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8  不足

 機体を受領して2日目。

 トリアンダ、ザッコ、モウブの三馬鹿達は、未だ「ワーカー」のシミュレーションで四苦八苦している。

 シミュレーションの内容としては、的が設置されたコースを、チェックポイントのリングを通過しながら時間内に一周するというものだ。

 的の破壊数、コースを一周する時間(タイム)それぞれの成績から操縦技能が判断される。


「射撃はこの際置いといても、せめて時間内に一周出

 来るようじゃないと…。」


 三馬鹿達各々のシミュレート映像を分析しながら独り言ちる。


「う~ん…、うん?」


 それぞれの映像を並べて見ていると、各員の機動の特徴がはっきりと現れた。

 トリアンダは的に気を取られ過ぎて進行自体が遅い。

 ザッコは進行自体は三馬鹿達の中では最も早いが、チェックポイントを超過して戻ってのロスが多い。

 モウブは進行速度と射撃にかける時間のバランスは絶妙だ。

 しかし何故か各動作のタイミングが早めで、結果的には時間を食ってしまっている。


「もしかして「改」の機動にゃ?」


 そう考えると辻褄が合うような気がする。

 トリアンダはFCSの補正と「改」の推力の慣性を利用すると…。

 ザッコは操縦データを確認すると、リング直前での機体旋回の操作が記録されている。


「これも「改」のデータで再シミュレートっと…。」


 モウブの記録にも同様の処理を行う。


「フローレンス中尉、バッズ大…指令官からの命令で

 す。」


 データの処理完了を待っていると、バッズ大尉の副官(使い走り)がやって来た。


「本日午後1時より、当基地の守備隊との演習を行う

 …とのことです。」


「何にゃて!?」


 此方の事情を無視した“命令”に、聞き返す声が大きくなる。


「本日午後1時より演習です。

 使用弾は電気制圧弾、戦力比同数で行います。

 ただ今より機体の準備を行わせて下さい。」


 電気制圧弾は暴徒などの制圧を目的として使用される、非殺傷性の電撃弾だ。

 実弾より劣るが模擬戦で使用される塗料弾より実弾に近い弾速であり、また着弾でそれなりの電流が流れるため緊張感の高い訓練を行える。

 しかし非殺傷性と言っても事故の可能性は否めず、訓練での使用は対仮想敵部隊との演習に限られている。


「…了解したにゃ。」


 昨日の時点でトリアンダ達が実機を操縦することは難しいことを報告していたが、報告を読んでいないのか読んだ上での判断か。

 どちらであれ“命令”だ。

 副官も気の毒そうにしている。


「整備班長!」


 現在時刻は午前10時を回ったところ。

 機体チェックと弾の入れ替えを急ぎで整備班に依頼した。





















『両部隊各員のスタンバイを確認。

 本演習は4対4の時間無制限。

 使用弾頭は電気弾。

 シチュエーションは「基地への襲撃」。

 勝利条件は敵部隊の全滅。

 ただ今より同部隊以外の無線を封鎖。

 予定通り13:00に演習を開始して下さい。』


 ……。

 観測者(アービター)役からの無線が途絶える。

 これより味方内の無線以外が聞こえなくなった。


『で、どうする姐御。』


 444(フォース)小隊の二番機であるトリアンダに問われる。


「出撃前に言った通りにゃ。」


 どうすると問われても複雑な機動を取れない以上、シンプルに陣形を組んで突撃くらいしか作戦と言えるものは無い。


『兄貴、姐御、心配無用でさぁ!』


『俺たちが兄貴をしっかりサポートするんで、姐御は

 後ろで構えてて下さい!』


 ザッコとモウブからの通信だ。

 機体の習熟の儘ならないままでの演習。

 機体の割り振りは「ワーカー」二機をザッコとモウブに。

 わたしは指揮官のため後方向きの「キューブカスタム」を押し付けられ、自然と「ジャンク・クラッド」はトリアンダが受け持つことになった。


「......。」


(「...不満にゃ?」)


 わたしが通信に特に返さずにいるとマルが聞いてきた。


((別に不満ってわけじゃないにゃ...。))


 不満と言えば機体の習熟が不十分であるにも関わらず、演習を行わなければならないことが不満か。

 だがそれはそれとして、だ。

 トリアンダらの言うことは教本(セオリー)通りではある。

 逆の立場からすると動きの予想が容易であるが、同数であれば逆張りはむしろ戦力の分散を招く。

 結局のところは、余程の戦力差があるか奇策を試みるない限り正面でぶつかり合うことになる。

 機体の状態や練度に差はあれど、余程の戦力差と相手側が判断することはない筈。


(「模擬戦とはいえそんな状態(上の空)で臨むとは...、慣れ

 たものにゃ。」)


 そんなことは無い。

 ...しかし気も(そぞ)ろであったことは認める。

 マルに指摘されるのも釈然としないが、今は演習に集中である。


『ピッ!』


 指定された時間を知らせる電子音。


「フォース1より各機、作戦開始にゃ。」


『『『了解!』』』


(...何にゃ、この据わりの悪さは?)


 いくつかの問題と漠然とした懸念を抱え、第444(フォース)小隊初の実機演習が開始された。

いつも読んでいただきありがとうございます。


次回は守備隊視点の閑話の予定です。

13日12時更新


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