閑話 噂の444
~基地守備隊隊長視点~
『ピッ!』
『定刻となりました。
作戦行動を開始して下さい。』
演習開始のアラームが鳴り、守備隊所属のオペレーターからも指示が入る。
「グランテ小隊、行くぞ!」
『『『イエッサー!』』』
ゴォゥッ
部下達のやる気も十分。
しかし我々は守備隊だ。
守備隊の役目は敵の撃滅ではなく、あくまで基地の守備なのだ。
つまり積極的に索敵をする必要は無く、迎撃しやすいようにある程度散開すれば良いのだ。
『グランテ2からグランテ4、所定の位置に配置完
了しました。』
オペレーターからの知らせが入るが、未だに仮想敵機は探知範囲外らしい。
(444小隊か...。)
敵機探知までの僅かな時間。
本演習の敵役の、不吉な数字の並ぶ小隊に思いを馳せる。
── 二週間前 ──
我々が駐屯し、守備する活動拠点基地に仮想敵部隊が常駐することが、基地司令より通達された。
これにより基地に、常駐する仮想敵部隊の使用する機体が搬入された。
...のだが。
「おい、あれって...。」
いつものように守備隊同士での機動訓練を終えて格納庫に降りると、先に降りていた別の小隊を率いる同僚が話掛けてきた。
「あれって...」
「ん。」
「どれだ?」と続ける前に同僚が指し示すものを見て「ああ、...あれが?」と、納得と同時に困惑した。
仮想敵部隊が常駐するということで急遽片付けられた、物置と化していた空きドック。
そこに輸送船から降ろされた三機の「キメラ・ワーカー」と...
「廃棄機体?」
丁度荷降ろしされていたモノを見て、そんな感想が口をついて出た。
「いくら機体が不足してっからってあんなボロい機
体を使う程かよ。」
少し間違えたら軍への批判になりかねないことを言う同僚。
「仕方無かろう。」
ビクッ!
突然背後から聞こえた基地司令の声に、同僚と飛び上がる。
「司令っ、自分は決して」
「気にするなとは言えんが一々問題にはせん。」
弁明しようとした同僚の言葉を遮って言うあたりに、司令も少なからず似たようなことを思ったのだろうか。
「第444小隊の設立が決定されたのはほんの一週
間前だ。
その短期間では配備する機体の調整など到底出来
んよ。」
司令の説明に、機体の新造は当然として、予備機を回すにも輸送含めて時間が無さすぎたということを理解した。
── 現在 ──
しかしその後、機体の整備を行うために基地にやってきた整備班が一般の整備工場からの引抜きであったことに驚き、数日遅れで軍学校整備士官科の候補生が実地研修の一環で整備に加わったりと、軍の内情が逼迫している状況であることを思い知らされた。
(しかし向こうの司令官も無茶をする。)
仮想敵部隊に英雄と名高いフローレンス中佐がいたことには驚いたが、他の隊員は専らの素人という噂だ。
仮に経験者であっても年単位の空白期間があれば、急な戦闘機動は大事故の元だ。
だというのにも関わらず、第444小隊の司令官であるバッズ大尉は、着任3日も経たない内に演習を承認したのだ。
(中佐の部隊は隊員それぞれも特出した能力を発揮
していたようだが...。)
私見であるが、所謂エースは単体の能力が特出したタイプと、チームの連携や能力を最大限発揮させることで成果を上げるタイプの二種に大別されると考えている。
自分が知る中佐が関わる戦果からは前者に思えるが、後者の要素も見られる。
仮に各隊員が経験者だとして、中佐の指揮能力をそれなりと仮定すると...まあ、無くはないのではないかとも思う。
『ピピッ!』
『アグレッサー2が急速で接近して来ます!』
二番機が単機で急襲だと?
「確認した。
二番機三番機迎撃しろ、十字砲火だ。
四番機は俺と周辺警戒。」
『『『イエッサー。』』』
一瞬相手の動きに虚を突かれたが、最小単位での囮作戦だと判断。
相手の二番機にこちらも二番機を当てる。
三番機も加えて数的有利も取った。
代償に残る相手三機に対して不利になってしまうが、相手の二番機は確実に取ることが出来るだろう。
『ピピピピッ!』
射程内接近警報。
「敵の射撃に警戒、っ来るぞ!」
ビビビビッ
警戒を促した直後に、敵から放たれた電撃弾。
『...はぁ?』
しかし一切の回避行動を取っていないにも関わらず、電撃弾の列は見当違いの方向に逸れる。
四番はあんまりな事態に間抜けな声を出すが...、実戦であれば真っ先に墜とされているだろう。
『敵機、視認範囲です!』
射撃の次は敵機本体が突撃して来る。
『今だ、撃て!』
ビビビビッ!
ビビビビッ!
キルゾーンに侵入した敵機に二方向から電撃弾が浴びせられた。
『アグレッサー2、撃墜しました!』
良し、敵のナンバー2を早々に撃破出来た。
(本隊は何処から来る?)
迎撃に当たった二番機三番機の合流が先か。
『敵二機、接近!』
考える間にオペレーターより報せが入る。
「何処から来る!?」
『正面だ!』
敵の位置をオペレーターに確認したが、答えたのは迎撃のため前に出ていた二番機だった。
『ピッ、ピッ!』
ここで自機のレーダーも敵影を捉えた。
が...
ビビビビッ!
ビビビビッ!
再びの十字砲火。
『アグレッサー3及びアグレッサー4、撃墜!』
撃墜判定により、レーダーから2つの光点が消失した。
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次回15日19時更新
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