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六、乳兄妹は血が繋がってない。故にくっついても問題ない

 それはリチャードも同じ様で、私の胸糞エピソードを聞くごとに、怒り心頭になっていった。


「ミシェル、よく今まで耐えたな! 偉い! 」


「そりゃ王命だし。それに、これでも腐っても貴族令嬢。与えられた役割は果たすわよ。たださぁ、それでも、これだけ頑張っても誰も褒めてくれないし、婚約者もその取り巻きのイエスマン共もアホだしさぁ……ありがとね、リチャード。褒めて、もっと! 今までの分まとめて!」


「よしよし。ミシェルは今までよくやった。偉い、偉い」


「嬉しいな~」


 子供の様にキャッキャと笑う。そう言えば、こういう風に無邪気に笑うのも、本当に久しぶりな気がする。


「本当に辛い生活だったんだな……。こんな事なら、俺がさっさと自分のものにしてしまえば良かった」


「え、どういう事?」


 するとリチャードは、私に急接近すると、そのまま私に抱き着いてきた。


「酒の力に頼って悪いけど、告白させてもらう。俺は、ミシェルが好きだ。もちろん、乳姉妹としてでは無く、女として、だ」


「え、ちょっ?!」


 突然の展開に頭が追い付かない。リチャードが私の事を好き……? え、恋愛対象として?!


「こんな時に言うのもなんだけど、こんな時しかチャンスが無い。だから言わせてもらう。ミシェル、物心ついた時から愛してる。あんなクソ婚約者とは別れられたんだ。俺と結婚してくれ!」


「え、え、え、え」


 リチャードが私を女として見ていた?!しかも物心ついた時からって……。一体、いつから片思いしてたんだ?


「見事! 不意打ちからの大胆な告白でしたね!」


「リチャード君! 今の貴方は最高に輝いてるわよ!」


「(ギリギリギリギリ)」


 ハイテンションでリチャードに声援を送る兄姉。そして、リチャードに嫉妬の視線を送って凄い顔をしているティナ。


「もしかして……全員グル?」


「ま、そういう事です。リチャード君、前々から貴女が好きだったんですよ。むしろ、貴女が今まで気づいていなかったのが、一番の衝撃なんですが」


「だから今回の婚約破棄からの帰郷に合わせて告白する様に、おぜん立てしたのよ。リチャード君、真面目だから中々首を縦に振ってくれなかったけど」


「(ギリギリギリギリ)」


 この兄姉……。そして、ティナ。その歯ぎしりを止めなさい。


「いつまでも躊躇してるので、『また、妹を悲しい目にあわせるんですか? あなたが昔さっさと告白していれば、あの子、あんな駄王子に泣かされることもなく、今頃、あなたの隣で笑っていたのに。婚約破棄された傷物令嬢の嫁ぎ先なんて限られています。今度の相手が、果たしてまともな奴の可能性、どれくらいですかね……』と、煽りまくったら、ようやく覚悟を決めてくれました」


 流石我が兄、リチャードの真面目さを逆に利用しやがった。


「……さっき、物心がついた時から。とか言ってたけど、そんなに昔から、私の事、好いてたの?」


「ああ。王子の妻になって幸せになれるならと、諦めもついたんだ。だが、今日の話を聞いて、やはり、ミシェルを幸せに出来るのは俺だけだと確信した。もう、その笑顔は俺にしか見せないでくれ。その泣き顔も俺にしか見せないで……もう他の男なんて見ないでくれよ。ミシェルを俺だけのものにしたい」


「リチャード……」


「うん」


「少し、愛が重い」


「今はアラン様の配下で仕事してるからな。当然、思想的な影響は受けるさ」


「兄上のせいか」


 人の乳兄弟をヤンデレめいた思考にしおってからに……。まあ、いい。


 しかし、占いの通り、旧知の仲のリチャードから告白された。まさに占い通りになるとは思わなかった。あの子、将来は良い占い師になりそうだ。


「……父上が許してくれないでしょ」


「その辺りは心配しないで良いですよ」


「貴女が帰ってくる前から、私達が提案はしてたからね。いくら相手がバカでモラハラパワハラ気質な駄目王子でも、王族から婚約破棄された令嬢なんて、中々新しい婚姻が決まらないと相場が決まっているわ」


「いっそ、家来衆でも有力なフリームファクシ家に嫁がせて、一門化してしまうのもありと提案したら。案外乗り気でしてね」


「根回しは済んでるって事……」


 そう言えば、新しい婚約者候補を探すとか言っていた側室様は、兄上の実母だった。多分、それとなく私の今後について、自分でどう考えているか、聞いたのだろう。


「……リチャード、お姉様が都に行った後はしばらく塞ぎ込んで、それを紛らわす様に仕事や鍛錬に打ち込んでたからね。その分、場数も踏んで、お父様達から信頼もされている。……私も、お姉様が選んだなら、反対はしない」


 嫉妬はしていたものの、ティナも最終的に反対するつもりはない様だ。さて、どう返答すべきか……。


「……良いわよ。リチャードなら変な事はしないと信じられるし」


「本当か?!」


 こくりと頷く私。そのままリチャードは私に強く抱きついてきた。その様は人懐っこい大型犬を連想させる。


「あぁ、ありがとう! 嬉しい、嬉しいなぁ! その……宴の後、予定、空いてたりしないか? ミシェルが俺のものだと、刻み込みたい」


 基本的に真面目な人ではあるが、彼は今は酔っている上に、告白が成功してハイテンションになっている。このままだと、間違いなく、一線を越えようとするだろう。貴族令嬢として、正式な結婚前にそれは色々不味い。姉上のアレは……まぁ、うん……。


「ちょっと、ストップ! ストップ! 流石に昨日の今日だし、そういうことするのは、正式な婚姻の儀の後にしたいんだけど……」


「……分かった。ミシェルの意志を尊重するよ」


 そう言うと、リチャードはあっさりと引き下がった。根本的に、真面目な堅物なのである。今日も、酒の力があったとはいえ、むしろ、よく告白まで出来たと褒めてやりたい。


「抱ーけ! 抱ーけ!」


「お姉ちゃん、早く甥っ子姪っ子の顔が見たいなぁ!」


「うるさいわよ、このヤンデレ共! こういうのは、順序が大事なの!」


 面白く無かったのか、のんきに煽り始めたヤンデレ(あにうえ)ストーカー(あねうえ)は、後でしばく事にする。


 その後も、宴は新しいカップルの誕生を祝福する声で大いに盛り上がった。


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