスティだ。
この隊の機体整備をしている奴らは軍のメカニック
じゃねえが、腕は隊長さんらが保証してくれるさ。」
実は一般の整備工場からの出向であった、ラスティ整備班長以下第444小隊整備班。
慣れない軍用機の整備も(可能な限り)完璧にこなしてくれる職人達だ。
「ほれ、お前さんも自己紹介しておけ。」
整備班長がボンド整備員を小突いて前に出す。
「ぅわっとイーサン・ボンドです。
専技整備科の卒研で見習いやってます。」
「おっ奇遇だな、仲良くしような!」
「はい、よろしくお願いします。」
分野は異なるが同じ研修生だ。
ライオネル訓練生が研修班を代表してボンド整備員と握手を交わしていた。
(『案外、将来同じ部隊になったりしたりね?』)
縁というのは馬鹿にならない。
一度繋がった縁は生きてさえいれば、いつかきっとまた繋がるだろう。
「444小隊の皆さんはどういった機体を?」
ピシッ…!
ほのぼのと研修生らの未来での再会を想像していると、グラシズ訓練生の言葉に444小隊パイロット組が凍りついた。
いつかは必ず知られることとはいえ、新造された機体しか知らない訓練生らに444小隊の機体を見せるのは躊躇われる。
「ん?
…ああ、こっちにあるぞ。」
わたしたちの躊躇いを他所に、整備班長は訓練生らを先導する。
「何だよコレは!?」
「ワーカータイプが2機に…、改造機ですか?」
「こんな機体まで使ってるの…?」
「………。」
まあ、こういう反応になるだろう。
(「果たして「ジャンクラ」は機体にカウントされて
いるのかにゃ?」)
機体の並びは横並びで、端からワーカー2機にジャンクラ、キューブの順だ。
ジャンクラの外見がいくらポッドから逸脱していても、流石に機体として認識せざるを得ないだろう。
「うぅん?
機体の数が足りなくないか?」
「こんなに機体不足が深刻なんですか?
いえでも…部隊編成の最低数が…。」
いち早く衝撃から立ち直ったライオネル訓練生が機体の数を指摘し、グラシズ訓練生は何やら考え込み始める。
(「「機体として認識せざるを得ないだろう。」
…プフッw」)
どうやらわたしは444の機体に慣れて感覚の剥離を起こしているらしい。
それはそれとして、マルは後でシバク。
ワーカーは元が作業機なので、作業に合わせたオプションツールが使用可能。
マルチコネクトは規格の異なるメーカーのツールでも使用可能となる構造だが、代わりに内部配線が複雑になり生産性と整備性が悪くなるデメリットがある。
という説明が本文に入らんかったです。
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