14 忘却されし神威
ぼちぼち投稿再開です
「狂王」。
そう渾名されるにはジャクソンに憑依した森王の闘い方は理性的であり、また覚醒しているにしては弱過ぎた。
ピコの元同期から聞いた話から、ジャクソンと森王の同期は済んでいると勘違いしていた。
「…………。」
白目を剥き完全に沈黙したジャクソンであるが、意識の喪失により霧散する筈の圧力は未だ感じられていた。
それはつまり“何か”が健在しているということの証明であり、野次馬共もその“何か”が発する圧力を感じて固唾を飲んでいるようだ。
ズシンッ…!
「っ!」
ジャクソンから森王に変わった際の魔力膨張の正反対の、地面に押し付けるような魔力の流れに抵抗して歯を食い縛る。
「うおっ!?」
「がっ…!」
「なんっ…、体が!?」
重力が急に倍加したような現象にギャラリーのほとんどが膝をつき、辛うじて立っている者も縛り付けられたように動かない身体に困惑している。
…耐性が無いのか数名が魔力にあてられ気を失う。
(『マル!
これって…!?』)
「んむ、初期化暴走にゃ。」
私たちのような存在は、マリーダやシェツェナがそれぞれの氏族で暮らしていた頃から継承されるものであった。
普通であれば前契約者の補助の下、次期契約者に継承されるため暴走は起きない。
しかし継承する直系の血筋の断絶等により、時たまこういった事態が発生していた。
原因としては神の能力が血筋に最適化されているため、異なる血筋に最適化するために一度全能力を解放する必要があるからだ。
継承に伴って一時的に契約者という軛から放たれた神が、自らを産み出された存在意義に従い行動するわけだ。
(『どうしてここまで…。』)
元巫女であったシアにとって、召神に関する知識の継承の欠如は信じがたいものであるのだろう。
(「そりゃ、何千年と科学に頼っていればそうもなる
にゃ。」)
招かれた神々は契約が途絶えたとしても血筋に受け継がれていく。
千年単位で継承が途絶えれば、いくら直系であっても当時の傍流以上に血筋は薄まるだろう。
恐らく金獅子や閃猫も初期化暴走に類するものがあった筈である。
「GAAAAA!!」
目覚めの咆哮。
「おっと。」
ドガンッ!
いつかの再現のように、ピコの身体は修復されたばかりの壁にめり込む。
(『マルッ!!』)
思わずシアが悲鳴を上げる。
「う…、かはっ…。
……大丈夫にゃ、まだ。」
シアを落ち着かせるように、努めて単調に呟く。
(『……分かった。
何をすればいいの?』)
私の嘘とその意図を察したシアが問う。
(「とりあえず「活性」と「継続回復」を頼む
にゃ。」)
大丈夫とは言ったものの、実のところはあと二、三回もまともに入れば身体が保たなくなる程のダメージが入っている。
更に現時点で背骨に罅が入り、内臓も幾つかが機能していなかった。
ポゥ
しかしシアが発動した「活性」により、十全と言えないまでも機能が回復する。
ジワッ
そして「継続回復」により多少動いても問題ない程度まで傷が塞がり始めた。
(『「防護」は?
それに「急速回復」じゃなくて良かったの?』)
確かに「活性」に「継続回復」では万全とは言い難く、常人では生命を保つのでやっとと言ったところか。
(「いや、これでいいにゃ。」)
しかしシアの提案を断る。
身体の保護は大事だが、森王は戦士系の神。
暴走している現状、必要とあらば躊躇い無く“切り札”を切ってくるだろう。
それがどういったものかは不明であるが、その対処のために温存する魔力は多いに越したことはない。
(『……無茶しないでね?』)
いくらか逡巡した後、そう伝えてシアは引き下がる。
現時点で大分無茶をしていることは置いといて、ほぼ制限無し状態の同格相手は辛いなんてものではない。
「まぁ、無理ゲーではないだけマシかにゃ?」
森王の身体とて万全ではない。
そもそもこの暴走自体が、ジャクソンの身体が満身創痍でありながら逆転にかけた状態であるのだ。
仮にピコが止めずとも、そう時間がかからず停止するだろう。
しかしそんな詰まらない結末にするつもりはない。
理想は森王が切り札を切る前にジャクソンの身体を動けない状態にすること。
ガラッ…
「GAA!」
ダメージがある程度回復しきり目標を決めたところで、起き上がる際に崩れた瓦礫の音に反応した森王が飛び掛かってくる。
元々鍛えられた身体に戦士系の神が憑依すると、満身創痍と言えどこれ程に動けるのだ。
「なんだけど…、」
対する私はようやく起き上がったところ。
ふらつく足に力を込め、向かってくる森王を見据える。
「AAA!」
理性を棄て去り獣となった森王が選んだ攻撃は噛み付き。
開かれた顎には憑依により大きさを増した牙が存在を主張する。
もし噛み付かれてしまえば、強化した肉体でも容易く噛み千切られてしまうであろう。
…まあ、噛み付けたらの場合だが。
飛び掛かってくる森王。
目の前の敵は立っているのもやっとの様子。
「…、にゃっ!」
ゴスッ!
しかし突然目の前に置かれた拳が、森王の顔面をひしゃげさせた。
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