表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/12

最終回、アホな王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は、ちょっぴり愛が重い乳兄弟から愛される

 幸か不幸か、レイジ王子、もとい、今回のやらかしで、元王子になるであろう方は生きていた。自力でなんとか這い上がった所で、後から駆け付けた我が家の兵達に拘束された。


 彼はギャーギャーとわめいていたが、私の妹から「よくも姉様を危険な目に遭わせようとしたわね!」と言う声と共に何発か殴られたら、流石に大人しくなった。狂暴な獣を黙らせるには、結局暴力が一番という事か。とはいえ、妹が将来子供に体罰を振るうようになっても困るので、完全にレイジの心が折れた所で止めに入った。


 その後、死体の処理や論功行賞などの戦後処理が終わると、父上は都に上り、陛下を激詰めした。本来、陛下を崇敬する父上だが、一連の息子の不始末には流石に頭にきた様で、王子へ相応を処分を下さなければ、このまま辺境伯家は国境の維持の仕事を放棄し、隣国に領地ごと寝返る、とまで言ったらしい。


 私が、父上が一番愛する正室(ははうえ)の娘という事もあるだろうし、ハッタリも入っていただろうが、私の為に、そこまでしてくれた事に感謝である。


 結局、そこまで言われては、陛下も厳罰を下す他なく、レイジは廃嫡の上、離島に島流し。繰り上げで第二王子が立太子し、襲撃事件に参加し、生き残った取り巻きの令息連中も、レイジ程、遠方では無いものの、やはり流罪となった。


 レイジは、廃嫡と遠島送りを伝えられると、呆然自失状態であったという。そのまま引きずられる様に、流刑人用の馬車に乗せられて、流刑地に向かう船が出る港まで連れて行かれたという。道中では、今回の騒動を聞いた民衆から『肥溜めの王』と嘲笑されていたらしい。


 まぁ、面白過ぎるわよね。辺境伯家に雑に突撃して返り討ちにあった上に、敵前逃亡して、元婚約者に殴りたおされ、トドメにその婚約者の愛馬に蹴り飛ばされて、肥溜めにダイブとか。情報量が多すぎる。


 王子のその後だが、ケイシー様に興味本位で、占ってもらった所


「彼が満ち足りることを知り、豊かでなくとも、島での生活に幸せを感じれる様になれるなら、現地で幸福になれるでしょう。あるいは、毎日、神を敬い、祈りを捧げ、真面目に生活をするならば、都へ帰ってこれるでしょう。……どちらでも無いならば……私の口からはとても申し上げられません……」


 との事である。今後は当人の心がけ次第といった所だろう。


 さて、あの馬鹿の事は置いておいて、我々の事である。


 あの日から、何かが大きく変わったという事は無い。


 相変わらず、国境周辺の状況はきな臭いし、兄上は有能だが、義姉上を恐ろしい程に愛しているし。姉上は優しいが、義兄上にヤバい程に執着しているし。妹はシスコンだ。


 無いが、少しずつ、変化自体はある。


 まず、リチャードが、今までのプラトニックな感じとは一転。私の事を溺愛してくる様になった。やはり、私が誘拐のターゲットになった事と、義兄(予定)であり、上司でもある兄上の影響が大きいだろう。とうとう、この前、「部屋に飾るので、ミシェルの下着が欲しい」とか言い始めたし。私は義姉上と違って、自分の下着を恋人にインテリアにされて喜ぶ変人じゃないんだが……。そのうち、ガチのヤンデレになりそうで怖いな、この子。


 そんな変な事も言うようになったが、日常では、仕事が終わり、帰宅すると私に抱き着いて、そのまま、ずっと離してくれない。


 この家の後継者は、あくまで長男である兄上、と父上が明言している為、私は妙な分断が起こらない様に、乳母夫婦兼、今後の義父母の家で生活している。そのせいで、かえってタガが外れてしまっている感もある。同棲している様なもんだし。


「ミシェル……可愛い、可愛い」


「……そればっかりね。私は、割と凶暴な女よ?」


「それが良いんだ」


 今晩も、私を膝の上で優しく抱きながら、愛の言葉を囁いてくれる。


「毎日言われると、そろそろ次のステップにも進みたくなってくるわ」


「何をして欲しいんだ?」


「そうねぇ……そろそろ、自分からキス位して欲しいわね」


「キ、キス!?」


「そう。あの襲撃騒動の時には、私からしたじゃない。あなたからもしないと不公平よ」


「う、うーん、分かる様な、分からない様な……」


「ともかく、甘い言葉をかけながら、キスしてよ。……そういうの、憧れるからさ。ヘタレて、頬になんて嫌よ?」


 瞳を見て、私はリチャードにキスをねだった。


「……」


 リチャードは、頬を染めつつも、まんざらでも無さそうだ。


「ミシェル、愛してる。もう、絶対に離さない。絶対に。ミシェルは俺のものだ。生まれた時から隣りにいる、俺だけのものだ。もう、他人にやるものか」


 そう言うとリチャードは、唇に唇を重ねた。ちょっぴり重いが、これはこれで悪い気はしない。


「ありがとう。もう、あなたの隣りから、一生離れないわ」


 私の返事に、彼は満足げに笑った。


読了、お疲れさまでした。これにて、本作は完結です。


よろしければ、ページ下から評価していただけると嬉しいです。作者が喜びます。


コメント、ブックマーク、誤字脱字報告もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ