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カレーなる冷やし中華 2

「それにしてもさ。このまま続けるのって、効率悪すぎじゃない?」


 まだ数回の試行とは言え、手応えはゼロに近い。

 とりあえず聖には『聖騎士王(パラディンおう)』になるという確固たる目標があるが、京平と穂波には結希子の病気を治す手段を探すという漠然とした目標しかない。このまま無為に転生を続けていても、一向に埒が明かない可能性すら考えられる。

 しばらく考え込んでいた穂波は、やがてむくっと起き上がり神の方へと向き直った。


「ねえ、確か『おねリン』の説明の時、この世界にも転生者がいるような事言ってたよね」

「え?そうでしたっけ?」


 嫌な予感がした神はとりあえず白を切ったが、穂波の無言の圧力に早々に白旗を上げてしまう。


「……ええ、まあ。勿論、おられますが……」

「会わせて。出来れば多くの世界を知ってる人がいいわ」


 やっぱりと頭を抱えた神は、それでも歯切れが悪いながらも反論する。


「いやいや、このご時世、コンプライアンスと言いますか何と言いますか、個人情報的なそう言ったお話は難しいんじゃないかと……」

「提供割合について訊いたら、神だから消費者庁の管轄じゃないって豪語してたじゃない。当然、個人情報保護委員会の管轄でもないでしょ?神なんだから」


 ぐうの音も出なくなる神。


「いや、まあ、それはそうなんですけどね……と言うか、何で他の転生者に会いたいんです?」

「いいじゃない、別に。偉大なる先達に会って話を聞きたいって思うのが、そんなに変?」


 何か考えがあるのだろうが、そんな事はおくびにも出さず堂々と神を見つめる穂波。


「いや、別にそういう訳ではありませんが……」

「中身も割合も分からないガチャ回してるのよ。せめて経験者の話を聞いて参考にするくらいいいでしょ」

「ですから……」


 反射的に反論しかけた神だったが、珍しく自ら口を噤んだ。せっかくなあなあで済んだ感じになっているガチャの話を、ここで蒸し返すのは得策ではないと気付いたらしい。


「はいはい、分かりました分かりました。とりあえず、応じていただけそうな人にあたってみますので、期待せずに待っていてください」

「よろしく」


 神はいつもの手帳を引っ張り出すと、何かを探すようにパラパラと捲り始める。


「中身も割合も公表してないのは、先入観なく異世界を体験して頂きたいからなんですけどねぇ……」


 それでもやはり言わずにいれなかったのか小声で文句を言った神だったが、笑顔の穂波に笑っていない視線を向けられ、慌てて手帳を捲る作業に戻る。その様子にため息をついた穂波に、聖が声を掛けた。


「どう言う事だよ」


 穂波の意図が掴み切れない聖は、京平と顔を見合わせている。表情から察するに京平もピンと来てない様子だ。


「ん?別に大したことじゃないんだけど……」


 そう言った穂波はチラッと神の方へと目をやる。相変わらず手帳を捲りながら、何やら考え込んでいる表情を見せている。


「ねぇ、お腹空いたし、鰻屋行かない?」


 急な穂波の提案だったが、聖達にも異論はない。

 三人は難しい顔をして考え込んでいる神を置いて部屋を出ると、足早に鰻屋へと向かった。

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