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今さら言えない異世界ガチャの秘密 3

「提供割合教えてもらえてないから、体感でしかないけどさ……」


 嫌味ったらしく言う穂波だったが、神はどこ吹く風だ。


「世界も場所もランダムなガチャで、同じ世界の同じ場所を三人が同時に引くなんて、普通に考えてあり得ないでしょ!」

「そうは仰っても、結局のところ確率ですし」


 神は穂波の文句を軽くいなしてしまう。


「例えどんなに低確率だとしても、起こる時には起こってしまうわけです」

「それは、そうかもしれないけど……」


 神のストレートな正論に、返す言葉を失う穂波。


「神引きすれば自分の強運、爆死すれば運営のせい。そういう考え方は良くないと思いますよ。神引きもあなたの運なら、爆死もまたあなたの運。結局のところ、確率なんてものは収束していくものですからね。人生万事塞翁が馬ですよ」

「じゃあ、本当にガチって事でいいんだな?」


 神に痛い所を突かれて沈黙した穂波に代わり、京平が尋ねた。


「勿論ですとも。正真正銘、誠心誠意、ガチでやらせてもらっています」


 例の如く謎の決めポーズと共にそう答えた神だったが、フッと目を逸らし小声で付け加える。


「……まあ、稀にピックアップ異世界ガチャなんてのも開催してたりするんですけどね」


 勿論、それを聞き逃すような京平と穂波ではない。やっぱり、とでも言いたそうな顔を見合わせ、力無く頭を振る。


「ピックアップがあるとか、初耳なんだが」

「あれ?そうでしたっけ?サーセン」


 形ばかりの謝罪の後、言い訳を付け加える。


「ガチャに精通されてる皆さんの事ですから、ピックアップくらいご存じかと思っていたのですが……」

「ピックアップはご存じだよ。ご存じじゃなかったのは、異世界ガチャにもピックアップが存在するって事だ」


 京平の文句に、神は不思議そうに首を捻る。


「ご存じじゃない事で何か不都合でも?」

「そりゃ不都合に……」


 即座に反論しかけた京平だったが、すぐに黙ってしまった。確かに神の言う通り、そもそも何が出るか分からない『おねリン』においてはピックアップがあろうがなかろうが大して差はない。出た目に従って異世界を体験するしかないからだ。


「ピックアップ内容によっては引かない選択だって出来るでしょ」

「いやいや、そんな……そんなピックアップを引かないなんて勿体ない!」


 今度は黙った京平の代わりに穂波が答えるが、それを聞いた神は如何にも芝居がかった仕草で嘆いてみせる。


「何が勿体ないのよ。引こうが引くまいが、こっちの勝手でしょ」

「何を仰います、穂波さん。前にもご説明した通り、この『おねがいリンカーネーション』、通称『おねリン』は各世界の神様のご協力の元に成り立っているのですよ。そんな神様が、ちょっとうちの世界に仮転生させてみてよ、なんて仰って下さった日には、それはもうピックアップするしかないじゃないですか!」

「……あー!」


 思い当たる節のあった穂波が天を仰ぐ。


「さてはあの世界もピックアップされていたのか」

「ご名答!」


 満面の笑みを浮かべて親指を立ててくる神を無視しつつ、当時の事を思い返した穂波は顔を顰めた。あの時は、聖だけ別の世界へと転生させられていた。もしかしたら、本当にガチなのかもしれないと思う気持ちが少しだけ湧く。


「単にCMって言うだけじゃなかったのね。迂闊」


 宣伝目的ならば仮転生だろうが何だろうが来てほしい世界もあるのだろう。そしてあの琵琶湖の神の世界は、そんな世界だったという事だ。

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