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1  とんだ再会

(物理)

本作メインヒロインの登場です。

 明くる朝。

 長いようであっという間に過ぎ去った一年。

 それでも「いよいよ」と言わされる出所日である。


「世話をかけたにゃ。」


 軍刑務所の門まで見送りに出てきた所長に、軽く頭を下げ挨拶をする。


「あー…、まあ否定はしません。

 ですが結果としては、此方としても所内の治安向上

 に貢献して頂けました。」


 一瞬視線をさ迷わせるも、にこやかにそう言った所長。


(「初日からトラブルを起こしてりゃ、そりゃそうな

 るわにゃ。」)


 無関係のように言うが、あの時マルも煽っていたように記憶しているのだが?


(『確かにジャクソンとの決闘もだけど、ピコから仕

 掛けに行ったわけではないわね?』)


 武術を習う関係から、ジャクソンを名前で呼称するようになったシアがわたしを擁護する。


(『でもだからと言ってやり過ぎたのは事実ね!』)


 …無意識に上げて落とされた。


「その節は済まなかったにゃ。」


 シアの言うことも尤もなので、上げていた頭をもう一度、先ほどより深めに下げた。


「いえ、本来であれば我々が監督していなければなら

 なかったこと…。

 今後の改善に期待して下さい。」


「ははっ、もう二度と来る積もりはないけど頑張って

 欲しいにゃ。」


 謝罪合戦になっても切りがないので話の流れを変える。


「ええ、それが良いでしょう。

 わたくし共はここで、「終戦の英雄」の更なる武勲

 に期待していますよ。」


 わたしの言葉に所長は、少し態度を崩してそう返した。


「平和が一番にゃ。」


 そう、争いが無いのがわたしの望み。

 本来、「終戦の英雄」に新たな武勲はあってはならないことだ。


「それもそうですね。

 …おや、迎えが来たようですよ?」


 所長の言葉に後ろを振り返ると、黒塗りの高級車が止まり、後部から丁度誰かが降りてくるところであった。


「あっ!」


 わたしは思わず驚きの声を上げる。

 白と茶の美しい虎毛柄。

 春の日差しの暖かさを湛える、新緑色の瞳。

 楚々とした動作で降りて来たのは、この一年ずっと会いたかったわたしの恋ビトであるミーコ・マスハッターであった。


ばちり


 わたしが上げた声に反応したミーコがこちらを向き、そんな擬音を幻聴するほどに目が合う。


「ミ…」


「ピコちゃあああぁぁっ!」


 名前を呼び駆け寄ろうとしたわたしであったが、それは未然となる。

 わたしよりも早く、先ほどまでの令嬢然とした動作からは想像もつかない速度で駆け寄って来るミーコ。

 素の身体能力では到底出ることの無い速度で接近するミーコに反応出来ないわたし。

 するとどうなるか?


「ちょ、ミーコストッ…!」

「あああぁぁん!」


ドゴオォッ!


「ブフゥウゥッ!」


…ドサッ!


 わたしがその後の事態を理解し反応を始めた瞬間、「そんな抵抗は無駄」とばかりに腹部に最高のタックルを喰らっていた。


((…空、青いにゃ…ガクッ。))


(『衛生兵っ、えーせーへ~っ!』)


(「ボソッ…。」)

(茶番にゃ。)


………………………。

……………。

…。


 ミーコの行動に呆気にとられた所長を再起動させて軍刑務所から辞した。

 今はミーコの祖父であるガウル・ウィング中将へジャクソンの伝言を伝えるため、ミーコに頼みウィング家の屋敷へ向かって貰っているところである。


スリスリスリ


「はあぁ…、一年ぶりのピコちゃんだぁ♡」


 のだが、一年会えなかった反動か、ミーコの情緒が振り切れている。


グリグリグリグリ


「ピコちゃんピコちゃんピコちゃんピコちゃんピコちゃんピコちゃん…。」


 車に乗ってから20分余り、ミーコはずっとわたしの胸元に顔を(うず)めていた。

 そして徐々にミーコが顔を擦り付ける強さが上がってきており、押し付けられる頭に痛みを感じ始める。


「ミーコ、わたしも会いたかったにゃ。

 …でも危ないから少し落ち着くにゃ。」


 ミーコがわたしの胸元に顔を埋めている都合上、ミーコは座席に座っていない。

 ということはシートベルトを着用していないわけで、方便と言えどあながち間違いというわけでもない。

 

ピタッ


「……………。」


 わたしの声かけに制止し、無言となるミーコ。


「…スンスンスンスンスンスンスンスン。」


「ミーコ、何してるにゃ!?」


 漸く落ち着いたと思ったら突然息を荒くするミーコに、羞恥と困惑が入り交じる。


「スンスンスンスンスン、ス~ハ~ス~ハ~…。」


「………。」


 ミーコの不可解な行動のオンパレードに、おそらくウィング家お抱えの運転手も気まずそうだ。


「スゥ~~、ヨシ!

 取り敢えずのピコちゃん成分の補給完了にゃ!」


(「「ヨシ!」じゃねーにゃ。

 周り見ろにゃ周りを。」)


(『と言っても当事者除いたら運転手さんしかいない

 けどね。

 …あら、運転手さんを身内にカウントするなら問題

 ないのでは?』)


 大アリだよっ!!


……………………。

…………。

…。

 

 それから約30分。

 わたしはミーコの過剰気味なスキンシップを受けながら(一応ミーコはわたしの隣の座席に座っている)、わたし達を乗せた車はウィング家の屋敷へとたどり着いたのであった。

 運転手が心なしかグッタリしていたのは、わたし達(主にミーコ)のせいであるのは自意識過剰だろうか?


(『いや、無い。』)


(「反語にゃ?」)


 

[ガールズラブ]タグが機能し始めましたね。

本章から本格的に物語が展開していく予定です。


次回7月1日19時更新!


いつも読んでいただきありがとうございます。


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