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親友は静かに誓う 1

 翌朝、一行はアン達を孤児院へと送り届けた。ティファナに連れられた少年も既に到着しており、感動の再会を果たす。


「おめでとう!誰かの……」


 聖達の耳に神のクエスト達成連絡の声が聞こえてくるが、二人とも聞いていなかった。

 目の前の光景に、何とも言いようのない達成感を味わっていたからだ。


「……良かったな」

「ああ」


 レリー達の助力が無かったらどうにもならなかっただろうが、聖達も命を懸けてクエストをやり遂げた事には間違いない。


「……いつか、高坂も……」


 その先の言葉を飲み込む聖。ようやく一歩踏み出す事の出来たパラディンへの道だが、その先は果てしなく遠い感じる。


「ヒジリなら出来るよ」


 いつの間にか背後に来ていたレリーが、思い悩む聖の肩をポンっと叩いた。


「さ、帰ろう」


 そう言ってさっさと歩き出す。


「そうですね。さっさと帰りましょう。いい加減風呂にも入りたいですし」


 ジェノも後に続く。


「ゲロまみれだもんね」

「……主もですよ」


 何やら言い争っているマリエラとティファナが、そんな二人の後を追う。どうやらどちらがジェノを後ろに乗せるかで揉めているらしい。

 結局、じゃんけんで勝ったティファナが乗せて帰る事に落ち着いたようだ。


「俺達も行くか」


 そう言って聖達も歩き出す。名残惜し気に振り返ってみると、深々と頭を下げるシスター達や、力いっぱいブンブンと手を振る子供達が見えた。

 聖達はそれに応えるように手を振ると、馬上で待つレリー達の元に駆け出した。


「初めてって格別でしょ」


 聖を馬に引き上げながら訊くレリー。


「……そうですね」


 レリーに言われると若干違う意味に聞こえないでもないなと思った聖だが、素直に頷いた。


「ん?やっぱり、ヤる?」


 そんな聖の一瞬の間を見逃さなかったレリーが、妙に色っぽく問いかける。


「マジっすか!まだチャンスありますか?」


 一瞬でテンションが上がった聖を見て、レリーは面白そうに笑い、さらに追い打ちをかける。


「ヒジリの初めて、欲しいな」

「!」


 興奮しすぎて、初めてという言葉を否定する事も忘れている。


「格別の体験をさせてあげるよ」


 そう言って顔を近づけてくるレリー。思わず目を閉じ、歓喜の瞬間を待つ聖。


「朝っぱらからサキュバスだだ漏れにするのはやめてくださいよ」


 だが、呆れたようなジェノが声が、聖の夢を打ち砕いた。レリーはその言葉に反論しようとジェノの方へと向いてしまったのだ。

 何でこのタイミングで、とジェノの方に視線を向けた聖だったが、その目に飛び込んできたのはなぜか顔を火照らせているティファナの姿だ。その首筋からはジェノの口元へと赤い糸が引かれていた。何が起きていたかを察した聖は、これはこれでアリかもと思ってしまう。


「ジェノこそヴァンパイア垂れ流し」

「私はいいんですよ、相思相愛なんですから。幼気な若者を悪の道に誘惑している主とは違うんですよ」

「悪の道じゃないし、言うなれば愛の道だし」

「はいはい、主がそう言うならそうなんでしょうね」


 全くそうは思ってなさそうな声のジェノは、聖に見せつけるようにティファナに咬みつく。一度見せてしまえば構わないという事か、本性を隠す様子もない。

 見せつけてくるならば、後学の為にもじっくり見させてもらおうと思った聖だったが、その向こうから京平が冷たい視線を向けてきている事に気付いた。

 慌てた聖は、事態の収拾をはかるべく助けを求めるようにマリエラに顔を向ける。


「はいはい、お二人とも。幼気な若者をからかうのはそれくらいにしてあげてください」


 やれやれと言ったマリエラの口調に、ジェノはフンと鼻を鳴らしティファナの首筋から牙を離した。名残惜し気なティファナがマリエラをキッと睨むが、マリエラはどこ吹く風と言った感じで澄ましている。


「別にからかってたんじゃないけど」


 レリーはそう言うと馬を走らせ始めた。ジェノを乗せたティファナ、京平を乗せたマリエラも後に続く。

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