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9  散々な演習初回

演習相手のグランデ小隊は実戦経験がありません。

 トリアンダから少し間を空け、立て続けに途絶えたザッコとモウブからの通信。


「はぁ...。」


 最高速度を出して尚、通常機体の巡行速度にしかならない鈍重な機体。

 そのコックピット内で、呆れと諦めのどちらともつかない溜め息を吐く。


『ピピッピピッ!』


 レーダーに2つの反応。

 

(「どうやら彼方さんが焦れたみたいだにゃ。」)


 既にトリアンダが撃墜されてからザッコとモウブが撃墜されるまでよりも時間が経っていた。

 1対4で逆転の手が無い以上、演習を長引かせる積もりは無いのだろう。

 此方としては有り難いのだが。


(『何か問題があるの?』)


 わたしの感情を読んだシアが質問して来た。


((基地の防衛が任務なのに前に出て来て良いのかっ

 てことにゃ。))


(『敵は後ピコだけなのに?』)


(「だから、にゃ。」)


(『???』)


 マルは理解しているようだが、戦事に馴染みの無いシアはマルの言葉に混乱している。

 シアの主張としては、敵が残り一機なのだから攻勢に出ても問題無いということだろう。

 しかしそれはこれが演習であり、事前に数や装備を知っているからこそだ。


『ピピッ!』


 実戦では非正規の武装集団であっても...否、非正規であるからこそどんな手を使って来るかを警戒する必要があるのだ。


『ピピ、ピンッ!』


 それなのに、だ。

 どんな話になったのか不明だが、先に接近していた筈の二機は少し離れた場所に待機し、後から合流した一機が真正面に陣取った。


(「ド素人がにゃ。」)


バリッ!


 バルカンから電気火花(スパーク)が散る。


『ピーッ!』


 正面の反応が消え(撃墜し)てから、直ぐ様ロックオンの警告が鳴る。


(「(おせ)えにゃ。」)


 撃墜されてから行動に移るなど、待機(バックアップ)の意味が無い。

 だが味方が一機やられた以上、さすがに油断は無いのだろう。


バジッ!


 シールドに阻まれ電撃が弾ける。


『ピピッ!』


 最後の一機が合流。

 1対3かつ機動力に劣る機体ではこれ以上の撃墜は見込めない。

 しかしそれでも数分粘ってから、444小隊の初仕事は終了した。








── 演習終了後報告(デブリーフィング)にて ──


 報告と言っても、報告するべき上官のバッズ大尉は当然のように欠席(ボイコット)しているので、単なる部隊内反省会と化している。


「え~、議題は今回の演習について。

 何か言いたい事のある者は?」


『『『………。』』』


 隊のミーティングルームで席に着いた面々を見渡して言うも、誰一人として発言をしない。


「...じゃあまずはトリアンダ。

 何で単機で突出したにゃ?」


 仕方ないので指名して問題点を指摘していく方法を採る。


「え~と...、実はパニクっちまいまして。」


 トリアンダの主張としては、練習していた機体(キメラ・ワーカー)など比にならないジャンクラ(ジャンク・クラッド)の速度に驚いて機体制御を誤ったとのこと。

 シミュレーションでは劣化(出力低下)したワーカーのデータを使用していたので、廃棄品(ジャンク)とはいえ宇宙旅客機(シャトル)のブースターによる加速は想定を大幅に越えてしまったのだろう。

 しかし、だ。


「何でいきなり推力全開(フルスロット)に入れたにゃ?」


 基本全開で使用されるブースターだが、ジャンクラではメイン(唯一)の推進装置ということもあり、段階的な出力の制御を行えるようになっている。


「失礼します、姐御。

 シミュレーターではそれで慣れた速さになってい

 るんです。」


 トリアンダ(兄貴分)を擁護しようとモウブが話に加わった。


「ふうむ?」


 トリアンダら三馬鹿はキメラへの転向を拒んだ元飛行隊である。

 そこから考えると、推力の低下したポッドの全速が、戦闘機の巡行速度に値するという理屈は理解出来ないでもない。

 シミュレーターでは気付けなかったが、実機の演習でつい慣れた速度にしようとするのはよくあることのように思う。

 つまりトリアンダの突出は機体の未習熟を原因とするものであった。


「敢えて何か注意するなら「見通しが甘い」という

 ことに尽きるにゃ。

 今後はシミュレーターで機体の習熟と飛行隊のと

 きの癖の矯正を行うように。」

 

 トリアンダに甘いと言っておきながら、自身の注意も大概甘いと思う。

 但し今回に関しては無茶苦茶も良いところであったので、あまり厳しくは言いたくないのだ。


(『責任の比重ね。』)


 シアの言うように今回のトリアンダに関しては、全ての咎をトリアンダの責とするには横暴が過ぎる。


「はい次。

 ザッコ、モウブ。」


ビビクゥッ!


 トリアンダの件は状況も悪かった。

 しかしこの件に関しては非常に度し難い。

 自覚があるのか、わたしの怒りを感じたのか。

 名前を呼ぶと硬直して冷や汗を流し始めた二名。


「いやいや姐御、あれは兄貴が突出して行ったから

 ついて行こうと」

「「待て」って言ったよにゃ?

 何度も。」


 確かにザッコの言うようにトリアンダを先頭にザッコとモウブ、そしてわたしが最後に続く菱形(ダイヤ)隊形での会敵予定であった。

 しかしトリアンダが開幕早々突出して行ったことで事前の作戦は崩壊。

 次のプランを考えるため、ザッコとモウブに待機を命じたのだ。

 しかしザッコとモウブの両名揃って、再三の制止を無視。

 結果的に性能に劣る機体で戦力の逐次投入となり、実質完全(パーフェクト)試合(ゲーム)の大惨敗である。

 何故そのようなこと(隊員二名の命令無視)が起きたのか?


「結局のところ、お前ら(ザッコとモウブ)はわたしを隊長として認め

 て無いんにゃ。」


 問題だらけの第444小隊。

 「 仕方ない 」では済まされない部隊としての根本から揺るがす問題が、皮肉にも演習で明確となってのであった。





いつも読んでいただきありがとうございます。


次回更新は17日19時


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