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12 鬼と翁

お知らせ

 次回より19時投稿になります。

~マリーダinピコ~


「よっ、と。」


 ひとまず挨拶が済んだので(ジャクソン)と向き合う。


(「シア、ピコは?」)


 共に憑いているシェツェナに、預けた宿主(ピコ)の容態を確認する。


(『衝撃で気絶してるだけみたい。』)


 それは重畳である。

 私達の知るものには、肉体だけでなく魂すら破壊する(すべ)が幾つか存在する。

 爺の扱う“闘気術”も、術の性質からして魂砕きの技の一つや二つ存在していても驚きは無い。

 まあ、失伝したか元々存在しなかったかは定かでないが、その類いの技はなさそうだ。


(『どうするの?』)


 シアの問いは、ピコの負傷と手合わせについてだろう。

 

(「せっかく骨のありそうな相手にゃ。

 軽く身体を動かしても良いにゃ?」)


 ピコの復帰は見込めない。

 しかし対外的には私はまだ立っているワケで、ここで降参しても良くない。

 それに普段は此方側が力を貸しているので、少々身体を借りてもそこまで目くじらを立てることも無いだろう。


(『でもさっき…。』)


 不安そうにシアが言っているのは、私が気絶するほどの負傷をした身体を無理に動かすのではないかというところだろう。

 爺の拳を受ける際に噛んだのであろう唇から流れた血を拭う。


(「問題ないにゃ。」)


 身体の制御を受け持ったときから気付いていたが、派手に吹っ飛んだ割に身体に残るダメージは少ない。

 おそらく拳を受ける際、無意識で[硬化(ハーディング)]あたりを発動していたのだろう。

 無意識での発動により効果は著しく低下しているが、有るのと無いのとではかなり違う。

 事実ピコはこのおかげで何度か命を拾っている。


(『もうっ…、[持続回復(リジェネイト)]』)


 しかしシア的には駄目であったらしく、身体の治癒力を僅かに高める術を行使した。

 向こう(ジャクソン)がこうした技能を持っている可能性は極端に低いため、只でさえ出力に差がある上に回復を重ねるのは対等条件(フェア)ではない。


(『マルが出ている時点で言えたことじゃないでしょ

 うに…。』)


 ……まあ、身体を借りる以上万が一があっては私たちも困るので眼を瞑ることにする。

 とりあえずは爺との手合わせに集中しなければ失礼というものだろう。


(『ホント、調子がいいんだから…。』)
















~ジャクソン視点~


「むう…。」


 腕に残る痺れに、つい口から唸り声が出る。

 自身の誤りで重篤な怪我を負わせてしまうと焦った相手は、予想に反して無事であり更に非常に重い一撃を返してきた。

 生身の格闘において、追い詰められる程動きが洗礼されていく手合いほど厄介なものは無い。


(…いや、さっき彼奴は何と言った?)


 しかし違和を覚え考えを改める。

 「第2ラウンド」、相手はそう言った。

 この手合わせにはスポーツのように区切りを設けていない。

 確かに様子見に好きに打たせてみてはいたが、攻守という点で考えたときは第3の区切りである方が正しいように思える。


「何を考えてるにゃ?」


 っ!?

 不意に聞こえた声。

 

ドンッ!


「っ!!」


 次いだ衝撃に身体が僅かに浮く。


ズザザァッ…!


「スゲェ!

 あの嬢ちゃん裏ボスを後退(ノックバック)させたぞ!」


 野次馬の驚愕する言葉が聞こえてくる。


(録に鍛練したこともない者が何を…。)


 ついそう思うも、実を言うなら儂も驚いている。

 しかし野次馬は見たままの光景に驚いているのだろうが、儂が驚いているのは歩方である。

 驕りでなく儂は武術の上級者であると言える。

 衰えたとはいえ注視していたにもかかわらず、儂の意識を掻い潜っての接近など然う然う出来る真似ではない。


「ほらっ!」


ドッ!


 またもや認識外からの一撃。


「ほらっ!」


ドンッ!


 難とか直前で防ぐも、間を置かず反対からもう一撃。


「ほらぁっ!」


ドパンッ!


 手合わせの最初と似たような連続した打撃。

 しかし内情は全く異なるもので、


ズキンッ!


「ぐぅっ…!」


 手数より威力を重視したでは済まないほど威力の増した攻撃に、柔な鍛え方をしていない腕が限界を訴えてくる。


「…まあ、現状ではこれが限界かにゃ…。」


(“現状”だと?)


 闘気術免許皆伝である儂を指し、まだ先があると仄めかすフローレンス。


(いや、彼女は本当にフローレンスか?)


 唐突に頭に浮かんだ、突飛な仮説。

 しかし一度そう思えばこの状況の辻褄を合わせることが出来るのだ。

 それは禁忌として密かに存在が伝えられる術の一つ。

 己が鍛練せずとも熟練の技を使用可能にする“召霊術”だ。

 今相対するフローレンスの中身は、さぞ武術に優れた英霊なのであろう。


「それじゃ、終わりにゃ。」


 否。

 かの者がかもし出す、どこか真剣味に欠ける雰囲気は悪鬼と言った方が正しいように思えた。


(くっ…、無念。)


 若き女子(おなご)の身体を操り暴虐を振り撒く“それ”に怒りの感情が沸くも、未熟で衰えた儂にはどうすることも出来無い。


ドフッ!


「がっ…、は…!」


 腹にめり込む悪鬼の拳。

 激しい痛みと無力感に苛まれ、儂の意識は薄れて行く。

 

 


 


 


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