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異世界人の大蛇退治 9

「もしかして、《びんあるす》もじょうりゅうしゅ?」

「うん。ヴィンアルスはワインを蒸留するんだけど」

「わいん!それ知ってるよ!ぱつきんぱりぴが飲むお酒だ!」


 別に西洋人が全員金髪でパリピな訳ではないし、パリピならもっと別のお酒を飲むだろう。そう思った穂波だったが、あえてツッコむことはせず曖昧な笑顔で頷いた。ぱつきんぱりぴという概念がどこから来たのかも気になるが、聞きたい気持ちをグッと抑え込む。これ以上、話をややこしくしたくはない。


「だよね、だよね。じゃ、わいんを用意すれば《びんあるす》も造れるんだね」

「うん。ワインは葡萄の醸造酒だから。まあ、原料が違うだけでツイカもヴィンアルスも同じように造ればいけるんじゃないかな」


 最早、全てを大山祇神に丸投げする勢いの穂波の回答だった。とにかく蒸留の原理を大山祇神が知っていてくれさえいれば何とかなるだろう。


「なんだ、簡単じゃん」


 そんな穂波の心を知ってか知らずか、ヒメは既に成功を確信したのかニコニコと笑っている。


「じゃあ、後はすももさえ手に入れたらいいんだよね……うーん、市比売おばちゃんに頼むしかないかな……」


 ヒメはそうブツブツ呟きながら、何か指折り数えている。その姿を不思議に思った穂波は、思わず尋ねてしまっていた。


「ヒメって農耕神だよね?ヒメの力で、すもも何とかならないの?」

「ボク、田畑専門なんだよねー。だから木に生る系はちょっと無理かな」

「あっ、そうなんだ……」


 担当の分け方に疑問が浮かばないでも無かったが、本人に無理と言われてしまえばおしまいである。


「市比売おばちゃんの所に寄るとなると……やっぱ、三日じゃ無理か……ねぇ、オロニス!悪いんだけど、やっぱ五日にしてくれない?」

「えっ?あっ?そりゃ、構いやしないけど……」


 急に話を振られた大蛇は、慌てて考えもせずに返事をしてしまった。それを聞いたヒメは満足そうに頷くと、瓢箪を二つ取り出す。


「後、《ついか》も《びんあるす》も見本として少しずつ貰ってくね」


 そう言うと誰の返事も待たず、樽から酒を掬う。


「どうしたの、それ?」

「さっき村で貰って来た。って言うか、村まで行ってなかったら、こうやって見本を持っていくことも出来なかった訳だし。これはもう結果オーライ、怪我の功名ってやつだよね!」

「うん、まあ、その場合、怪我って言っちゃってるじゃんて、ツッコまざるを得ないんだけど」


 穂波と他愛のない会話を交わしつつ、ヒメは瓢箪に酒を満たす。そして改めて穂波へと向き直ると、両の手を握り締め力強く宣言した。


「じゃ、行ってくるね。五日後、ここでまた会おう!我がソウルメイトよ!」

「あー、うん、気を付けてね」


 ここまでの流れで完全に毒気を抜かれていた穂波は、ヒメのテンションについていくことなく苦笑いで送り出す。だが、ヒメはそんな穂波の様子を気にすることなく、颯爽と身を翻し走り去っていった。

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