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走れヒメス 11

「ホントに?そりゃ、ボクだって一緒に遊べる方が嬉しいけどさー」


 煮え切らない様子のヒメの頭を、穂波がポンポンと叩く。


「それにさ、ヒメと遊ぶだけで賽銭箱が貰えるしね。じゃあ、遊ぶしかないじゃん?ってか、何で賽銭箱?」


 改めて賽銭箱に疑問を呈した穂波に、ヒメは胸を張って答えた。


「ふっふっふ。これ、凄いんだよ。これにお賽銭を入れるとねー、ボクがじゃじゃーんと現れるのさ!」

「?」


 効果を理解出来なかった穂波の反応は薄い。


「だーかーらー、ボクがじゃじゃーんて現れるんだよ!凄くない?」

「えっ?どこに?」

「どこって、賽銭箱のある所に決まってるじゃん!」


 首を傾げ、ヒメの答えを反芻する。


「それって、この世界じゃなくても?」

「もっちろん。どこでもじゃじゃーんて出るよ」

「えっ……それって凄くない?」


 ようやく理解した穂波の表情が驚きに支配されるのを見たヒメは、満足そうに笑った。


「だから、そう言ってるじゃん」


 ヒメを呼び出してどうするかという点はともかく、曲がりなりにも神の一柱を別の世界に呼び出せるアイテムが手に入る機会など、そうそうあるものではない。


「じゃあ、遊ぶしかないよね」

「そう?ホントにいいんだね?」


 念を押すヒメに、穂波はきっぱりと頷いた。神の力を借りられるこのアイテムが、この先ユキを助ける方法を探す助けにならないはずがない。


「よーし、じゃあ、思いっきり遊ぶぞー」

「おー」


 ようやく納得したヒメが天に拳を突き上げると、穂波もそれに倣う。


「まずはねー、ボクは明日起きたら虫になってるから、ホナミーは家族役をお願い!」

「へっ?」


 大蛇が吹き出した音が聞こえた。《走れメロス》の次が、何故《変身》なのか、全く意味が分からない。


「ある朝、クシナーダ・ヒメザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた」

「いや、全然面白くなる気がしないんだけど……」


 虫になった主人公が酷い目に遭う話である。何故、ヒメがその虫役をやろうとするのか。そして、自分はそんなヒメが演じる虫を酷い目に遭わせなければならないのである。面白くなりようがない。


「えー、一度は虫になってみたくない?面白くなかったら止めるからー。とりあえずやってみようよー」


 穂波には全く理解できない言い分だったが、ヒメがやりたいという以上やるしかない。


「まあ、そこまで言うならやるけど……」


 これは意外と難易度の高いクエストかもしれない、と少し後悔しつつも、やるしかないと穂波は覚悟を決めた。


「やった!」


 こうして、とことんまでヒメに振り回される穂波の異世界生活が始まったのだった。

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