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閑話 鍵

ゲリラ更新(予約)です。

~???~


 ピコが減給に嘆いている頃。


「部長、最優先観察対象の定期報告です。」


「ご苦労。

 …………………………ふむ。」


 報告に軽く目を通し終えた雄に、部下が補足する。


「それと金獅子と天虎、森王の師と右腕が動いてい

 るようです。」


 キャトラスにおいて旧くから特別とされる家門の動向は常に注意されてきた。

 そうなると彼らもそれを把握し隠蔽が巧くなる。

 暴く側と隠す側。

 両者は永い刻をかけた研鑽により、力量の完全な均等を招いていた。

 この均等は奇跡のようなバランスで保たれており、何か動きがあれば即座に露見する。


「我々が介入する案件ではない。」


 報告を受けていた雄は考える素振りも無く断じた。

 均衡が崩れたら動きが露見するのであれば、報告として上がらない情報ならば大したことではないと言える。


「狂信者と戦争屋の動きに不審ありだ。」


「!、…そちらを優先しますか?」


「いや、丁度良い案件がある。」





















~ノーサイド某廃品(ジャンク)屋~


 中立宇宙都市ノーサイド外縁宙域。

 多数の廃資源採掘小惑星があるそこを、一隻の輸送船が通過していた。


「いや~大量だったな!」


「船を借りて遠出した甲斐があったってもんだ!」


 船内で会話する彼らはノーサイドに拠を構える零細のジャンク屋。

 抱えていた在庫が一気に捌けたことで得た資金で運び屋から輸送船を借り、お宝(軍用機の残骸)が多数眠る戦場跡を漁ってきたのだ。


「でも大丈夫なんですか?

 軍に目を付けられたら…。」


 機嫌良く会話する二名に、船を操舵する青年が不安そうに言う。


「大丈夫だって、ブツ運んでんのは見られてねえ。」


「そうそう、ただの不審船を追いかけ回す程兵隊さ

 んらも暇じゃないさ。」


 青年の言葉で不安を煽られた雄二名は、不安を吹き飛ばすように大げさに笑った。

 彼らは警備隊に鉢合わせる事態を寸でで回避しており、青年の言葉には一定の説得力があったのだ。

 一頻り笑い、急に静まりかえる船内。


『ビー!ビー!ビー!』


 突如船内に警報が鳴り響いた。


「うわあぁぁっ!」


「何だっ、何が!?」


 パニックに陥る雄二名に、青年は冷や汗をかきながら答える。


「船に接近する機影あり…、数は4。

 統制された動きで囲んで来てます…!」


 ジャンク屋の彼らは揃って、悪魔が旗を振っているのを幻視したのであった。


 



















~元キャトラス軍脱走兵小隊~


「へっ、間抜けな船だぜ。」


 護衛も自衛の武装すらも無しに目の前を行く輸送船を見てほくそ笑む。


『隊長、配置完了です。』


 元部下で脱走仲間が、軍にいたときのように報告してくる。


「うしっ、やるか!

 …あ~、そこの輸送船に告ぐ。」


── 十数分後 ──


「隊長、こいつら大量のパーツを運んでました!」


 船倉の確認に行かせた仲間が興奮した様子で言う。

 当たりの船を一発で引けたようだ。


「ほぅ?

 お前ら、これは犯罪だ。」


 自分たちを正規軍だと勘違いしてビビる間抜け共に、笑いを隠して詰め寄る。


「お前らが運んでいたのは軍のものだ。

 積荷を押収する。

 お前ら全員運荷艇(トラック)に移れ。」


「何だって!?」


「止めてくれ、この船は借り物なんだ!

 頼む荷は全て諦めるから!」


ガンッ!


 喚く野郎にイラついて壁を思いっ切り蹴る。


「「ひぇっ!」」


 ビビる野郎共にイラついたまま話してやる。


「荷を諦めるだ?

 当たり前だろ乞食野郎が。

 このまま外に放り出しても構わないんだぜ?」


 正規軍は積荷を回収するだけだろうが、俺たちは兵士じゃない。


「分かりました、慈悲に感謝します!」


 若いのが叫ぶように言い、喚いたり青醒めたりと忙しい奴らを引っ張って行く。

 それからすぐに空荷のトラックが出ていき、積荷は船ごと俺たちのものになった。


「ギャハハハッ、見たか?」


「ああ、笑いが止まんねぇハハッ!」


 あっさり手に入った潤沢な物資に、これまで感じていた不安から解放された気分になった。

 この日俺たちは法を捨て去り、廃坑に代わる家を得た。





















~ノーサイド ゴルド地区~


 非認可宇宙都市ノーサイド。

 キャトラス対ドギヘルスの惑星間戦争、通称「三百年戦争」時に戦渦を厭った者達が造り上げた植民都市である。

 戦時中は中立を掲げ、表向きはキャトラス、ドギヘルス両陣営からも干渉を受けずに存在していた。

 しかし終戦により存在意義が消失。

 脱走兵の潜伏や兵器の闇マーケットの存在から、潜在的脅威と認定された。

 そんな独自のルールの下、歪に纏まった都市の富豪が住む比較的治安の良い地区の高級レストラン。

 そこの奥まったVIP席で食後酒を飲む、異なる種族の雄雌。


「ディアナ、君たちと僕たちは手を取り合うべきな

 んだ。」


 白いタキシードを着た精悍な顔立ちのクーシーの雄が、ディアナと呼ばれた黒いナイトドレスを纏うケットシーの雌に訴えかける。


「私も父と同じで興味がないの。」


 無表情と言うわけでもないが、感情の覗けない表情で淡々と断りの文句を発するディアナ。


「君たちの協力があれば新たな神の招聘が確実のも

 のに出来るんだ!

 クライアントは安心出来る。

 僕たちは大金を得る。

 君たちの悲願だって叶うんだ!」


 関わる者、皆が得をする。

 それなのに何故拒否するのか?


「…ルーク、私達は神が欲しいんじゃない。

 私達は私達の神を取り戻したいの。」


「…?、……??」


 ディアナに告げられた理由がいまいち理解出来ないといった様子のクーシーの雄、ルークである。

 クライアントも元々神を取り戻すと主張していたが…。

 クライアントがあっさり方針を変更しただけに、ディアナらの執着がさっぱりなのだ。


「ご馳走さま。

 私達はもう会わない方が良いわ。」


 そう言ってディアナは席を立った。


「後悔しても遅いんだからな!」


 聞こえた素振りを見せず去るディアナを見送ったルークは、テーブルの下で密かに拳を握ったのであった。

いつも読んでいただきありがとうございます。


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