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2  自業自得?

 アポ無しでの訪問であったが、幸いガウル中将には会って貰えるようだ。

 終戦から一年と少しが経つが、元ドギヘルス臨時政府との戦後交渉に軍の上層部もまだ忙しくしているのだが。

 これが孫娘パワーか…。


(「流石に違うにゃろ。」)


((分かって無いにゃあ。

 じゃあ、仮にシアがマルの孫娘だと想像してみる

 にゃ。))


(「…………、違うにゃろ。」)


 暫く考えていてそれはないと思うが。

 きっとマルの負け惜しみだろう。


(「なっ、違…」)


ガチャリ


 わたしの思考を読み取ったマルが、言い訳を口に出そうとしたところで、案内された応接室のドアが開く。


「待たせたな、少々立て込んでいてな。」


 そう言いながらウィング家現当主、ガウル・ウィング中将が入室して来た。


スッ…


「お久しぶりです、お祖父様。

 本日は急な話を…」


 ドアが開く直前までわたしの膝枕を堪能していたミーコが、そんなことを微塵も感じさせない整った姿勢で畏まって話し始めた。


「ああ硬くしなくて良い、外孫が遊びに来ただけだ。

 それに儂もピコに話さねばならぬことがあるので丁

 度良かった。」


 ガウル中将は浮かべた柔和な表情と砕けた話し方で、身内での話ということを暗に示した。


「分かりました、それでは。」


ころん


 そう言って再び身体を横たえ、頭をわたしの膝に乗せたミーコ。


「!?、………。」


チラッ


 このミーコの行動に目を丸くし、表情を戻してからわたしに視線を送ってくるガウル中将。


「………。」


フルフル


 事情の説明を求める視線に、しかしわたしも良く分かっていないことを、無言で首を横に振って示す。

 大変失礼であることは承知しているが、本能が「ミーコの行動に対して言葉を発するな」と強かに訴えているのだ。


「…コホンッ、っ!

 それではピコの要件から聞かせて貰おう。」


 ミーコの行動の件に関して埒が明かないと思ったのか、ガウル中将はわたしに話を促す。


(「ミーコが祖父(じい)さんを睨んだのはスルーにゃ?」)


(『雰囲気だけでもゾワッとしたわ。』)


 超常の存在すら恐れさせる威圧とは…!?

 触らぬ(ミーコ)に祟りなしである。


…………………。

…………。

…。


 そしてわたしはジャクソンの伝言を、ことの経緯を含めて話した。


「…あ奴め、漸くと思えばその程度か…。」


 伝言の内容的に、ジャクソンがガウル中将に何か動いて貰いたいようだ。

 しかしガウル中将は不満がある、と。


「…その後のゴタゴタの迷惑含めて、ということなの

 だろうな…。

 まあ良い、儂らに異存はない。」


 何やら考えていたガウル中将であったが、無事ジャクソンの伝言を受け入れて貰えたようだ。


「要件は以上だな。」


 ガウル中将がわたしに聞いてくるが、「中将の孫娘さんをどうにかして下さい。」という要件は聞き入れられることはないのだろう。


…コクリ


「……では此方の要件なのだが二点ある。」


 微妙な表情でわたしが頷くと、話を切り出し始めるガウル中将。


「まず裁判の件なのだが、取り急ぎの戦後処理のため

 に手を回し切れず済まない。」


 頭を下げるガウル中将。


「頭を上げて下さいにゃ!?

 あれは自分の意志でやったこと、ガウル中将が謝る

 ことは何一つありませんにゃ!

 むしろ此方が謝罪するべきでしたにゃ!」


 まさかの事態に言葉が怪しくなりながらも、必死に謝罪を止めさせようとする。

 むしろウィング家の孫娘(ミーコ)と交際していることで迷惑をかけた立場だ。


「…そうか。

 だがフローレンス中佐のおかげで大勢の兵を無駄に

 死なせずに済んだのは事実だ。

 己の行動に後悔することなく誇って欲しい。」


 頭を上げたガウル中将の言葉に、あの戦争で経験した心の暗い部分が少し晴れたように感じた。


「そしてもう一点なのだが…。

 復帰先の通達は読んだだろうか?」


 軍規違反を犯して軍刑務所から出所した者は原則、元の隊への復帰となる。

 しかし現状として、隊長が復帰を拒否するため、受け入れ先となる部隊が存在している。


「はいにゃ。」


 刑務所に入所するまでもない軽度の軍規違反者が放り込まれることから、一般には懲罰部隊とも認識されている仮想敵部隊(アグレッサー)

 わたしの強制軍属期間である三年を過ごす予定の部隊である。


「それに関して、本来であればフローレンス中佐はマ

 ルコシアス隊に復帰するのが筋だ。」


 マルコシアス隊の隊長はわたしなので、原則的にはそうなる。

 しかし基本、隊長が重大な軍規違反を犯している場合、隊員も何かしら犯していることがほとんどであり部隊ごと消滅となる。

 つまり隊長が自身の部隊に復帰するには、その部隊が存在することが前提であるのだ。


「…て、まさかっ!」


 自身の行動にマルコシアス隊のメンバーを巻き添えにした可能性に思い当たった。

 裁判に出頭したのが自分だけでも隊員が関係無いかを判断するのは裁判官だ。


「フローレンス中佐の懸念は杞憂だ。」


 ガウル中将の言葉に取り敢えずは平静を取り戻す。

 そして別の理由が思い浮かぶ。

 前科を持つ隊長の下に所属することを厭い、全ての隊員が転属した場合だ。


「…じゃあ、どうして…。」


 その理由を聞くことが恐ろしく、しかし聞かなければならない。


「残念ながら、現在キャトラス軍にマルコシアス隊と

 いう部隊は存在しない。」


 恐る恐る問うたわたしに、ガウル中将は非情な事実を宣告したのであった。

 


 


 

 

いつも読んでいただきありがとうございます。


次回は3日19時更新


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