ダンス・ウィズ・ウーズ 2
その様子を別の思いで見ているのが聖と京平だった。
「なあ、聖。あれ、クプヌヌじゃないか?」
ジッと怪物を見ていた京平の言葉に聖も頷く。
「確かにそんな気はするんだが、クプ腕が一本もないんだよな」
以前聖達が見たクプヌヌは胴から触手のようなクプ腕が何本も生えていて、近づく者を叩き潰しそうとたり貫こうとしたりしていたものだ。
「クプ腕なぁ……あれは、どう考えても触手だと思うんだけどなぁ」
神曰く、現世に対応する言葉がないと現地語がそのまま使われるらしい。つまりクプ腕はあくまでクプ腕であり、触手ではないという事だ。
「確かに腕って言ってるからな。じゃあ、腕なんだよ、きっと」
聖はさほど気にしている様子ではない。
「俺達が四つ足と認識している動物が二足歩行でウロウロしている世界に行った時に、前足と言うべきか手と言うべきか、そんな感じの事だろ」
先日転生した世界を思い出す聖。
「……そういうもんか」
今一つ納得の出来ない京平であったが、今問題なのはそこではない。
「あれがクプヌヌだとしたら、なんでこの世界にいるんだ?」
レリー達の様子からして、この世界に原住している訳ではなさそうである。となると、考えられるのは自分達と同じように本来住む世界からこの世界へとやって来たという事だ。
「転生?」
「クプヌヌも転生するのか……」
聖の言葉に呆れたように京平が答えた。
「どうせ転生するならクプヌヌ以外になればいいだろうに」
「元のまま転生するほどクプヌヌが魅力的って事じゃね?」
確かに強さだけを考えたら聖の言う通りかもしれない。だとすると今の状況はあまりいいとは思えなかった。
「まあ、仮にクプヌヌが転生してきたとしよう。だけどあいつの表面のククネプ、ナノマシンで制御された液体金属って話じゃないか。何でここで存在できるんだよ?」
転生先の世界の法則からかけ離れたものは、その機能を失ってしまう。ナノマシンがこの世界で存在できるとは考えづらい。
「……そういう生き物だからって事なんじゃ」
「えっ?」
「ほら、ゲームでもいるじゃん。なんか機械みたいな奴とか。あいつらって他次元からの来訪者かなんかじゃなかったっけ?」
たまに鋭さを発揮する聖ではあるが、具体的な名前が一切出てこない辺りは流石というしかない。
「あー、なるほどねー」
何となく納得する京平。そういう生き物だと世界が認識すれば、そのまま存在できるのだろう。それこそ何も足さない、何も引かない、だ。
「サイボーグとか転生しようとしたらどうなるんだろうな?」
「それこそ、無双出来るかもな」
そう言った聖だったが、レリー達ならサイボーグすらあっさり片付けそうな気もする。
そんなレリー達が攻めあぐねる眼前の敵は如何ほどのものか。聖達は固唾を飲んで見守る事しか出来ないでいた。




